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【超感想】『ヒプノシスマイク(ヒプアニ)』第10話 「麻天狼 VS Fling Posse」自分らしく生き抜く者達

2020年12月11日

 

引用元:https://hypnosismic-anime.com/story/?id=10

熾烈な争いが繰り広げられたディビジョンラップバトル決勝トーナメント第1回戦。結果はMAD TRIGGER CREWの勝利で幕を閉じました。

しかし彼らの戦いはこれで終わりではない。山田一郎と碧棺左馬刻の因縁はこれからも続いて行く。そんな"これから"を感じさせながら、今回の大会は新たなステージへと移って行きます。

第2回戦は麻天狼 VS Fling Posse。
こちらも何らかの因縁を持つ神宮寺寂雷と飴村乱数の直接対決が実現します。

過去のエピソードでは、中王区との裏での繋がりを匂わせてきた乱数。チーム同士の戦いだけでなく、彼が今回の大会でどのような動きを見せるのかにも注目が集まりました。

真っ向勝負と決め込んだ第1回戦から打って変わって、様々な謀略と策略が渦巻く第2回戦。その一部始終を描写した第10話。

Today is a good day to die.
今日は死ぬには良い日だ。

人は誰しも、後悔も何もかもやり残したことのない人生を送るべき。不穏なサブタイトルに隠されたメッセージ性。その内容を紐解いて参ります。

麻天狼の在り方

BusBroの3人が敗北の味からまた1つ絆が深めていた頃、麻天郎の控室では緊張に震える観音坂独歩の姿がありました。

ラップスタイルこそ破天荒、感情を爆発させた独自性の強いヴァイブスを響かせてくれる彼ですが、普段のメンタルは一向に強くなる気配はありません。

そしてこれから立つのは日本全国が注目するステージの上。"普通の人"でも固まって動けなくなるような歓声を前にすれば、独歩のような者が平静を保てないのは無理もないことだと思います。

一方で独歩の隣りに立つ幼なじみ 伊弉冉一二三は相変わらずのマイペース。

自信家…と言うよりは周りのことにあまり頓着がないという言うべきでしょう。どんな状況下でも自分自身を乱さないその生き方は、一世一代の大舞台レベルであっても決してブレることはないようです。

気にしすぎで動転する独歩を、笑いながら傍観するいつもの光景。時や場が変わっても維持されるその関係性は、彼ら2人に自然さを取り戻させてくれるもの。それこそがこの2人が揃って同じチームに在籍する意味。そして、麻天狼がここまで勝ち残ってこれた理由の1つにもなっているはずです。

脇汗にはパッドをつけておけばいい。心臓バクバクなら血流ビートでラップの練習をすればいい。どこまでも楽観的でポジティブな一二三を見ていると、こちらも笑顔になるというものです。ちなみに血流ビートはさすがの伊弉冉センスですが、脇汗の方は明らかに独歩が気にしすぎだと個人的には思います。本番になったらそんなこと忘れてしまいますわよ。

そんな2人(※一応言われた通りに血流ビートで練習しようとする独歩が愛らしい)の姿には目もくれず、神宮寺寂雷はこれから行われるラップバトルに想いを馳せていました。

これから対戦するFling Posseには、因縁の相手である飴村乱数が在籍しています。

かつては同じチームで最強を欲しいままにした仲間。それが今となっては、自分の右腕たる助手を昏睡状態に陥れた主犯格。

「飴村くん…君は一体…」

元々大きくタイプが異なった相手とは言え、一度は信頼を交わし合った相手には違いない。その乱数が、どうしてあのような悪事に手を染めてしまったのか。そのことを寂雷は憂いているようでした。

決して許すことのできない相手のことでも考えずにはいられない。何か理由があるのなら、情状酌量の可能性は残さねばならない。彼の立居姿からは、そう思っているように見受けられます。

どこまで行っても神宮寺寂雷の行動のベースにあるのは"慈悲"だと思わされます。

悪は裁かれる運命であっても、その裁き方と裁かれ方は全てを踏まえた上で決める必要がある。社会という集団の中で初めて実現するその理性を、神宮寺寂雷は個人として保有しています。

「…独歩くん、一二三くん。
いつもの私たちで行きましょう」

精神統一済ませた寂雷は、改めて共に歩む2人の仲間たちへと気を配りました。

「"いつも通り"で良いんですよ」

彼の持つ慈悲は今はもちろん、目の前の2人に最も強く寄せられています。その愛情と優しさに溢れる笑顔を受け取った独歩と一二三は、寂雷の言葉によって安心して同じ方向を向けるのです。

目指すべきはディビジョンバトルの頂点。その前に存在する大敵を打破するため、一蓮托生の思いで麻天狼はステージに上がります。

狂う飴村乱数

時を同じくしてFling Posseの控室。
寂雷が夢想する乱数の姿はそこにはありません。

乱数が鎮座していたのは、中王区が管理するとある一室。そこで勘解由小路無花果と乱数との密談が行われていました。

飴村乱数は過去のエピソードにてと電話でやり取りをしており、何かしらの主従関係にあることが示唆されています。その内情はアニメでは明かされていないものの、直に会ってやり取りができるほどに言の葉党と深い関係にあったようです。

