新サイト移行後、そして2021年初の『あんスタ』記事。何だかんだ丸っと3週間も空いてしまいました。ここからはまた週1ペースを頭に入れて執筆を再開します。よろしくお願い致します。
再開後1発目は2017年の幕開けを飾った「太神楽!祝いのニューイヤーライブ」です。
SSを終えたTrickstarと紅月という取り合わせで、彼らがタイマンを張るのは「メインストーリー 一部」の前半以来。何だかとても懐かしい気持ちになりました。
あれから変わったものもあれば、変わっていないものもある。そんなところに着目して執筆できればと思います。様々な経験を経て結ばれたTrickstarと紅月の関係性を紐解きます。今回もよろしければお付き合いくださいませ。
原作初のSSに連なる物語
「迎春! 隠し芸大会☆」もとい「太神楽」は、夢ノ咲学院のお偉いさんを集めて行う新年の決起会のようなものでした。元のネーミングがおじさんすぎる。天祥院英智のせいか?
外部で行うドリフェス自体は少なくありませんが、外部から人を呼ぶドリフェスというのは前例がかなり少なかったかもしれません。SSにてTrikstarが優勝した直後ということもあり、彼らが催し事に出演すること自体が大きな意味を持つでしょう。
この「祝いのニューイヤーライブ」はTrickstarがSSを終えていることがかなり強調された内容になっており、実質的なSSの後日談兼新たな始まりに当たるストーリーという印象です。SSがガッツリ話に絡んできたのも、今回がほぼ初めてという感じ。
僕はアニメにてSSまでの一連の流れを見てきているおかげで、すんなりと話に入って行くことができましたが、当時のファンは何もない状態でいきなりこの話を見せられたわけですよね。びっくり。どのような反応があったのかは、非常に気になるところです。
今までの出し渋りを解放するかのように「TrickstarがSSで優勝したこと」「何らかの試練が彼らに訪れていたこと」「それを乗り越えてまた一段と成長したこと」などの伏線がちりばめられていて。まるで「いよいよSSという大舞台へのストーリーが始まるぞ」という決意表明のようなものを感じます。
SSに向かって行く「キセキシリーズ」はTrickstarにかなり辛辣な内容となっていますし、長い時間をかけて付き合って行くには体力と精神力が必要だったと思います。
彼らがたくさんの困難に直面していても、その先にはしっかりと「祝いのニューイヤーライブ」が待っている。
それがオンタイムで追いかけていた人たちにとって、1つの救いとなっていた面もあるのではないかと思いました。
さぁアニメ先行だからこそ感じられたこのストーリーの大きな存在意義に触れたところで、次項ではその中身へとしっかり迫って行きましょう。
変わらないTrickstar
隠し芸×ライブという異色のドリフェスに臨むことになったTrickstarと紅月。
エキシビジョン的な内容であるとは言え、勝敗をつける以上は当然そこには真剣勝負が待っているもの。それぞれの立場や状況に言い訳せず、しっかりと真剣に目の前のドリフェスに取り組む姿がとても印象的に映ります。
元々のスタイルや特色を考えれば、間違いなく紅月の方が有利なドリフェスです。そこに向かってTrickstarがどう折り合いを付けて行くのかが、今回の大きな注目ポイントでした。
序盤で提示された内容で特に押さえておく必要があったのが、「TrickstarはSSを制したからと言って"学院最強"になったわけではない」ということです。
革命からSSに至るまでで得た結果の全ては、あくまで彼らの精神力や根源的な煌めきによってもたらされたもの。技術的なことを言えばTrickstarはまだまだ最上位クラスではなく、あくまでまだ発展途上のユニットであることが語られました。
アイドルの頂点を決めるSSで結果を残したわけですから、名実ともに最高峰のアイドルになったと言っても過言ではない状況。普通に考えればTrickstarは自分たちの出した結果に酔いしれ、慢心に溺れてもおかしくないと思います。むしろ、多少はそれが許される立場になったと言っても良いはずです。
