最新作劇場版&TVアニメシリーズ
『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』公開記念!
『キンプリSSS』『スッスッス』の感想記事。
最速上映参加の勢いで1話ずつガッツリと。
(※3章は最速と初日連続で2回観ました)
7話は心の花を咲かせましょう 西園寺レオ!
男の娘キャラとして突き抜けたキャラメイクで、異彩を放つレオくんの担当回。声優さんの声帯が極まっていることもあり、初見時は何かとインパクトが強いキャラの1人だったと思います。
しかしながら『キンプラ』までではそのキャラ性に依った色付け的な立ち回りが主。西園寺レオという個人を知ることができる描写はとても少なく、テンプレ的なステータスを与えられた故に、パーソナリティは最も薄いキャラクターだったと言っても過言ではありませんでした。
だからこそ、彼がどのように掘り下げられて行くのかは本作の大きな見所の1つとも言えたでしょう。
3章のトップバッターを飾るという意味でも重要な第7話。可愛らしい彼を通してプリティーシリーズ全体の魅力を感じさせてくれたこの話を、語らせて頂きます。
ガンバります!テンションMAX!リラックス!
これまでの西園寺レオ
ピンク髪の妹系男の娘キャラ。
エーデルローズ唯一の中学3年生(『スッスッス』現在)で、主人公の一条シン君より年下の内の1人。同学年のキャラクターが1人もいないという設定です。
いつかは男らしくなりたいという想いを胸に秘めながらも、歌舞伎界のプリンセスであるユキノジョウを「麗しい」ことから絶大に慕っていたり、普段の言動や服装、行動全てを通して「可愛い」の比率が圧倒的に高かったり、一人称が「私」だったりと、目的とキャラ性に大きな自己矛盾が散見されるキャラでした。
『キンプリ』でのシン君のショー以降、彼にベタ惚れしているかのような描写も見受けられ、この辺りの理由や設定についても仔細は全く分からないという状態。総じてジェンダーなどに関わるナイーブな話題が多く、幾ら大人向け作品とは言え(だからこそ?)気軽に安直な断定ができない難しさがありました。
そういった部分にレオくん自身が自分で気付いているのか、いないのか。解決しようとする気があるのか、ないのか。解決するならどのような選択を取るべきだと思っているのかなど、パーソナリティが断定されないが故に多くの可能性と危険性を孕んでいたレオくんだったと思います。
『プリティーリズムシリーズ』の後継作である『プリパラシリーズ』に登場する某キャラに容姿や設定が似通っていることも特徴で、今作は家族を登場させることでよりその色を強く出してきた印象(※『プリパラ』については僕自身がまだ完全に語れる立場にないので、今回の記事ではサラッと触れる程度に留めさせて頂きます。ご容赦をお願いします)
そのキャラ性故に何でもできる、何でも言える。
だからこそ何を見せてくれるのか未知数でもある。
「西園寺レオ」というキャラとしてはもちろん『キンプリ』という創作物としても、その選択が様々なテーマ性に影響する彼の物語。
その全容は、彼らしい吹っ切りが詰まった話となりました。
「なりたい自分に、プリズムジャンプ!」
女装ネタゴリ押し コミカル色強めのシナリオ
華京院学園のミスコンテストに皆で女装で出場しよう!
という『キンプリ』らしいスタートダッシュをキメてくれた第7話。
裏話やボイスドラマなどを除くと、本編では謎のカットのみでほとんどスルーされてきた謎のオバレ女装シーンが初めて詳細に語られることになったのがこの7話。割と有名な話なので多くの人が「女装の真実とカヅキの優勝」を知っていると思いますが、実は話としては本編では初出(3話でカヅキの優勝については一瞬触れられている)
「FREEDOM」をフリーダムに流しながら、なんか可愛らしい動きで謎の主張をするカヅキパイセン。ズボシッ!?後輩に優勝させることで、自分の存在をかき消してもらおうという姑息な作戦を断行しようとするその姿は流石ストリートのカリスマ。女性絡み(?)になると急にロクなことができなくなる。
第7話は他と比べて全体的に作画の雰囲気が可愛らしく、キャラの動きにも子供っぽさが出ていたこともあり、実質女児アニメという感じだったと思います。キンプリは女児アニメです。
「皆頑張って。知らない扉を開けてみることで、新たな世界に辿り着けることもあるよ」
色々な業を背負ったせいで真顔で喋り出すだけで既に面白い神浜コウジと基本ヘラヘラしているだけの速水ヒロもセットで登場。久々に3人揃ったオバレのトークが見れた気がしましたね。女装の中に細かくキチい小ネタを挟んできたり、ミナトとタイガで遊んでいる辺り青葉譲の匂い。
カケル「これならチャンユキかレオきゅんのどっちか、優勝できるんじゃない?」
ミナト「え?」
ユウ「あぁ?」
何故か張り合い出す神浜の息のかかった者達。短い時間でミナトのキャラクターがかなり迷子になった気がする。イメージ的にはこういう時に主張して行くタイプではなかったと思うので、やはり6話を経験したことによる心情の変化などが反映されているのでしょうか。
そもそも華京院で開催されるのは「ミスター&ミス スーパーコンテスト」なので、明らかに優秀な者以外は普通の格好で出場した方が連覇の可能性が高いのでは?と思わないこともないですが、後半の客層を見るに実質的に女性か女装での出場がノーマルになっているのでしょうね。
