最新作劇場版&TVアニメシリーズ
『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』公開記念!
『キンプリSSS』『スッスッス』の感想記事。
最速上映参加の勢いで1話ずつガッツリと。
(※3章は最速と初日連続で2回観ました)
(※この記事は3回目を観てから執筆しています)
9話はプリズムショーの破壊者 大和アレクサンダー!
『KING OF PRISM』と言えばやっぱりこの人!初登場時に誰もの脳裏にその姿と行動を焼き付けたであろう最強最恐最凶の6packの登場です!
作品を語る上で欠かせない「腹筋で○○」の第一人者(※1人しかいません)ストリート系を愛し、仁科カヅキを憎み惚れる、その名前含めインパクトなら間違いなくトップオブトップの強烈キャラクター。
「アレクの女」という集団ファンを獲得したこともあり、応援上映でもその存在は一際輝きます。アレクのストーリーを最も楽しみにしてここまで『スッスッス』を全力で楽しんできた方もきっと多いことと思います。
第三章のトリを飾るだけでなく、単純なプライベートストーリーとしてもラストになるかもしれないのがこの9話(第四章は込み入ったファンタジーになるかもしれないため)
今回もしっかり見て行きましょう。
(ストーリーを)バラバラにしてやるぜ!
これまでの大和アレクサンダー
プリズムショーの破壊者の異名の通り、熱い物理的バトルを展開してきたアレク。『プリティーシリーズ』全体でみても、プリズムジャンプをぶつけ合う攻撃的な戦闘は彼が初めて行ったもの(※プリズムジャンプを攻撃に用いたのは厳密に言えば初めてではない)であり、シリーズ従来ファンや『キンプリ』初見ファンの垣根なく凄まじい衝撃を与えて行ったキャラクターです。
初作『キンプリ』では新キャラでありながら本編内で唯一歌唱と3DCGのプリズムショーが準備されており、他キャラとは一線を画した存在でもあります。
続編となる『キンプラ』でも、腹筋から爆弾(物理)を投下して会場を破壊しPKCを中止に追い込もうとしたり、破壊に特化したジャンプを繰り出しては我々に様々な衝撃を与えてくれました。
また、ストリート系スタァでありながら仁科カヅキを強烈に敵対視しており、PKCでは自身を止めに入った香賀美タイガと互角な戦いを繰り広げるなど、とにかくバトルに終始した活躍が印象的。
その一方でプライベートの生活や他キャラとのやり取りは全くと言って良いほど描写されていませんでした。カヅキへの執着だけで突き動かされているキャラクターとして一貫しており、印象度合いとは裏腹にどのキャラよりも素性や設定が全く不明であるという特異性も持っていました。
プリズムショーも他人への攻撃か破壊行動しか今までに見せていないため、他人に見せるソロショーについては我々の想像の外にあったと言えますし、歌唱についても本編内で二度披露したショーのどちらもが「EZ DO DANCE」を利用したもの且つソロ歌唱ではなかったということから、今作ではソロ曲の披露についても期待されていたところだと思います。
出番は確実に多かったものの、その活躍の範囲から他キャラ同様に「語るべきところ」が豊富にありすぎたキャラクター。そのアレクの担当回は、今までとは違った意味で衝撃を与えてくれるストーリーに仕上がっていたと思います。
きっと誰もが想像できなかったであろう、ストリートのカリスマを目指す彼の物語を語って行きましょう。
アウトローな親子の信頼関係
アレクのストーリーでまず語っておかなければならないのは、家族との関係性が描かれたこと、そして彼の幼少期が明かされたことでしょう。
ちなみにアレクの幼少期の姿は「ヤンプリ」を事前に読んでいるかどうかで受けた衝撃値がまるで違ったと思います。アレクは本編内でも母親と1対1の深い関係性が語られる時間が長かったことから、ヤンプリの重要度が他キャラより高めです。未読のことはチェックをオススメします。
(http://www.pashplus.jp/anime/106560/)
父親は多忙(海上自衛隊?)でほとんど家を空けているので「HELL」というスナックを切り盛りする母親との実質2人暮らし。しかしアレクの帰宅を母親が来客と勘違いした辺り、彼は定刻に家に帰るわけではないし、そもそも帰宅の機会自体さほど多くないのかもしれません。
「学校にはちゃんと行っているんでしょうね?」と重要な確認を軽く入れて強制はしなかったり、アレクの普段の行動にはあまり興味がなさそうに感じられました。
親に対するぶっきら棒なアレクの姿からは我々の知るプリズムショーの破壊者の風格も感じられますが、その実どこか優しげでもある。オカンはそのアレクにいきなり栓抜きを物凄い勢いで投げつけ「GO TO HELL」と言い放つなど、叱り方は彼に負けず劣らず豪快。