にも関わらず、彼らは決して自分たちの実力を過信しません。目の前に立つ紅月を強者だと認識し、自分たちよりも格上の相手だとリスペクトして事に臨むのです。
彼らにとっては大きな結果も1つの通過点でしかなく、自分たちの本質を捻じ曲げるほどの意味を持たないということでしょう。そればかりか、周りが自分たちを見る目の方が変わってしまうことを恐れる、純朴な少年たちのまま彼らはそこに在ってくれました。
それが実にTrickstarらしいと言うか、どんなに大きく成長してもTrickstarは"あの頃"のままなんだなぁと思うと、ついつい顔がほころんでしまうものです。
アニメを視聴し終えて丸1年以上が経ち、原作にも慣れ親しんできた頃合い。ようやくと言うべきか一足早くと言うべきか、ここに来てSSを終えたその後のTrickstarの姿を垣間見ることができました。
全てのユニットに平等に出番があるのが『あんスタ』の魅力ですが、入りをアニメとする者としてはTrickstarの活躍にはやはり1つ特別な思いがあります。好きとか推しているとかとはまた別に、見守っているというような感情があるとでも言いましょうか。
そんな彼らの大きくなった姿が見られたのがこの「ニューイヤーライブ」の大きな見所でした。
変わって当たり前の環境で、変わらないままでいること。それがどれほどに難しいことかは考えるまでもありません。だからこそ特に意識せずともそれをやってのけているTrickstarは、本当の意味で"アイドル"足り得る存在である。改めてそう思わされたのです。
次期生徒会長の重責
Trickstarの中で特に目立った活躍をしたのが、生徒会絡みで紅月ともパイプを持つ衣更真緒でした。
年が変わり3学期が始まると、学生は一気に進級と卒業を意識するようになります。SSで結果を残したユニットの一員であり、生徒会でも最重要メンバーのそばにいることが多い真緒には、自ずと次期生徒会長就任への期待がのしかかります。
立場というのは、得てして本人の意思や希望とは反したところから顔を出すもの。自分で選んだ場所に望んだままいられる者の方が少数派であり、大抵の人は"為すがままに"新しい椅子に座らされることになるのです。
それを受け入れて前に進むのか、後ろを向いてふて腐れるのかは本人次第。ただその1つ1つをどう過ごすかで、人生は如何様にも左右されることになるでしょう。
真緒もまた生徒会長は自分の担うべき職ではないと思いながらも、客観的に考えれば「自身の就任は妥当性の高い選択である」という認識を持っています。やりたくないと思っていても、やらざるを得ないだろうと感じ取ってはいる。その事実が、彼の心に1つの大きな覚悟を宿らせています。
そしてその覚悟によって、真緒は徐々に生徒会長の器へと成長して行くのでしょう。
嫌々ながらに受け入れるのではなく、しっかりと自分の心と折り合いをつけて未来と向き合って行く。そのメンタリティの差が、本人さえ気付かないうちに彼自身を変化させて行くのです。
生徒代表として新年の祝辞を述べることになり、あまり得意ではない「自分が一番注目を浴びる」立場に挑戦した真緒。何でも器用にこなせる彼ですから、苦手と言っても無難にこなすことができます。人並み以上に重責を務め上げ、誰が見ても「上出来」と言えるスピーチを結実しました。
しかし真緒は自分の中ではそれに全く満足することができませんでした。「何か珍しく凹んじゃってる」と言うほどに、今回の一件について多くの後悔と反省を残しているようです。
それだけ彼が自分のこれからについて自覚的ということでしょう。自分が思っている以上に、これから全うすべきものに意識を注いでいる。故に心が自分の想像を超えるダメージを負ってしまうのです。
特に真緒の場合、周りには100点満点以上でその立場とアイドルを両立させてきた先輩たちがいます。それを間近で見ている分、自分への要求値も高くなるのは当然です。
そのせいで周りが「良かった」と言ってくれても、自分で自分に厳しく対応してしまう。けれどそれこそが真緒の良さで、同時に人の上に立つ者に持っていてほしい才覚だと思います。そういうところが普段より見えるから、諸先輩方も「適任だ」と言うのではないでしょうか?