そのやり取りから乱数は初めから、このディビジョンバトルを政府の思い通りに動かすために用意された存在だったと考えるべき。少なくともTheDirtyDawgの解散を手引きした時から、彼らはずっと繋がっていたのでしょう。

主たる目的は「一郎、左馬刻、寂雷の3人が再度結託することがないように監視する」こと。

煮詰めた負の感情をぶつけ合う愚かな戦いとは言え、深い交流を経れば何が起きるかは分からないのが人間です。そうならないように、"4人目"には努めて和を乱すような行動を徹底させる。乱数は、そんな彼女たちの姑息な策略の一部に組み込まれていたのでした。

しかしながら、劇中では乱数自身も一郎を頼ったり左馬刻と仲良さげに会話したりと、拗れていない関係を悪化させるつもりはなかったようです。元々壊れている部分がどうしようもないほどに粉々になっていますから、余計なことをする必要はないという判断でしょう。

何より乱数自身が、その彼女たちのやり方を快く思っていなかったのは明らかなこと。

彼は彼なりに、現状に抗おうと戦い続けている。それもまた間違いない事実だと思います。

抗えない理不尽

無花果が乱数に提示した作戦は、真正ヒプノシスマイクを利用して寂雷を傀儡にするというものでした。

通常のものよりも出力が大幅に強化されたそのマイクを使用すれば、相手を人格ごと意のままに操れるようになるとのこと。

しかし代償として、その使用者は出力に耐え切れずに命を失う。無花果たちは寂雷のラップアビリティを手に入れるため、乱数に犠牲になれと言ったのです。

それはつまり乱数という1人よりも、寂雷という1人の方が価値ある存在だと判断されたということ。乱数が聞かされたのは、彼が最も嫌う相手を優先し、自身を取るに足らない存在と切り捨てる決定でした。

それが彼にとってどれほど屈辱的なことなのか、我々には分かりません。そして彼女たちもまた、その事実を考慮していないのかもしれません。

彼が過去の関係にどんな感情を抱いているかなど、使う側からすれば些細なことでしかない。ただ手持ちにあるコマを捨て石にしてより優秀なコマを獲得できるチャンスがあるなら、とりあえず実行に移してみる。たったそれだけのこと。それだけのことのために、飴村乱数は未来を奪われようとしています。

「命令を実行しても…背いても…俺は…」

今まで何だかんだ言いつつも彼女たちの命令を聞いていたのは、何か聞かざるを得ない理由があったからと考えるべきでしょう。命を失う命令であっても簡単には反抗できない。それほどに強力な束縛が乱数の身には存在しています。

それでも。乱数は今回の命令ばかりは納得できない。どうせなら"道具"としての役割を真っ当してからこの世を去ってもいい。そんな気持ちも消え去るほどに、飴村乱数は感情のままに自分を動かそうとしています。

憎悪の矛先

「運に、未来か…」

ポッセの控室に帰ってきた乱数を迎え入れた幻太郎と帝統の2人は、乱数の異変にすぐに気付いたようでした。隠そうとしても漏れ出す負の念を感じ取り、彼らなりに乱数を元気付けようと言葉をかけて行ったのです。

何かあることには気付いている。気付いていながらも余計な詮索はせず、ただ自分たちの関係性の中で彼にしてあげられることを考える。Fling Posseはそんな"友人"を思わせる関係性が心地良い3人組です。

それぞれの立場があり、それぞれに抱えるものがある。根掘り葉掘り聞いたところでしてあげられることは変わらない。だったら、相手が話してくれるまではいつも通りの自分たちでいよう。彼らの行動からは、そんな柔らかい気持ちが伝わってくるようでした。

「こいつらには自由がある…でも俺には…」

しかし今回の乱数は抱えるものが大きすぎました。そして自分から話すことも到底できないのはもちろんのこと、聞かれたって答えようのないような内容で。いつも通りに飄々と振る舞う仲間たちを見て、自分だけがそこから外れてしまうことへの嫌悪と憎悪は何倍にも膨らんでしまいます。

「どうせ散るなら…寂雷もろとも…!」

その感情の矛先は、最も憎むべき神宮寺寂雷へと定まりました。

真正ヒプノシスマイクは使用者を亡き者にする出力を持っている。ならば当然、それを向けられた相手を同様に目に遭わせることも可能。

「――寂雷…!!」

命令に従えば寂雷は言の葉党の傀儡となり、自分はこの世から去る。命令に背けば何も変わらず、自分だけがこの世を去る。

ならば命令に従ったフリをして、寂雷と共にこの世を去るのが"結果的には"良い。それが彼が最後に見出した"未来"でした。

「行こう Fling Posse。
見の程ってものを分からせてあげるから」

前向きな言葉でチームを鼓舞する2人と異なり、自分の強い負の感情のみを胸に歩みを進める飴村乱数。この時の彼に、幻太郎と帝統の言葉は果たして届いていたのでしょうか。

暗雲立ち込めるディビジョンバトル第2回戦。「麻天狼 VS Fling Posse」の戦いが幕を開こうとしています。

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。二次元イケメンを好み、男性が活躍する作品を楽しむことが多い。言語化・解説の分かりやすさが評価を受け、現在はYouTubeをメインに様々な活動を行っている。

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