今回は2017年上半期の「スカウト!」ストーリーなどの感想をまとめて執筆して行きます。
毎期の節目ではあるので、これを書くと前進したなぁという思いが強まりますね。何となく1年の上下で割ってしまいましたが、作品感的には年度の上下で割った方が分かりやすかったかも。と今更ながらに後悔。どこかで調整できたらします。
そんな余談もさておき、4つのストーリー「メルティ❤甘くほどけるショコラフェス」「スカウト!高貴なる遊戯」「スカウト!カードバトラー」「スカウト!ビブリオ」を順番にお届け。いつもよりスピード感を感じながらお楽しみ下さいませ。
メルティ❤甘くほどけるショコラフェス
バレンタインのイベントで、前年と同じくサブライターさん執筆のストーリー。
表題キャラに司が選ばれている通り、メインを飾るのはKnights。そこにRa*bitsの面々も加わり、2つのユニットの関係性に重きを置いた物語が展開されています。
前年の「ほろ苦ショコラフェス」は陸上部にスポットが当たっていたこともあり、所属している一部のキャラは再登場。関連付けて物語が語られているため、出番は少し控えめと言ったところです。
このストーリーで取り分けしっかり感じ取っておきたいのは、5人組のKnightsが緩く過ごすところがフィーチャーされている点だと思っています。
レオ加入後のKnightsのストーリー(※日日日先生執筆のもの)は総じて刺激的な内容が多く、全編通して血の気を感じないものが大変少ないです。彼らが平和に(比較的)ダラダラと過ごしているところを見られるのは、それだけも貴重であると言えます。
またRa*bitsとKnightsの交流もさほど多くはない(※「探偵VS怪盗団」で拾われた組み合わせなものの、主題であったとは言いにくい)ため、全体的にふわふわとした空気感で物語が進行します。『あんスタ』は関係性を持つとだいたい誰かと誰かが殺伐とするので、こういう時は案外接点があまりないユニット同士の方が平和に話が進むものです。
中でも衣装交換などで親睦を深めた(?)友也と司は特に強くスポットが当たっており、2人は内面描写についても対比的に語られている節がありました。
司は自分の名前を全く覚えなかったリーダーが、ユニット外の人間であるRa*bitsのメンバーに強く興味を持ったこと。友也はメンバーである光が自分たちに本心を隠したままに、「他に優先しているものがある」ように見えることを気にしています。
それぞれユニット内での自分の立ち位置に完全な自信を持っていないという共通項があり、転じてそれが自分以外の他人に向ける感情の執着に繋がっているきらいがあります。今回の場合はそれが劣等感から来る嫉妬に繋がって、彼らの心にわずかなモヤ付きを残してしまっているようでした。
それ故に、彼らはどこかで通じ合うところを見出すことができたようです。友也と司は2人ともユニット活動に真摯な点も似通っており、自身の境遇を共有し合うだけでも馬が合うはず。その交流には何の違和感もありません。
他ユニットの衣装で着飾る彼らの姿も新鮮には違いありませんが、やはりどこかにコレジャナイ感を孕みます。そのことには彼ら自身が気付いもいて、今回のやり取りは彼らにとって「今のユニットこそが唯一無二の居場所である」という自覚をより強く持てる場になったことでしょう。
大切に想っているからこそ、人は嫉妬して自分のことを一番に考えてほしいと思ってしまうもの。そのまま放っておけば、その感情は後の禍根となり得るかもしれません。しかしその都度で正しく咀嚼して飲み込むことさえできれば、その感情の対象が自分にとって必要な存在であることを実感する機会になるのです。
ゆるく温かい空気感の中で、わずかなネガティブをポジティブに変換して。その後に彼らが和気藹々とチョコレートを作り、ライブで気持ちを乗せて届けるからこそ"幸せ"が体現されるのだと思います。
何となくやってもお客さんは喜んでくれるのは一緒ですが、裏側で育んだ感情はさらなる満足感と幸福感を目の前の人に届けます。その積み重ねがあるからこそ、彼らはアイドルとしてどんどん大きくなって行くことができる。そんなことを感じさせてくれるストーリーでした。
スカウト!高貴なる遊戯