ストーリー中で英智の言う通り、時代が変われば求められる為政者の形も変わります。英智の持っている才覚は今の夢ノ咲には不要であり、それを丸っとコピーする必要はありません。
ポスト英智となることを意識すると、どうしても同等以上の才覚を自分に求めてしまうものと思います。そこを無理に進もうとせず、改めて自分の長所を見詰め直して今までの生徒会とは違った道を行く。一番大事なのは、それを本当の意味で真緒が理解することなのでしょう。
1つの経験から多くを得ようとする真緒であれば、それはきっと時間が解決してくれることだと思います。たくさんの経験を積みながら、真緒にはこれからまた一回りも二回りも大きくなっていてほしい。僕はそう願っています。
「太神楽」それぞれの戦い方
正月ボケも許されないままに、息つく暇もなく始まる「太神楽」。Trickstarと相対する紅月もまた、手を抜くことなどない全力投球です。直前の相手の功績にも動じることなく、全力で過去の雪辱を晴らしに向かいます。
手数や技術力、多芸さであればやはりまだまだ紅月はTrickstarの上を行きます。今回のようなライブ以外の芸事を必要とするフィールドでは彼らが圧倒的に有利。特に"和"を求められる場では、学院内でも他の追随を許さない実力者となるでしょう。
しかも今回の相手とは、策を弄されたとは言え一度は辛酸を舐めさせられた因縁があります。リベンジマッチになるだけに、彼らがこの戦いに懸ける想いには格別なものがあったと言えるでしょう。
ただ当時と大きく変わっているのは、彼らがそのTrickstarを見る目です。紅月はTrickstarを取るに足らない相手と考えることはもうせず、全力で立ち向かって打破しなければならない強敵と認識しているのです。
年度初め、彼らの眼の前に現れた新進気鋭の4人組は、生徒会の治世を脅かそうと現れた無礼な狼藉者に過ぎませんでした。実力も実績も物足りず、紅月にとって眼中に入れる必要さえないほどの弱小ユニットだったと言って良い。
にも関わらずTrickstarはあの日紅月を討ち果たし、挙句その先では皇帝率いるfineさえも打倒して革命を成就。瞬く間に時代の寵児へと登り詰めてしまいます。
あまりにも鮮烈な光を持ったその忌み子たちは、革命を成し遂げてからも決して驕り高ぶることなく、等身大の輝きを持って晴れある大舞台を制しました。もはや彼らのことは、強者として認めざるを得ないと言ったところでしょう。
自分たちが「これが最良だ」と思って歩んできた道のり。それを感情的に否定して新しい時代を切り拓いたTrickstarは、自分たちでさえ為し得ることのなかった"最良"を導いてしまった。紅月にとっては度し難い、何とも度し難い相手に違いありません。
それでも彼らはもうTrickstarを否定しません。
過去の感情を咀嚼して飲み込み、今の彼らを称えて全力で向き合う。それが今の紅月がTrickstarに向けるアイドルとしての敬意でした。
そしてTrickstarもまた紅月を"敵"とは認識していない。共に高め合える夢ノ咲のライバルとして、自分たちを上回る力量を備えた先駆者として、物怖じせずに対峙するのです。
過去を乗り越え今に立ち、未来を見据えて火花を散らし合う。そんな両者の交流の中でしか出せない輝きが「太神楽」の中では体現されました。
革命の成果
芸事を得意とする紅月は、準備してきた隠し芸さえも完璧そのもの。今まで培ってきたノウハウを武器に、隠し芸とライブを複合した十全たるパフォーマンスで観る者を魅了してくれました。「太神楽」の名目通り忠実に、彼ららしい格式高さを放っています。
SSでTrickstarが優勝したとて、その後塵を拝すアイドルは夢ノ咲には存在しない。常にその前方を狙って追い越し追い越され、そうやって切磋琢磨を続けて行くことを支持者に誇示するかのようです。
そんな紅月と相対するTrickstarが選んだ戦い方。それは「隠し芸の中でもライブを行う」というものでした。
隠し芸に歌やダンスを取り入れてはいけない決まりはなく、Trickstarは一連の流れをあくまでもライブという形で演出することにこだわりました。それが自分たちを最も輝かせることができる方法だと、彼ら自身が認識できているのでしょう。
Trickstarはこの1年足らずの間にアイドルとして立ち上がり、アイドルとして頂点に立ちました。故に彼らにできることはアイドルで在り続けることしかありません。他のことを要求されたとしてもその基盤は変わることがなく、彼らは求められるままに歌って踊ることで煌めきを振りまくのです。
(度し難い。だが同時に、面白い……! 馬鹿じゃないのか貴様ら、何でそんなに一生懸命なんだ!)
普通に戦っても紅月に対する勝算はない。だからこそ自分たちの空気に場を飲み込める空気を作り出し、アイドルとして戦い抜く戦略を整えた。それこそがTrickstarがTrickstarである由縁。いつだって他の者には真似できない、彼らだけの輝きを放てる理由。
(必死に考えたんだろうなぁ! 嬉しいぞっ、見ているだろう英智! 貴様も腹を抱えて笑っているだろう、惜しみない拍手と声援を贈っているだろう!)
