ゆるりゆるりと2016年の上半期が終了。
というわけで、今回はここまでに扱っていない日日日先生執筆の「スカウト!」ストーリー+αをアソートでお届けします。
イベントストーリーと比べると短いシナリオが多めなものの、積み重ねが増えてくればごく僅かな内容で印象的に見せられるようになって行くのが長編大作の醍醐味。
1つずつ楽しく書いて行こうと思います。ネタ色強め!お楽しみ下さい。
スカウト!冬の初詣
スバル・司・桃李・弓弦・あんずというスカウトらしいレア面子によって進む「スカウト!冬の初詣」。
スバルが他のTrickstarのメンバーと別れて単独で行動するエピソード自体が非常に珍しい気がします。部活動も真緒と同じで、生徒会などの特別な枠の中にも入っていないためでしょう。
年をまたいだということは、時系列的にはSS終了後に一息ついている状況ですね。巫女あんずちゃんアクティブ!休んで(SS展開前のサブイベント的な内容とは言え)
実際のところ、SSが年末に行われる祭典であるという情報は他のイベントでも投げられていたはず。2015年の段階ではその内容が完全スルーされて新年を迎えたわけで、当時をリアルタイムで追いかけていた方々は「SSどうなった?」と思ったのかもしれませんね。
どことなくスバルはタダならぬものを抱えた雰囲気を醸していて、年末に何かあったことを示唆しているようです。Trickstarは果たしてどのようなライブを行ったのか。少なくともその内容は、1年以上お預けを喰らった形になったということに。
さて、そんな憶測とは打って変わって、「初詣」の主題は司と桃李というそれなりの家柄を持つ同い年の2名。この2人の価値観や生き方の違いにスポットが当たるコミカルな物語でした。
良い家の出であることを誇りに思っており、普段は少し横柄な態度を取りがちな桃李。良い家柄を持つからこそ紳士的に慎ましくあれと、自分を律して振る舞う司。表面的な部分を見ると真逆なようにも思えます。
しかし口を開いてみると司はなかなかのナチュラル見下し型で、正直かなり滅茶苦茶言う。口の悪さ(悪気はない)なら作中でも上位に食い込めるのではないか。
態度が紳士的なら何を言っても良いというわけではないのですが、彼は自分が"そういう発言"をしている認識自体がない気がします。その辺りの無自覚さが彼の微笑ましいところであり、先輩たちにも同様に愛してもらえている印象。
一方の桃李は表面的には唯我独尊なものの、実は奥底には一定の思慮分別があるタイプ。自分で完全にコントロールしているわけではなさそうですが、礼節を持たないわけではありません。まだまだ甘えん坊なだけと取ることもできます。
表に出しているものに差はあれど、持っている要素自体には近しいところもある2人。口ではいがみ合っていても決して相性が悪いようには見えないのは、互いにそういった「似た者同士」を感じ取るからなのかも。
似た境遇を持っているからこそ、自分とは違う表現をする存在は妬ましくもあり羨ましくも映ります。時には嫌悪の対象になるけれど、認め合えないこともない。その相手との交流が、自分1人では思いつかない選択をさせてくれることもある。
そんな2人が明星スバルというムードメーカーを介して、普段とは全く違う関係性を築いていく物語。
家柄を意識しすぎる司は、友人との思い出を両手いっぱいに抱えて。司に比べれば自由に生きている桃李は、この時ばかりは両親が近くにいない寂しさを少し感じて。
2人をよく知る弓弦は何を思ってその成長を見守るのか。それを妄想するのもまた一興なストーリーでした。
ところでジャージを明星に嗤われたあんずちゃんはちゃんと怒っていいぞ。
スカウト!ティーパーティー
メンバーにかなり問題がある(?)紅茶部を中心とした「スカウト!ティーパーティー」。割と書くのを楽しみにしていた。冷静に考えるとそもそも紅茶部ってなんだ?
