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【ミリしら超感想】『アイナナ Second』第10話 「期限切れ」の重圧 思い出に揺れるRe:vale

2020年11月28日

 

引用元:https://idolish7.com/aninana/story/second/?p=1322

「だって…だって笑ってないと…
不安で押し潰されそうになる」

TRIGGERとの合同練習を経て、自分たちの進むべき道を再び取り戻しつつあるIDOLiSH7。彼らの前向きな変化は、次のステージに際する別の不安点を浮き彫りにしました。

「俺はの幸せは…借り物なんだもん」

それは5周年ライブの主役であるRe:valeの百が歌えなくなってしまったこと。未だ回復の兆しを見せない彼の不調。その理由が精神的なものであると知った陸たちは、彼に心の内を吐き出してほしいと懇願します。

彼らが光を取り戻せたのは、秘めたる気持ちを吐露し共有することができたから。隠し事はそのままにしておく限り不安と罪悪感を増幅させ、目に見えない重しとなって本人の心を蝕み続ける。それを理解できた彼らだからこそ、百の闇を照らし出すことができたのでしょう。

「俺は本物のRe:valeじゃないんだ…」

彼の口から出た衝撃の一言。
定められた消費期限、その意味を知る第10話。「期限切れ」の真実を紐解いて参ります。

Re:valeの真実

「俺は千の…"千さん"のファンだったんだ」

Re:valeは元々、千と別の人が組んで活動しているユニットアイドルでした。当時の百はそのRe:valeのライブに足繁く通うファンの1人。名もなき登場人物の1人に過ぎなかったとのことです。

ある日、千の相方はステージ上で照明が落下する事故に遭い、顔に一生残るであろう傷を負いました。

歌は歌えて身体は動くとしても、その傷跡はアイドルとしては致命的な障害になってしまう。デビューの話も白紙になり、当時のRe:valeは否応なく足踏みを余儀なくされてしまったのです。

そこにゼロのプロデューサーだったという男が声をかけ、「相方の顔の傷を治すこと」を交換条件にRe:valeを手にしようと試みました。一度は決裂した交渉だったようですが、背に腹は代えられません。2人でまたアイドル活動ができるのならと、千はその条件に飛びつくしかなかったことでしょう。

この話に上がったプロデューサーは、現情報を総合すれば九条鷹匡である可能性が高いと思っています。彼が自分の目に適う逸材を手に入れるため、人為的にトラブルを引き起こしているとしたら。それは相当に悪辣極まりない話です。

ただ、今の時点では彼を一方的な卑劣漢と解釈することに納得はできないため、隠された裏事情の存在も視野に入れておくべき。その場に居合わせた九条天は、誰の話をしているかの察しがついたはず。それでも天があえて口を噤んでしまったことに、過去にあったことの真実が隠されているのかもしれません。

千は相方の復活と引き換えに、自分たちの望まない方針でのアイドル活動を行うことに決めました。しかしそれを聞いた相方は、千のその選択を肯定的には捉えませんでした。

相方は千がその条件を飲む前に、彼の前から姿を消しました。

彼にはもっと自由に羽ばたけるフィールドがある。千らしく、Re:valeらしく歌える場所を探してほしい。その才能を自分のために籠の中に押し込んで、不自由な活動をしないでほしいと。最も輝けるステージに身を置いてほしいと思い、彼の未来を想って去ることを決めたようでした。

千の想い 相方の願い

しかし相方だって条件を飲めば、また2人でRe:valeとして活動することができたのは同じです。千と共にまたステージに上がれる。やりたくないことをやらなければいけないとしても、それ以上に優先すべきことはないのではないか。客観的に見ると、僕にはそう思えます。

だからそれほどまでに彼には千との別れを選ぶ理由があったということ。相方はそれだけ千というアイドルのことが好きで、どうしても彼に輝いてほしかったのでしょう。

そもそも彼が顔に怪我を負ったのも、落ちてくる照明から千を庇ってのことでした。今回の話の範囲からだけでも、彼は自分のことよりも千のことを考えて行動しているのは何となく感じ取れます。その千が自分のせいで不本意な縛られ方をしてしまうことに、相方は耐えられなかったのかもしれません。

ですがその選択もまた、千が望んでいるものではありませんでした。

元はと言えば、相方の傷は千を守ってできてしまったもの。千は千で、そのことに多大な罪悪感を抱えていたのは間違いありません。だからこそ、彼はどんな手段を使ってでも相方の怪我を治そうとしたはずです。

