今回執筆するのは「スカウト!BADBOYS」。
「スカウト!」ストーリーですが、大型アップデート直前キャンペーンにて扱われていたため1記事にて執筆です。
しかしBasicにて『ズ!』のストーリーが全て無料公開されたことを思うと、直前キャンペーンとか何時ぞやという感じ。記事の数も多くなってきましたし、執筆文字数もアプリだけで20万字は超えたかと。ミリしらから始まって遠くまで来ましたね。いつ終わるんだろこれ。
さてそんな回顧もそこそこに、紐解いて行くのはRa*bitsの物語。
個人個人は色々なストーリーで顔を出してくれていましたが、ユニット全員が主役となるものは本当に久々な印象。ユニット単位での登場も、特に2016年はValkyrie絡みが多いせいもあるでしょうか。
彼ららしい可愛らしさと"悪さ"への葛藤が混在する心温まる物語。しっかりと楽しませて頂きます。それではどうぞ。
Ra*bitsの在り方
仁兎が急遽参加した「ジャッジメント」を終え、一息ついた頃合い。Ra*bitsに舞い込んだグラビア撮影の依頼から「BADBOYS」の物語は始まります。
本来の彼らからかけ離れた、少し"悪い"イメージが求められる雑誌での撮影。Ra*bitsの積み重ねてきたものを壊しかねないリスキーな仕事ではありますが、その分新たなステージへの第一歩を踏み出す挑戦にもなり得る内容です。
そんな仕事を前に、Ra*bitsのメンバーが自身の在り方とイメージと向き合って行く姿が魅力的に描かれた「スカウト!」ストーリーでした。
"かわいい"を武器に夢ノ咲学院の荒波を突き進んで行く彼らには、時間制限という大きな障害があります。男性の身体的要素と"かわいい"はどうしても相反するもの。身体が成長して行けば行くほどに、そのイメージを保つのは難しくなって行きます。
だからその"かわいい"をどうにかして維持して行く努力をするのか、はたまた時間の流れに逆らわず自分たちの新たな魅力を発見して行くのか。Ra*bitsのようなユニットは、このどちらかを考慮しながら活動して行かなければなりません。
特に高校生の3年間は肉体的にも人間的にも変化が大きく、体格も子どもから大人に大きく移り変わる時期。そのせいで彼らは、自身の変化と否応なく向き合う必要が出てきてしまいます。現実でも高校1年生と高校3年生だと、雰囲気が全然違っていたりしますよね(に~ちゃん…)
ですが本来、自分たちの軸を見つけてまっすぐ進んで行くだけでも大変なことです。Ra*bitsが必要しているのは、その軸を維持しながら別の道を模索するということです。これは、外部が想像する以上に心理的負担が大きい行動だと思います。
彼らが持つ「自分たちの武器」がそれだった以上仕方がなく、これは避けようがない現実だったと解釈するしかありません。しかしまだまだ知名度もそこそこの彼らが背負うには、なかなかハードな現実であるのは事実しょう。
"かわいい"と向き合うこと
時間制限を意識するRa*bitsにとって、未来への選択肢を増やしておくことは必要不可欠。やってみなければ分からないこともある。
というわけで、危ない橋を渡ることになると分かっていながらも、彼らは"悪い"イメージの追求に挑戦することを選んだのでした。
ただ彼らは"かわいい"を武器にしているのであって、厳密に言うと「かわいくなりたい人」ではありません。自分たちがアイドルとして活動するならそれが最も理に適っていると判断しているだけで、初めから"かわいい"ユニットを作るために集まったメンバーではないのです。
こう見えて意外と打算的なユニットなのですが、それでいて誰1人としてその在り方に疑問を持っていないというのも特徴です。それはつまり彼らの人間的な素養とユニットの在り方が合致していると判断できるでしょう。
今までの話を総合すると、Ra*bitsの一年生たちは「すごくやりたいわけではないが、苦なく実行できる」という理由で、"かわいい"で勝負する仁兎の方針に沿い始めたのだと思います。
文面だけみると非常にドライでビジネスライクな雰囲気を感じるのですが、現実の彼らはそうはなっていません。むしろ多くの人が、初めからそれがやりたくて結成したと感じるだろう空気感を持っています。