英智の革命をそばで見守り、その後も共に彼を支えることを選んだ蓮巳敬人。
荒廃した時代を粛清し、彼らが新たな夢ノ咲学院を生み出すことに固執したのは、ひとえに学院をより良い方向へと是正するためでした。
時代と悪者扱いされた生徒会とて、決して私利私欲のために事を起こしたわけではありません。彼らもまた明るい未来を目指して行動した開拓者の1人に過ぎなかったのです。
彼らの活躍により、無法状態であった夢ノ咲は確実に良い方向へと歩みを進めた。それは確固たる事実です。しかしそれでも完璧ではなかった。荒くれ者を淘汰するために敷いた行きすぎた統治は、次第に学院生たちの自由を圧迫し、新たなる反発を生むことに繋がりました。
(こんな連中が出てくることを、俺たちはずっと願っていた! 硬直し、腐敗していくだけだった夢ノ咲学院で! ずっとずっと!)
それが分かっていてもそうせざるを得なかった。今さら後に引くことなどできるわけがなく、自分たちのやり方が正しいと信じて進むしかない。
もしその信念を捻じ曲げることがあるとしたら、それは自分たち以上に強い何かを持った者が現れた時だけだろう。
その現れることを願っていたのかも、望んでいたのかも分からなかった存在は、時を経て確かに彼らの前に立ちはだかりました。
(貴様らを待っていた、会いたかった!)
全力で抹消しようとしても尚も折れずに立ち向かってくるそれを前にした時、彼らは自分たちの本当の願望に気付くのです。
あの時、英智は「僕はアイドルになりたかったんだ」と言いました。自分たちが目指したアイドルたちの理想、自我を捨てさせ合理的で画一的な"アイドル"を量産するという姿勢。それは皇帝の本心からの望みではなく、消去法で残った最善手に過ぎなかったということです。
本当はアイドルはアイドルらしくあるべきだと、英智こそが誰よりもそう強く思っていた。だからそれをそばで見続けてきた蓮巳敬人は、その想いを託しても良いと思える"アイドル"が現れたことが、本当は嬉しくてたまらなかったのでしょう。
(全てが手のひらの上なんてつまらない、新風を吹かせてくれ! 時代を前へ前へと進めてくれ!)
確かに続いたTrickstarの快進撃は、彼らに宿る意志がただ一瞬の暴発ではないことを証明してみせました。夢ノ咲から生まれた"アイドル"として、アイドル最高のステージで人々を魅了する。その結果を持って、天祥院英智の革命は1つの到達点へと辿り着いたと言えるはず。
(嬉しいなぁ、英智! 夢が叶ったぞ!)
SSを終えても自由に、奇抜に、全力で"アイドル"を演じ切るTrickstarは、自分たちが信じた以上の存在となってこの場に在ってくれている。そう感じる故に、蓮巳敬人は心からTrickstarを賞賛しています。
そんな相手と持ち得る手立てを尽くして戦うこの大一番が、ただの隠し芸大会で終わって良いわけがない。
ひたすらに自分たちのベストをぶつけ合い、認め合えるライバルとして、彼らのステージは唯一無二の輝きを放つこととなりました。
変わらないTrickstarの在り方と、変わって行く彼らの関係性。それは1年前には考えられなかった理想の実現に他なりません。
誰か1人でも歩みを止めれば果たせなかった現実で、誰か1人でも欠ければ描けなかった夢の先。結びついた革命の成果を持って、新しい1年がここに幕を開けました。1つの終わりは新しい始まり。彼らがより素晴らしいアイドルとなって行く過程を、これからも追いかけて行きましょう。
おわりに
「太神楽!祝いのニューイヤーライブ」はキャラの新しいことが分かると言うよりも、今までの彼らを総括して歩み出す結びとキッカケが同時に行われたようなイメージでした。なので感想記事も、物語重視の書き方にしてみました。
一介のイベントにしては集大成感があるし、かと言って「返礼祭」ほど終わりを感じさせるものでもない。この終わりと始まりが同時に来るような感覚は、新年のイベントにはピッタリだったなと感じます。
僕としても『あんスタ』感想の執筆を空けてしまったこともあり、改めて気を引き締め直すのにとても良いお話になってくれました。Trickstarから再度始まるというのは、また良い巡り合わせだったなと思います。
ここからは年度末に入り、かなり重めの話が連続して行きます。より良い感想を書けるように頑張りますので、お付き合い頂けますと幸いです。
それでは今回はこの辺りで。『超感想エンタミア』のはつでした。また次回(※サイト開設に伴い、毎回記事の終わりをこれで結ぶことにしました)
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