英智・凛月・創というアイドルとしては接点がなさすぎて頭がおかしくなりそうな3人による、ゆるふわ学院生活。ある意味で現実の「部活動」その物であり、世界観に説得力を持たせてくれます。
しかし蓋を開けてみると物語の根幹にあるのはまたも天祥院英智VS蓮巳敬人。おい。君らは周りにかける迷惑の総量を考えたことがあるか?(※ただし今回はほぼ100%英智の責任)
この紅茶部は(他の関係性と比較して)英智が圧倒的に普通の高校生を謳歌しているのが印象的。
英智は人間関係におけるあらゆる感情を大袈裟に解釈しがちなので、これくらいラフなやり取りができる相手が学院内にいるというのに最早安心させられます。
そして間接的には自分に恐怖体験を植え付けたはずの生徒会長を相手に、「ぼくは、会長さんみたいになりたいですよ~……♪」とフォローするしののん。あまりにも天使で直視できない。
彼に接する英智はどう見積もっても気持ち悪い親戚のおじさんその物ですが、あんな対応をされたら誰だって親戚のおじさんになってしまうでしょう。デレデレする英智を見て、桃李は一体何を思うのだろうか。是非とも共演が見たいところです。
そんな2人と「とりあえず居心地が良いのなら何でもいい」という感じにほぼ無頓着に交流する朔間凛月。彼がまた絶妙に空気感をコントロールしていて、見ている分には最高に愉快だが絶対に巻き込まれたくない異様な空間が出来上がっています。
今回、その純然たる被害者となった朱桜司くん(とあんず)の振り回されっぷりは実に見事。同級生、同ユニット、家柄(身分?)の差、と3人とそこそこに接点を持った彼は、正に振り回されるために登場したと言っても過言ではありません。
何故か珍しくそこそこに不機嫌になったり嫉妬したりするあんずちゃんさんも相まって、舞台はとにかくカオスに。その上、主題は「敬人が自分のために未完のまま放置してしまった作品の結末が見たい」という謎のクソデカ感情。何だこれは。
「わかるかな、敬人の夢を、君が受け継いだんだよ……あんずちゃん」
いや分からんわ。
勝手に受け継がせるな。
この人たまに真面目な顔で真面目にぶっ飛んだことを言う時があって、その瞬間が一番こわい。嘘とか冗談とかではなく"本気で"嘘みたいなことを言う。滅茶苦茶計算高いのに微妙に天然。本当に性質が悪い。
そんなお茶目な生徒会長の願望を叶えるべく、事情をよく知らない人たちを巻き込んで行われる謎のごっこ遊び。でもよく分からないからこそ、その時間は何のしがらみもない時間になるとも言えます。
当事者間では1つの物語が進行しつつも、それを取り巻く空気はただただ楽しいだけのお茶会で。
日常の喧騒から解き放たれたこんな些細な時間こそが、彼ら…特に生徒会長にとっては非日常。理由も理屈も意味不明でも、それを楽しむ余裕を持つのもまた一興。一風変わった大らかな時間を楽しませてくれるストーリーでした。正直好き。今後の展開にも期待。
感謝!ほろ苦ショコラフェス
久々にサブライターさんの執筆しているストーリーの感想。「感謝!ほろ苦ショコラフェス」です。バレンタインイベントは『ズ!!』アプデ前の無料解放イベントの対象だったため、「スカウト!」とまとめて執筆を行います。
バレンタインと言えば一般的には女性が男性に贈り物を渡す日ですが、『あんスタ』ではキャラクターたちがチョコを作ってファンにプレゼントするドリフェスとして物語が進行。
1年目のバレンタインデーということもあってか、メインはTrickstarとRa*bitsの1年生という安心して楽しめるメンバー。指導女子枠として嵐ちゃんが活躍します。
「ショコラフェス」は推しのチョコを人質にして全ユニットのライブを強制的に鑑賞させる『あんスタ』らしいイベントで、しかも後の返礼祭ではチョコの受け渡しにもトラブルがあったことが指摘されるなど、意外と業が深い。バレンタインデーは戦争なのだ。
手作りチョコを用意する彼らの微笑ましさ、具体性の高さは印象的でもはや実質女子とさえ言えるほど。メタ的な話になりますが、これは実際に経験のあるライターさん(主に女性)でないと書けない内容でしょう。
後半ではTrickstarからあんずに対する想いが強く語られていて、彼らからのラブコールを受け取っているような展開と絵作りに。バレンタインデーらしく、直球に乙女ゲーらしい要素も盛り込まれていますね。
特筆すべきはやはり光とアドニス・嵐でしょう。
陸上部という繋がりを持ちながらも、今まではなかなか見られなかった関係性が拡げられていました。光も「七夕祭」以降はあまり目立った活躍がなく、このイベントは久々にメイン格として彼を見ることができるストーリーでした。
特にアドニスはUNDEADを除くと密に交流していたのがクラスメイトである神崎くらいで、彼が先輩として振る舞っている姿を見ることは今までほぼなかったと思います。
彼は年下に避けられがちなことを気にしているので、慕ってくれる後輩はそれだけ大切な存在なのではないでしょうか。アドニスの持つ元来の優しさや面倒見の良さも垣間見えて、心温まる一幕を彩ってくれました。
光にとっても「走ること」は大きな個性の1つ。その部活動で彼を認めて可愛がってくれる先輩は、ユニットとは別にまた特別な相手となっているはずです。