結果的に千はその行動のせいで、相方を想っていたせいで、相方を失うという地獄を経験することになってしまいました。

相方も千も、互いのことを想い合っていたのは明白です。むしろ相手のことを考えすぎるくらい考えてしまう、そんな関係性であったことが見て取れます。

千は相方をどうしても救いたかった。
相方は千にどうしても最高に輝いてほしかった。

その異なる想いがすれ違いを生んで、最も望まれない形に彼らは陥ってしまったのです。

理由はどうあれ、この時の千には相方とのRe:valeだけが全てです。彼が去れば千は不当な契約を飲まなくて済むけれど、アイドル自体を続けられるか分かりません。相方はそんなことも分からずに、彼を独りにしてしまったのでしょうか。

いえ、そんなことはないはずです。
諦めなければその先に未来は繋がる。千ならきっと自分以外の"新しい光"を掴んで輝くことができる。相方はきっと、その可能性に賭けることにしたのだと思います。

たとえ自分の立場と存在を犠牲にすることになったとしても、彼が光を失ってしまうことがないようにと。この地獄こそが、この時にできる彼らの最善だった。そういうことなのかもしれません。

百の熱意 千の決断

その後の千は、必死に失った相方の影を追いかけ続けました。それでも一向に彼は見つからず、遂にはアイドル引退を視野に入れて身を潜めることになってしまいます。

そんな千の話を聞きつけて、居ても立っても居られなくなった青年。それが現在のパートナーである百でした。

一ファンの身でありながら活動休止中のRe:valeの内情を聞きつけたり、直接彼の家に足を運んだりと異常な行動力を発揮した百。本当にただのファンだったのかにも疑問が残りますが、そこまでするほどの熱意を持っていたと解釈しても良いと思います。

歌をやめないでほしい、自分を仮に相方にして活動してほしいと、百はそう泣きじゃくって千に頼む日々を続けました。普通に考えたらあり得ない話です。引き留めるならともかく、「自分を相方にしてほしい」なんて。そんな出すぎたことをよく言えたものだと思います。

けれどきっと当時の百にはそれしか千の心を動かす方法が思いつかなかったのでしょう。

だからそれだけを武器に、必死に彼に頭を下げた。何度も、何度も。「どうしても千さんに歌をやめてほしくない」。それだけが純度100%の、この時の百の想いだったからです。

それを感じ取ったからこそ、千は百の気持ちを受け入れることを選んだのではないでしょうか。

「あの日から、夢を見てるみたいだった」

千の真意は、今はまだ僕には分かりません。彼が何を思って立ち上がり、百を相方として受け入れたのか。千というキャラクターのことも曖昧にしか分からない今、それを代弁することはあまりにも無理があることでしょう。

「憧れた千と、一緒に歌って。
友達みたいに悩みを分け合って」

ただ1つ思いを馳せるなら、相方を失い、Re:valeとして生きる意味を失っていた千にとって、最大限自分を必要としてくれる存在は1つの救いだったのかもしれないと思います。

「たくさんの賞を貰って!」

その人のためにもう一度立ち上がっても良い。自分を求めてくれる人のために、行動しても良いのかもしれない。千にそう思わせるだけの熱意がこの時の百にはあったのだと、今はそう信じてあげたいです。

何よりそれは姿を消した相方がそう望んで、千に託した願いの実現に他ならないのですから。

「でも…この幸せは俺のものじゃない…」

彼が百とも2人組のアイドルであることを選んで、名前も「Re:vale」のまま変えずに活動することに決めたのには、きっと理由があるはずです。本当に元相方との思い出をしまい込みたいなら、名前を引き継ぐことだけは絶対にしないでしょう。

だから千が百に向ける想いには、それとは別の特別な感情が入り混じっているのだと思います。

「――今のRe:valeは、本物じゃない」

それが百にとってポジティブな意味を持つ内容であってほしい。彼を傷つける結果に結びつかないでほしい。今はまだ、そう願うしかありません。

騒ぐアイドル 和む空気の先で

自分で設けた時間制限。
前の相方と活動していた5年間だけでも良いから俺と組んでほしい。

その期日が迫っていることに、そして千が元相方をまだ探していることを知った百は、そのストレスと重圧のせいで歌を歌えなくなってしまっていたのでした。

第8話の記事にてアイナナが解釈していた「百が歌えなくなった理由」をそのまま記事に取り入れてしまいましたが、これは作品としてのミスリードにしっかり引っかかった形に。

あの回はどうしてもアイナナに気持ちを向けざるを得なかったこともあり、これは"してやられた"という感じ。冷静に考えれば保留にしておくべきタイミングで、冷静さを保てなかった。しっかりと自分の心が作品に振り回されていることを実感させられます。

百の言い分をキッパリと「思ってない」と否定する千に対し、やはりそれを完全には受け入れられない百。そんな彼らを中心に、アイドル達による「立場の違い」に着目したコミカルな1シーンが描かれました。