それもそのはず、アレク母は若い頃は女子プロレスのスターであり、壁には在りし日の思い出であろう興行「H.S.D.」(菱田…?)のポスターが貼られています。この時の対戦相手はその風体からタイガの母であると予想されており、彼女がプロレス雑誌やストリート系の雑誌を集めていた理由はそこにありそうです。つまり、アレクとタイガは母親の代から因縁があったということになります。
このポスター、3話でタイガがカヅキに初めて会う直前の壁にも古びたまま貼り付けられているのが確認できます。まさか伏線だったとは…。本放送の際は探してみてください。
親子の不仲を感じさせる流れながらも、アレクが今までの雰囲気とかなり違った雰囲気でいることから、気を遣っているのが分かるように会話が組まれており、短い時間でも「仲は良いんだろう」ということを感じられるやり取りだったと思います。
「ママはね、アンタが元気でいてくれればそれだけで幸せだから」
「…………」
強烈なハグが強烈なヘッドロックという職業病なのか何なのか分からない絵面で絶対的な愛を伝えてくるアレクママ。普段は放任主義の親なのだとは思いますが、それは息子に気をかけていないからではなく、アレクが自身の努力で病弱だった過去を乗り越えたことへの信頼の証なのだと思います。
そしてアレクもそれを分かっている。十代半ばらしい反抗的態度は見せながらも、母親を決して無下に扱ったりはしないのです。
それは一般的に見れば正しい人間性、正しい親子関係とは言えないかもしれませんが、これもアウトローな親子愛の1つの形。噛み合ったパズルのような信頼関係を垣間見ているようで、悪い気には全くならないものでした。
気弱だった幼少期と冷への憧れ
アレクの実家があるのは、閑散とし風が吹き抜ける商店街。実在する街並みと近いのかは分かりませんが、相当ヤバい感じでしたね…。
歩いていると、顔を合わせるのはそこを根城にしているであろう不良グループ。彼らはアレクの顔を見るだけで「ヤベッ」と口走り、道を空けて彼をそーっと避けて行きます。地元でも彼は顔を見ただけで恐れられる存在のようです。
幼少期病弱で気弱だったアレク少年を変えたのは、元祖ストリートのカリスマ黒川冷との出会いでした。不良で絡まれているところを冷に助けられ、それ以降アレクはずっと、自分とは正反対の強くてカッコいい彼に憧れる毎日を過ごすことになります。
冷は自分のことを「大黒(ふ頭)の冷」と名乗ったので、当時はまだプリズムスタァではなかったのかもしれません(不確定)アレクが次に見た時、彼はプリズムジャンプを跳ぶ「ストリートのカリスマ」となっていました。
冷に憧れるアレクは、そのままストリート系プリズムショーにのめり込んで行き、すっかりプリズムショーの虜になっていました。彼はストリート系プリズムショーに憧れたのではなく、あくまで黒川冷に憧れてプリズムショーの世界に足を踏み入れた少年でした。
対照的に描かれているタイガは、プリズムショーに衝撃を受けてからその体現者だったカヅキに魅了されたことを考えると、2人のストリート系への導入は「似ているようで全くの真逆だった」と言って良いかもしれません。
成長しても黒川冷への憧れは一切変わりません。実は過去にパンフなどで明かされている設定上、彼の憧れのスタァは黒川冷ではなく「DJ.COO」とされています。あの2人が同一人物であるということも何故か把握しているし、客じゃないけど変装してCOOさんに会いに行っちゃうくらいには好きなのです。可愛いかよ。
「黒川冷って凄いんだよ!浮いてたんだよ!」
「何言ってんの?」
母親に3強が集うPKCの観戦をおねだりするも「うちにはそんなお金ないよ」という理由で却下されて落ち込むアレク。それでも彼はその後、自分1人で何とか会場に辿り着き、生で冷のショーの鑑賞を果たす直前(※お礼を言いたくて会いに行っただけかもしれない)まで漕ぎつけます。
(余談ですが、父親が海自に所属しているらしいアレクの家に「お金がない」ということがあるのか、というのは個人的に気になるところでした。ただの方便だった可能性もありますが、基本発言に「理由なきものがない」この作品では、何かの裏設定が潜んでいる可能性はありそうです)
冷との別離 新たな決意
念願のステージで待っていたものは想像していた幸せな時間とは違っていました。
聞こえてきたのは「黒川冷出場辞退」の報せ。
親の否定を押し切って、独りで何とかやってきた大きな会場で聞かされたこの「最もありえない出来事」について、子供だったアレクが受けたショックの大きさは計り知れません。