に~ちゃんは先輩でリーダーだけど、どこか友達のようなところもある気の置けない相手。陸上部の先輩たちは、自分を一歩引いたところから教え導いて見守ってくれる尊敬の対象。
そんな違いがあるように感じられ、アイドルとはまた違った陸上部の姿が見られる物語でした。
スカウト!苺狩り
気の抜けるタイトルから、意外と真に迫ったストーリーが展開された「スカウト!苺狩り」。
年度末最後の公開ストーリーということで、3年生たちが卒業した後の学院生たちの姿が切り抜かれています。現時点では唯一のストーリーですね。
メインとなったのは流星隊の高峯翠と仙石忍に2winkの葵兄弟+あんず。「ひなたと翠」「ゆうたと忍」がクラスメイトであり、2winkの2人が異なった関係性を築いたことで4人が繋がったという成長が加味された内容。
翠の家業である農園の作業を手伝い(半ば遊び)ながら、
翠「過干渉は虐待と同じ」
ひなた「友達や家族だからって好き嫌いまで一緒にする必要はない」
ゆうた「家族は選べないけど、自分の背中を預ける戦友はちゃんと考えて選ばないと」
など、どことなく不穏な雰囲気を醸造する台詞を用いて、人間関係の本質性に迫って行くトークが光ります。
それぞれの価値観が近しいようで微妙に気にするところが違うので、全体を通して「人間関係とはかくあるべき」を感じられる物語になっています。この話で言われていた要点を多くの人が押さえれば、いわゆるトラブルは劇的に少なくなるはずです(ちょっとドライすぎる節もあるのですが)
そしてお家事情から達観力を見せる3人とは異なり、1人あたふたと「苺狩り」に走り回る仙石忍くんの浮きっぷりがまた微笑ましい。
「悔しい~、翠くんがピンチだと聞いたから颯爽と駆けつけたのに! 邪魔になってしまっただけなら、本末転倒でござる!」
「ううん、その気持ちだけで嬉しい……」
悪気のない肯定が仙石忍に襲い掛かる(※本人はスルー。さすが忍者)そこは「そんなことないよ」って言ってあげてほしいところ。
翠にも「その場にいてくれるだけで和む」と言われている通りで、僕としても忍にはそのような認識を持っています。ただこの「苺狩り」では、その忍が一生懸命に頑張っていること自体が物語を動かしたように思います。
後半ではあんずも合流し、卒業した守沢千秋に振り回される形で仕事がスタートします。卒業して1ヶ月と経たずにバリバリと仕事を決める有能アイドル 流星レッド。
そこでは頑張る忍に触発される形で、4人のやる気に火が点いたと思います。忍は目の前のことに一生懸命になれるし、目の前に何もなくとも自分でそれを見つけ出すこともできます。そうやって常に何かに一生懸命向き合い続けることで、動いて行く世界があります。
焚き付ける…というほど大それたものではないかもしれません。しかし、やる気を持って行動している人が必ず周りに好影響を与えて行くのは事実です。
何か突出してすごいことができるわけでなくとも、その努力が周りの突出したの力になることもあります。そして日々自分の長所を磨いて行けばそれが輝く瞬間もやってくるでしょう。
その成功体験を積み重ねた先、自信を持ってアイドルとして振る舞える日が来たら、仙石忍は「大化け」してくれるのだと思います。
3年生が卒業し、彼らもまた新しい活動方針を決めなければならない立場となりました。残された世代は先輩となり、新しいうねりを巻き起こす側に回ります。
今まで気を向けなかったところに気を向ける必要も出てくるでしょう。子どものニーズを理解するなどは、きっと千秋が率先して(フィーリングで)行っていたこと。彼らはそれに沿って演じていれば良い立場でした。これからはそれも自分たちでどうにかしなければなりません。
けれど流星隊の1年生は、誰もが目の前のことに実直に挑める強さを持っています。きっと力を合わせて乗り越えて行くことができる。一仕事を終えた翠と忍の姿からは、そんな前向きな光を感じ取ることもできました。
おわりに
「スカウト!」まとめは疾走感が大事。
いつもよりネタ色強めでお送りしております。
やはり日常系のストーリーは「この組み合わせだとこんな話になるのか」「このメンバーにはこんな共通点があったのか」など、全く考えもしていなかったところから発展するストーリーが多いのが楽しいですね。
一般的な作品だとあいつとあいつには実は全然接点がない(会話がない)といったことが少なくありませんが、『あんスタ』はそういった部分が1つ1つ丁寧に埋められていく小気味良さがあります。
全てのキャラが何かしらの関わりを持つところまで行くのかは分かりませんが、普通なら見られないであろう発展性を楽しめるのも「スカウト!」を押さえて行く魅力です。ほっと一息ついた感じですね。
次回からはまたイベントストーリーの執筆へ。リクエストのあったものか新たな「追憶」まで色々控えています。ようやく読める・書けるものに辿り着けそうで楽しみです。
いつも読んで下さっている方々、本当にありがとうございます。まだまだ先は長いですが、今後ともよろしくお願い申し上げます。それではまた。
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