それぞれがそれぞれの言い分をぶつけ合うカオスな時間は、そこまでの話との落差が半端ない。八乙女楽の面白発言に再燃する七瀬陸と和泉一織の軋轢(と言っても可愛いものだが)何故か結託する九条天と一織。「天にい大好き!❤」お前にはそう見えていたのかお兄ちゃん。

まぁそれでも意外と全員ちゃんと正論を話すわけですが、正論というのは人の数だけあるなぁと感じさせてくれる一幕で。こういったコミカルなやり取りが挟まることで、百と千にとっても自分の本心を話しやすい環境が作られるのだと思います。

「千さん。Re:valeの相方は、百さんから変えるつもりはないんでしょう?」

そして一撃で話を戻す十龍之介のファインプレーが華麗に炸裂。メンタル強いぜ。これができる豪胆さが、やはりTRIGGERでのセルフマネジメント力の高さに繋がっているのではないでしょうか?(?)

「…歌ってよ百。心から反省してる」

一連の騒動を経て、お互いの気持ちを交わし合ったRe:vale。そもそも、千も5年間を百と共に歩んできたのです。何もなかった頃と同じ気持ちでい続けているはずがありません。

「君の歌が聞きたい」

その気持ちは本心で、千は決して嘘を言ったとは思いません。千自身も、元相方と百を大きく比べているということはないでしょう。

思った通りの言葉を想った通りに百に伝えて。これで全てハッピーエンド。Re:valeは復活して、5周年ライブに向けて邁進するのみ。

そう誰もが思える大団円を迎えても、当事者の心が完全に晴れ渡るとは限らない。

「…………!」

百は歌えず、Re:valeは未だ復活しない。
その理由は千はおろか、百本人にさえ一切分からないことだと思います。

果たして百の本当の心の引っ掛かりはどこにあるのでしょうか。そして千が元相方と百に向けている想いの形は、どのような違いを孕んでいるのでしょうか。

もう少し、彼らの闇を追いかける時間は続きそうです。

「言わない」か「言えない」か

Re:valeの苦悩の裏で進展するもう1つの物語。

逢坂壮五は再びあの時の不審な少女と再会。
彼女のホラー行動によって、四葉理であると確信します。深夜に見るには心臓に悪い映像です。

理が言い放って行った謎めいた発言は、今後のRe:valeや九条家の物語の時に意味を持ってくると思います。言いたいことと言ってはならないこと、やって良いことやってはならないことを同時に抱えている時、人は時に支離滅裂な行動を取るものです。彼女は年頃で特殊な境遇に置かれてしまっているため、余計にそうなりやすいと解釈します。

今回の主題は、理に出会ったことを壮五が環に話すのかどうかです。前回は色々な事情のせいで「言えない状況」にありましたが、今回の出会いでその障害は取り払われました。逆に「言わなければならない状況」に入ったと言って良いはずです。

しかしながら幸か不幸か、その間にMEZZO"の関係性もまた新しい形に変化を始めていたのです。アイドルとしての彼らの関係や仕事の順調さを鑑みると、前回とは異なった角度から「話すべきか」を選択する必要が出てきてしまっていました。

「話した方が良い…?話さない方が良い…?」

こういう曖昧な状態な時に二者択一な重要な局面を迎えると、悪い可能性は幾らでも出てきてしまいます。特に壮五のようなタイプは次から次へとリスクが思い浮かび、完全な雁字搦めになってしまうでしょう。

「…ん?壮ちゃん?
何?何か言いたいことあんの?」

だから彼はどちらも選べない。
あらゆる可能性を考えてその先を見据える過程で、全てのバッドエンディングを想像してしまうからです。

行動を起こせば結果は必ずついてきます。そして結果とは常に正解と不正解、その両方の可能性を孕むもの。どちらに転ぶかは蓋を開けてみるまで分からず、事前に把握する手段はありません。

だからこそ、考えれば考えるほど悪い方ばかりが目についてしまう。こうなるかもしれない。ああなったらどうしよう。そういった不正解の選択肢はどんどんと増えて行きますが、その過程で正解が増えることはありません。

「どっちが環くんのためになるんだ…?」

常に1つの正解と、多くの不正解が頭の中ではせめぎ合う。それが現実です。結局人はそうなった時、最後は「自分がどうしたいか」という指針に委ねるしかなくなるのです。

でも壮五はここに来ても「環のため」を一番に考えて行動してしまっています。それでは答えが出るわけがありません。

「…言わないのかよ。アンタ、そういうとこあるよな…もう」

そうして逢坂壮五は、環に何も伝えませんでした。自分の意志で言わないことを選んだのではなく、どうしようもなくなった結果"言えなくなった"という最悪の形で。そのひび割れは、今後の彼らの関係性により大きな禍根をもたらすでしょう。