「聖無くしてキングの価値なし!」
冷はこれ以上は語らなかったし、その場にアレクはいませんでした。彼は冷が出場を辞退した理由をあの場で聞くことすら叶わなかったのです。
何とかして冷に声をかけようと、自分の姿を見てもらおうとしたアレクでしたが、冷はアレクの呼び掛けには一切答えません。お礼を言うこともできませんでした。
冷はこの時、聖ともう戦えないことにショックを受けていただろうし、恐らく仁に既に疑いをかけ始めていたと思います。他人のことや周りを気にする余裕は、彼にもなかったのでしょう(※事故の詳細を知るには『レインボーライブ』の視聴が必要です)
だからこれは悲しいすれ違い。
アレクは見てもらえなかったわけではなく、冷には余裕がないだけだった。
でもアレクはきっと「自分なんて冷の目にも入らないような存在だったんだ」と思ったでしょうし「自分を助けたこともきっとあの人は覚えていない」と自覚したのだと思います。今まで近くにいる憧れの人だと思っていた冷は、全然遠くの存在だったと子供ながらに絶望したはずです。
そしてその冷はプリズムショーの世界からもいなくなってしまう。憧れていたその人は、もう全く自分とは関係のない人になってしまったのかもしれない。あれは弱かった彼の唯一の心の支えだった黒川冷という存在が、完全に壊れてしまった瞬間でした。途方もない長い時間、あそこで泣いて過ごしたのかもしれません。
それでもアレクはめげませんでした。
「泣かない...僕はもう泣かない」
黒川冷に貰った強さを胸に抱いて、独り決意します。
「僕が絶対、ストリートのカリスマになってやるんだ」
ストリート系プリズムスタァ 大和アレクサンダーの歴史が、ここから始まります。
求めるものと現実の乖離
ストリートを極めるために戦いを続け、ネストオブドラゴンで修業を積んだアレクは、我々の知る肉体と声と性格とを手に入れていました。カヅキが知らなかったネストオブドラゴンを知っていたのは、黒川冷への強い憧れと情報収集の賜物でしょうか。出身が近しいというのは大きそうです。
そのタイミングで法月仁からのスカウトを受け、シュワルツローズに入ります。条件はストリートのカリスマを名乗るスタァを全員探し出すことでした。ここで「全員」と言ったのは、彼が自己鍛錬に100%の力を注いでいて、倒すべき相手を探す努力を一切していなかったことを表していたと思います。
そこで探し出された唯一のストリートのカリスマ 仁科カヅキは、自分が追い求めていたストリート系とは全く違う、チャラチャラしたアカデミー系ジャンプを跳ぶ度し難い存在でした。
彼のような黒川冷の理想からかけ離れた人間がカリスマを名乗っている。こんな黒川冷を冒涜するような行為が許されるはずがない。ぶっ潰してやる絶対に。
「ストリートのカリスマは渡さない…!」
こうしてカヅキへの憎悪を募らせ『KING OF PRISM』へと繋がって行ったということでした。ようやく明かされたカヅキを憎む理由もまた、黒川冷への強い憧れが齎したものでした。
(ネットで見た他人の考察ですが「林檎がアカデミー系の象徴として描かれている」というのには全く気が付いておらず、思わず唸ってしまいました。そう言われて見ると本当にそういう描かれ方をしておりゾワッとしてしまったので、勝手ながら紹介しておきます)
しかし見下していたカヅキと戦い、善戦するも最後は引き分けたことで自分の無力さを改めて痛感。
その後のPKCではその弟子格に当たるタイガと引き分けたばかりか、カヅキが自ら破壊した会場を最高にフリーダムなプリズムジャンプで再建。規格外失格に陥ったにも関わらず、あっけらかんとした態度を取られ「ストリートのカリスマ」の風格を見せつけられます。
こういった経緯から、徐々に自らのストリート系としての在り方に疑問を持つようになったと思われます。
ストリート系とは、他人に縛られない自分だけのショーをするものだと思っていた。誰かに迷惑をかけても構わないし、自分を貫いていればそれでいい。それを理解できない者が集う大会には何の意味もないし、破壊してしまえばいい。認められる必要はない。
だが仁科カヅキは違った。
自由なショーをして、人を幸福にする選択をした。誰にも縛られないショーをしたのに、観客を興奮させた。結果が残らなかったことに異を唱えることもなく、全てを受け入れて「ストリート系」を名乗った。
それに自分も興奮してしまった。
自由なことをして全ての人を楽しませた、あいつの方が上だった。チャラチャラしたショーをしていた仁科カヅキが、ストリート系としても自分より最高の結果を残してしまった。
自分の目指したストリート系は…黒川冷への憧れは…間違っていたのだろうか?