転じてそれは、それだけRa*bitsの在り方が彼らには合っていたことになります。彼らは"かわいい"を演出するのが楽しいし、楽だと思える人間だったということです。
"素の自分"で振る舞うことが"かわいい"に繋がるという言い方が分かりやすいでしょうか。例えばKnightsの嵐は自分の持っているものに反発しながら"かわいい"を目指す少女、一方でRa*bitsの面々は普通にしていればもう"かわいい"という感じ。その個性をどう取るかは、個人の主観によると言ったところ。
だから急に「悪ぶれ」と言われてもできるわけがないんですよね。
彼らが頭で考えて"かわいくなっている"なら別なのですが、実際はその振る舞いは自然そのもの。言ってしまえば「自分ではない自分を創る」経験は、ここまで一切してきていないわけです(※友也は演劇部ですが、役を演じるのと自分ではない自分を演じるのは全く異なる技術)
だからどんなに頑張っても真の"悪"に迫ることはできないし、どんなに頑張っても"かわいい"になってしまう。ここから脱却しようと思うと、Ra*bitsというユニットの根幹から変えて行く必要があるわけです。
自分たちの長所を活かして活動する。苦なく無理なくパフォーマンスすることが、最終的に見る者を強く魅了する結果を生み出す。それは紛れもない真理です。だからRa*bitsはまだ、その自分らしさを武器にして活動するのが一番だと思います。
その中で、いつまでもそのままではいられないジレンマと戦って行く必要があるわけですが。彼らは既に、停滞を望まず変化の必要性を思案するレベルに至っています。ならば着実に前に向かって歩んで行くことができるのはないでしょうか。
変化とは急なものではなく、1つ1つの積み重ねによって気付いたら変わっているもの。
この「BADBOYS」を今の彼らなりに完璧にこなそうと考えて実行することは、間違いなくその足掛かりの1つになることでしょう。あんずもそう感じて、彼らにこの案件を持ってきたのだと思います。
ここから素の自分たちを活かして"かわいい"を貫いて行くのか、それとも"かわいい"を伴った全く新しい"カッコいい"を持つユニットに変化して行くのか。
今後ともRa*bitsの飛躍が楽しみになる。そんな物語でした。
今回活躍したキャラクター達
それでは今回も1人1人の発言や対応をしっかりと見て行こうと思います。
仁兎なずな
ナイトキラーズとして活動したことが、確実に今回の件へのモチベを引き上げているのが愛おしい仁兎くん。
打算的に物事を考えることや演出の方向性など、明らかに斎宮宗の影響を受けまくっているのも確実。その辺りに本人が自覚的なのかどうかが気になるところです。斎宮がRa*bitsの面々を高く評価しているのには、そういう理由も含まれていたりするのかも?
しかしValkyrieでの失敗経験を意識的にRa*bitsに反映しているため、自分の意志を押し付けることはありません。メンバーの長所短所を活かした方針を常に考えていて、個々人の在り様を尊重します。過去の経験が、現在のリーダーとしての活動にしっかりと紐ついているのが分かります。
特に今回は「過去にテレビによく出ていた」「命じられた役割をきちんと果たすのは得意」などの発言から、アイドルとしての経験の豊富さが強調されている印象。
普段は「3年生なのにかわいい」という要素から周りに少し舐められがちな雰囲気がありますが、こういう機会では踏んできた場数と経歴が本物であることをしっかりと感じさせてくれますね。
ただ今のところ、仁兎はValkyrieでの経験を「失敗だった」と"思いすぎている"節があるように見受けられます。と言うか、失敗だった部分だけを意識的に見すぎているというイメージでしょうか。
「あれは良くなかった」「もっとこうしないと」と思うことのベースには常にValkyrieでの経験があり、転じてそれが彼自身の自己否定に強く繋がってしまっているように思います。