「どうしよう、どうしたら…」

どんな理由であれ、これで環と壮五の間には「妹のことを隠した(隠された)」事実が生まれました。それも言い逃れできないほどに、決定的な違和感を残す状況がセットに。これは本当に恐ろしい事態です。

多くの可能性を考えてその先を見据えるあまり、目の前で起こっている最も大事なものを見落としてしまう。

"考えすぎ"によるその苦悩は、感覚派の環に正しく伝わってくれるでしょうか。

一見進展の兆しを見せながらも、進めば進むほどに拡がって行くMEZOO"の間にある小さなズレ。それが取り返しのつかない爆発を生まないことを祈っています。

思い出に縛られる者

「――どうしたら…」

ビルの屋上で独り思い悩むRe:valeの百。
歌声は未だ戻らず、誰も見ていない深夜のビルでさえ声を発することができません。

千を信用していないわけではない。それでも心のどこかに引っかかった想いを、完全に消すことはできないものです。

――あと10年一緒にやってても…。
"俺のために"あそこまで取り乱す千は、見られない気がするな。

千は元相方に嫌気が差したわけではないし、元相方も千のことを想って去って行きました。彼らは未だに相思相愛で、心のどこかで想い合っているのは確実です。

だからこそ、その思い出は神格化されて、千の心に残り続けています。失われた者の穴を埋められるのは、その失われた者だけ。死んだ人の思い出は誰にも忘れさせることができないように、百がどれだけ頑張っても千の思い出を上書きすることはできません。

決して彼が悪いのではなく。人間の心はそういう風にできていて、そのようにしか生きられないというだけのこと。

「なんで…!なんでなんだよ…!」

ただその覆せない事実が、共にある者にとっては辛い。

今一緒にいるのは自分のはずなのに、これから自分が彼とより長い時間を過ごせるはずなのに、彼の一番には絶対になれないことだけは分かってしまっている。

その上、心のどこかに「期限切れ」で捨てられるかもしれないという可能性が0.000001%でも残ってしまっているとしたら。百の持つ苦しみと悲しみは、自身の想像さえも遥かに上回って彼の心を苛むでしょう。

「教えてよ…千…」

人間の心は、100%完全に1つの方向を向くわけではありません。そこに宿る様々な意志や欲望の中には、本心と相反するものが含まれていて当然です。

そして今の本心からズレたほんのわずかな激情が、時として全てを反転させてしまうことさえあるものです。解決するには、それらを拾い集めてぶつけ合うしかありません。

「俺は…どうしたら…」

この状況の中で心を苛むものを探し出し、互いに正しく交流することはきっと難しい。それでも心優しきRe:valeの周りには、彼らを慕う後輩たちがいます。彼らは良き先輩を支えようと、そばで懸命に動き、声をかけるのです。

独りでは超えられないものも、仲間と一緒なら違った結末を描き出せる。それが『アイドリッシュセブン』がここまで語り続けてくれた物語。

Re:valeもまた、その一員として光り輝く瞬間が訪れるはず。それを信じて、彼らの活躍を楽しみに待ちたいと思います。夜明けはもう、きっとすぐそこです。

おわりに

2期からの新キャラクターにしてキーマンでもあるRe:vale。ようやく彼らのことを中心にした記事が書けて、大変に充実した執筆になりました。

まだまだ問題は山積みです。ゼロの曲のカバーをすることでRe:valeに降りかかっている非難の正体、それに伴って存在している「毒」の疑惑など、百が歌えない理由に物理的な原因がある可能性もなくなったわけではありません。

現時点では気持ち中心の読み解きを行ってきていますが、全てを踏まえての真実が今後明かされて行くのが楽しみです。

早いもので『アイナナ』2期ももう10話。既に後半戦なんですよね。キャラクターの個性が発揮されるタイミングも増えており、やり取りの軽快さや一言一言の重みも楽しめるシーンもかなり多くなりました。毎週一話が終わるのがとても早く、先の展開をワクワクしながら見ています。

そして苦悩を重ねた分だけ、最後に見せてくれる輝きと感動は確実に大きなものとなる。より高密度で味わい深い物語を最後まで堪能させてもらえることに期待して、この記事を終わらせたいと思います。

それではまた次回の記事で。お読み頂きありがとうございました。

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。二次元イケメンを好み、男性が活躍する作品を楽しむことが多い。言語化・解説の分かりやすさが評価を受け、現在はYouTubeをメインに様々な活動を行っている。

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