一方シュワルツローズでは
そうそうたるメンバーが名を連ねる中、シュワルツローズにもミスコンの話は届きます。今作、細かいところからファッションぶりっこであることが分かっていたTHE シャッフルのツルギが参戦。いよいよその本性が露呈し始めます。
ツルギはフェミニン系としてレオに対抗意識を燃やしているように感じられ、だんだん出来もしない方向性(過剰な裏声など)に傾倒してしまっているように見えます。ひとえに可愛い系と言っても様々な在り方があるし、女の子に寄せていくことだけが正解ではないと思うのですが、身近に実質女子とも言うべき異彩を放つレオがいることが彼の心に焦りを生んでいるのかもしれません。
そういう意味でツルギは「自分らしくある」という7話のテーマからズレた行動を取ってしまっているとも言え、彼はまだまだ形式的な要素でしか自分を見れていないということでしょう。その結果が今回のミスコンの成績には表れていると言えます。
彼が『プリパラ』における計算で作られたアイドルのみれぃの衣装を模しているというのにもメッセージ性を感じます。「自分に合う」といった価値観まで計算されていれば、あの衣装で最高に輝くことはできるだろうに、似合わなければどれだけ計算高く準備しても意味がない。そういうことではないかと。
ストリート系絡みの話題として、アレクにもミスコンの報は届いています。ストリート系絡みの話なので。
カヅキの後を追いかけるタイガがストリートのカリスマをリスペクトする形でこのミスコンに出場したのに対し、アレクは衣装を着て会場まで足を運ぶことまではしたものの、結局出場するという選択を取りませんでした。これはアレクの目指すストリート系の在り方がカヅキやタイガと比べてどうなのか…という話にも繋がっている部分だと思います。
出場したタイガと出場しなかったアレク。ストリート系の熱い戦いは、こういった女装辛みの話にまで深く発展していたわけですね。彼らの隣りにはいつだってバーニングな戦いがある。思想や理想だって、彼らの窺い知らないところで自然と戦っているのかもしれない。やっぱり『キンプリ』は深いなぁ(棒読み)
女装ネタを全面的に押し出しながら、応援向きでコミカルな明るい話を展開してくれたので、シナリオの筋だけ見て行けば笑いながら軽快に楽しむことができる話だったかと思います。
しかし、その中で語られたレオのキャラクター性はやはり一筋縄では行きません。彼の過去の葛藤や今も立ち向かっている現実は、大きな困難が付きまとっているものでした。
レオの求める"男らしさ"の正体
女装の最中に訪問した西園寺家の2人のお姉様。
きらりとゆらりに対しレオは自分の可愛らしい姿を見せまいとし、タイガの制服を着てオラついた姿で出迎えます。「姉貴お待たせ……!」
この時に思ったのは「レオくんの中に一般的な"男らしい"という概念は存在しているんだ」ということ。
アプリのプリズムラッシュライブでは(熱心にやっていないので初期の話ですが)男らしいものを誤認して語っているような描写があり、そもそも彼の中の価値観がズレているのではないかと思わされることが多々ありました。
この点について『スッスッス』では男らしさを姉妹の前で瞬時に偽装することができていたことから、少なくとも自分の普段の姿が、男の子として一般的なものではないという自覚があるということが分かりました。
これが断定されたことで「男らしくありたい」という目標自体が、彼にとって自分の在り方を否定するものになってしまうもの(そうと分かって掲げている)なため、この7話は先にかなり厳しい話が待ち受けていることが想像できるようになっていました。これが視聴者の心構えを作るためのクッションとして意図的に用意されたシーンだったとしたら、受け手の感受性を信じた極めて高度な創りだったと言えます。
姉達はそのレオの姿を見て安心し、自分達がレオの元を訪れた理由を彼に告げます。
それは、夢を諦めて実家に帰ろうと思っているというもの。西園寺家は北海道の出身ですが、夢を追いかける2人の姉に追従する形でレオは3人揃って上京。近くに姉妹が住んでくれているという安心感は、レオがエーデルローズで生活する上での心の支えになっていました。
彼女達が自分の近くからいなくなってしまうプレッシャーから、レオも北海道に戻るかエーデルローズに残るかを悩み始めてしまいます。
ユウ「もう家族と一緒じゃなきゃって歳でもないだろ」
ミナト「涼野、お前だって家族と離れて暮らす寂しさは知ってるだろ」
ユウ「そうだけど…」
タイガ「例え一緒に住んでなくても、近くに親戚がいてくれるってのは安心するもんだ」
「継ぐ者」でおなじみの「気持ちが分かる」人達による会話。今回は上京組の2人による故郷の恋しさが表現されています。そしてシリーズファン+初見さん向けに8話ユウくんの存在を混ぜておくことも忘れない。お上手でした。
しかしレオには他の面々とは違い、特に姉妹の存在に固執したくなってしまうような理由がありました。それが分かっていたから、姉妹もレオの元を訪れたのです。
それは彼が姉達に普段の自分を隠した――男らしい自分を見せようとしたこととも繋がった、彼の過去にまつわる理由がありました。