実際はValkyrieでの経験には良いこともたくさんあったはずですし、前述の通り彼のリーダー観は確実に"お師さん"の影響を受けています。Valkyrieでの経験をもう少しポジティブに見られるようになると、彼はより良い形で活動ができるのではないかと強く感じました。
Valkyrieからも完全には抜け切れず、どこかRa*bitsに対しても「お客さん」という気持ちが拭えない。それは恐らく、自分の中の負の感情との折り合いがついていないせいでしょう。
もっともValkyrieから事実上の脱退を決めてからまだまだ日が浅いですし、すぐにどうこうできる話ではありません。自分独りでどうにかできることでもないのかもしれません。
けれど今の仁兎の周りには彼の良いところをたくさん見て、尊敬してくれる後輩たちがいます。「Ra*bitsを良い形にしてやりたい」と思う過程の中で、彼自身もまた後輩たちから与えられる側に回ることもあるはずです。
Ra*bitsはしっかりとコミュニケーションを取れていますが、また仁兎には蓋をしている部分がある。そしてそれは後輩たちに少しずつ見抜かれています。それが、良い形で化学反応を起こす日が来ることに期待したいですね。
天満光
悩める少年はまたも悩む。
これで意外とよく悩む。極端なところがある。
難しいことを考えるのは苦手としながらも、自分のことと自分の立ち位置についてはすごく綿密に理解している光くん。
知識や思考とは別のラインで、自分が「どう在るべきか」「どう見られているか」「どうして行くべきか」をかなり敏感に感じ取ることができる様子。ただそこから先を考える能力には乏しいので、どうにも自分1人で悩みを解決することができないようです。
快活なのは間違いなく快活なものの、こと"自分"という生き物に対しては繊細でもある。それだけ周りのことを想うからなのでしょうが、彼は彼でなかなか生き辛そうな性質の持ち主なんだなと感じました。
身体能力面ではRa*bitsの中では秀でていて、アイドルとしての素養は頭1つ抜けている光。それ故に、皆と足並みを揃えられないことが彼個人のネックとなっているようです。
ここまで周りとの協調性を意識するのは、やはり過去の経験や人生観によるところが大きいのでしょうか。
個人競技に勤しんでいたから「いまいち、協調性がない」と自分を評していますが、そもそも協調性のない人間は協調性のないことに気付きません。それをあえて口に出すということは、何かその気付きに至るだけの経験があると考える方が自然です。
その辺り踏まえて、また語られるタイミングもあるかもしれません。ただ1つ言えるのは、君は自分が思っているよりも周りから愛されているし、望まれているということ。もっと自分を認めてあげてほしい。
紫乃創
今回は純粋にかわいいかわいいしていたかわいい人。
スバルに好かれていたり紅茶部というとんでもない部活に在籍していることで妙な関係性をたくさん持っていて、細々と色んなストーリーに顔を出してくれている印象。
今回も「ナイトキラーズの話を英智から聞いた」という事実で場を引っかき回していて(※悪いのは天祥院英智)、その関係性の豊富さでストーリーの山をしっかりと演出してくれました。
一方で、実は個人的な話が未だほとんど語られていないメンバー。Ra*bitsの中では一番深いところが分かっていないキャラになっている気がします。
何も分かっていないというわけではなく、家が貧乏だとか妹がいるだとか意外と力が強いだとか本当は坊主にしたいだとか、表面的な要素自体はかなりの数が提示されている状態。そこから先がイマイチよく分かっていない少年ということです。
決して不遇なわけではなく、出番は多いし見せ場もあるし、語られていると言えば語られている。ただそれ以上ではない。気にしなければそれで過ぎ去って行くけれど、冷静に考えたら実は俺しののんのことよく知らないかもしれない。そんな感じ。
これが何かを溜め込んでいるデカい爆弾なのか、それが彼らしさなのか。もう少し気にしつつ、ジリジリと待ってみましょうか。今のところは癒し枠です。
真白友也
Amazing!(威嚇)
英語の授業で単語に反応して怒られてそう(?)