これは僕の解釈ですが、アレクの心中はきっとこのようなものだったと考えています。
思い悩む彼の元にやってきたのは衝撃のペアとも!『レインボーライブ』におけるペアともは「答えを得た者の元にやってくる存在」として描写されているため、この時点で既にアレクは自分の答えを出していたということかもしれません。でもそれを自分で認めることはまだできていなかったはず。
その答えを胸に、遂に彼は黒川冷に再会します。
黒川冷から受け取ったもの
「覚えてもらっていて…光栄です!」
黒川冷に笑われるほど、礼儀正しいアレクの姿には俺達もビックリ。でもオラついた人ほど目上の人にはしっかり仁義を通すので違和感はありません。
この時アレクはきっと冷に聞きたいことも言いたいことも沢山あったはずです。どれから言って良いかも分からないくらい様々な感情の動きがあったはず。
しかし冷はそんなアレクの心中を見透かしたように言葉を投げかけます。
「君のショー…とってもCOOL!だったYO!」
その言葉にアレクがどれだけ救われたことでしょうか。
PKCで失格処分を受け、たった1人だけスパーキングもマイナス数値、そして精神的にもカヅキに敗北したアレクは、自身の努力を肯定できる要素を何も持っていませんでした。
そんな時に自分の原点である黒川冷から言われたたった1つの肯定は、何よりも欲しかったものに違いありません。自分が信じて貫いてきた道が、目指してきた黒川冷その人だけには認めてもらえたんですから。
「だけど、一般人にはちょっと刺激が強すぎたみたいだね」
「まるで…"昔の俺"を見ているみたいだった」
冷はアレクのショーを決して否定することがなかったばかりか、それを受け入れてくれない存在についても冷静に把握することができていました。アレクより1つ上の目線を持っていたのです。そして、その上でアレクのことを「昔の俺」と表現したこともアレクにとっては、大きな支えとなったはずです。
黒川冷は自分の先にいる。自分が目指しているものは決して間違っていない。胸に秘めている答えを体現すれば、きっと自分は黒川冷に恥じないストリート系プリズムスタァになることができる。
その確信を得て、初めてアレクは自身の出した答えの全てを受け入れることができたでしょうし、PRISM.1で自分がすべきことを決められた。それを持って、やっとこの言葉を冷に向けられる。
「あの時は…ありがとうございました!」
「……?」
覚えていてくれなくてもいい。忘れられていてもいい。ただ今ここにいるストリート系プリズムスタァ 大和アレクサンダーとして、自分のルーツとなった尊敬する相手に最大限の感謝を述べられればそれで。自分はそれを言える資格があると分かったから。
この瞬間に彼は昔の荒々しいだけだった自分と決別したのでしょう。大会の前、母親の元でカレーを食べる姿も、最初と違ってどこか清々しく素直な対応だったと思います。
「お父さんと見に行っちゃおうかな?」
「来なくていいよ……!」(可愛いかよ)
全ての迷いを吹っ切った彼の全く新しいプリズムショーが始まります。