妹のことを「野暮ったい」と評するなかなかな兄貴。多分妹にもそう思われてますよ!兄妹揃って同じような努力をしている模様。
演劇部エピソードで大きな見せ場があったため、Ra*bitsでは今回も「普通の少年」として振る舞う友也。会話にはしっかり参加しているものの、(渉のことを口にしている時以外は)これと言って特筆すべき発言がないのは彼らしさでしょう。
ですが演劇部での出来事を加味することでユニット内での立ち位置が明確になっているところもあり、彼自身が全く目立っていないと言われれば嘘になります。前と比較してキャラとしての存在感は増していますし、演劇部の話を出すだけで面白いという強みは得ています。
今後はRa*bitsの一員としての活躍も見てみたいと感じますが、逆に部活で成長したものをRa*bitsに持ち込むキャラクターに徹してくれても味わい深いのかなとも。
全体的に演劇部のストーリーでの活躍が多そうな印象はありますし、異なる経験をどう結び付けて"アイドル"になってくれるのか。それを見守りたいキャラクターです。
Ra*bitsは"かわいい"をコンセプトにしたアイドルユニット。全員がそれに納得して、素の自分で精一杯のパフォーマンスに勤しんでいる。
だからこそ今の彼らは、全てにおいて一枚岩というわけではありませんでした。彼らが共にいる理由とRa*bitsである理由。それは少しだけ異なっています。そしてそのわずかな違いが、関係性の綻びとなって彼らに襲いかかる可能性も決してゼロではないのです。
人として共にいたいと願っても、アイドルとしての枠組みから外れてしまえば道を別つ必要もあるかもしれない。
誰にも話せないような未来への恐怖。それが知らない内にわだかまりを生み出して、取り返しのつかない諍いに発展させることも少なくない。それが人生というものです。
「だから光ちんも、他のみんなも、何か気がかりなことがあったら言えよ」
そうならないために、やはり気持ちは確かめ合わねばなりません。些細なことでも取り零さず、1つ1つ確実にコミュニケーションして共有し合う。話してみれば「なんだそんなことか」で済むくらいが丁度いい。それを言わなかった時にどうなったか、想像できないくらいがきっと。
「おれも、そうする。もっと、おまえらに心を開くよ。弱い小動物だからこそ、群れて互いに寄り添うんだ」
それを為し得なかったから、壊れるのを止められなかった関係を仁兎なずなは知っています。
そんな彼を見て過去の経験のせいで過敏すぎるのではないかと、そう思う人もいるでしょう。ですがその気配りを必要としている人たちもいて。そのおかげで心が軽くなる者もいるのです。
何事もなかったかのように、皆が笑顔でやり取りできる時間を生み出すことができるとしたら、それはに~ちゃんの努力のおかげに他なりません。
「おれたちは、いつでも一心同体の『Ra*bits』だぞ~♪」
変わったことにさえ気づかないまま、いつも通りの関係を自然に続けられる。それがどれだけ幸せなことかは、失ったことがある者にしか分からない。
Ra*bitsの日常は、そんな在りし日のマリオネットの後悔と経験の上に立っています。同じ過ちは繰り返したくない。そう強く願い仁兎の想いの上に立つアイドルたち。
「一緒に成長していくぜ~、動けなくなったらオレが背負ってやるぜ♪」
「だから、生意気だってば。こいつめ~、かわいいなぁ♪」
願わくばこの時間が、この先ずっと続きますように。平和に笑い合う彼らを見ていると、そんな有り触れた言葉がふと口を突いて出るような。そんな和やかな気分にさせられるのです。
おわりに
全員が元気で全員が良い子。
そんなRa*bitsが描く「BADBOYS」な姿が魅力的な掌編。
"悪い"という価値観もまた主観によるものです。"良い"の外側には相反する"悪い"があるように、良いの中にも別の"悪い"があります。その"悪い"の違いを、完璧に解釈できる人ばかりではありません。
誰かが何の気なしに言った1つの言葉が、言われた側の心の端に引っかかってしまい。普段は何の問題もない小さなものが、色々なものが積み重なった時に引き金となって情緒を乱してしまう。これもありふれた日常の一幕だと思います。
そんな時にできるだけ問題が大きくならないように、しっかりと解決できるやり取りをすること。それがとても大切だと思わせてくれるストーリーでした。
人と仲良くなればなるほど「これくらいは大丈夫だろう」と思う範囲が増えて行き、コミュニケーションもどんどんと杜撰になってしまうことが多いです。本当は仲の良い人ほど、よく分かっている相手ほど小さなことを気に掛けてあるべき。
Ra*bitsの関係性は、その理想の1つを見せてくれるものだと思います。現実の自分たちも友人とのやり取りを省みて、彼らを見習って行きたいと思わされますね。
それでは今回はこの辺りで。2020年もあと少し。こちらは2016年があと少しです(?)頑張りましょう~。
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