家柄組(?)というありそうでなかった組み合わせで進行するストーリー(良い家の出という観点では他にもいっぱいいるが)
表題キャラは弓弦ですが、アクティブな活躍を見せるのはどちらかと言うと桃李の方。
ただ桃李がドタバタしている=弓弦の出番があるということなので、存在感的なことを言えば弓弦が主役というのには納得感がありますね。
過去ストに比べると全体的に弓弦→桃李の当たりが強めに描かれているような気がしており、気のせいでなければ幾何かの関係性の変化が感じられます。
fineは各キャラが目立つストーリーは多いものの、ユニット単位で活躍しているイベント自体は実はかなり少ない状態です。年末~年度末にかけてのストーリーはこの時点ではほぼ描かれていないため、まだ伺い知れないところで何かがあったと考えるのが自然でしょうか。
桃李も昔であれば絶対にやりたがらなかったであろう給仕の仕事に率先してチャレンジした上に、(文句は言いながらも)犬猿の仲である司に詰られても仕事を途中で投げ出さないなど意外性のある動きを見せてくれます。こちらも心境の変化があったと見ておくべきだと思っています。と言うか司の性格の悪さが爆発している。何が問題かと言われればこれが確実に一番大問題。
やめなさい。
ただ桃李を前にした司の"建前が崩れている感じ"は非常に好印象なので、この2人の組み合わせを見ているのは楽しいですね。
そして途中から現れる天祥院英智は仕掛けられている罠にわざわざ引っ掛かりに行ったり、桃李をおもちゃにする司を後から現れて弄んだりと、かなりやりたい放題を決めています。どう考えてもこいつが一番子供で性格が悪いのがあまりにも最悪なストーリーです(褒めている)
今回の物語における影の主役は、その罠を仕掛けた張本人。姫宮桃李の妹さんでした。
学院では誰よりも子供っぽくてワガママ、英智を慕う末っ子ポジの桃李ですが、家に帰れば自分にべったりな妹の"大好きなお兄さま"だったというわけです。
夢ノ咲学院という新天地にて努力を重ね、人間として一回りも二回りも成長して行く姿が印象的な桃李。けれども外の世界に没頭してしまうことは、元々一緒にいた者との時間を犠牲にすることとイコールになってしまう行為です。
時間は有限だからこそ、人はその時その時で最も優先度の高い相手を選んで行動しなければなりません。決して元からの関係性を蔑ろにしているつもりはなくとも、省かれる側はどうしてもそう感じてしまう現実があります。
作中では衣更真緒と朔間凛月の関係などでその辺りの問題が触れられてきましたが、彼らは同じ学院内で過ごしている分だけ解決のチャンスも豊富です。互いの事情を想像して慮ることも、徐々にできるようになることでしょう。
一方で桃李の妹は、「お兄さまがどこで何をしているか全く分からない」というのが大きな問題点。どれだけ桃李が頑張っていようとも、自分と一緒の時間が減ってしまうのならそれは純然たるマイナスです。しかも、今はそれが1年近く続いている状態。感情も鬱積して然るべきだと言えます。
成長した桃李の姿さえも、「自分の知らないところでお兄さまが変わってしまった」と解釈されても仕方がない状況で。それでも人はいつかは外に出て、家から離れて新しい自分の人生を歩まなければなりません。
だからこれは避けようのない通過点。
それを放置して、来るべき時が来ただけと切り捨ててしまっても良い。お前もこの機会に変わらなければならないと、妹を突き放して試練を与えても良いのです。
ただ彼ら兄妹を最も近くで見てきた弓弦は、そうすることを望んでいませんでした。そして何より、桃李自身が妹と歩み寄ることを選んでいて。彼ら家族は内側に向ける優しさを、今も変わらず持ち続けているように見えました。
家柄を持つ彼らは、その家柄に縛られるが故にそれを自分の武器として振るう権利を持っています。誰よりもそれを強く自覚する英智は、同様の資格を持つ司と桃李により広い世界での戦いを要求します。
それは彼ら個人にとってはより素晴らしい人生に向かっていくための道標であり、同時により内側に向けられる時間を削っていく呪縛でもあります。目の前にある光を求めて進む限り、陰った後ろに気を配る余裕はどんどん無くなって行くでしょう。
けれど、そうなったとしても。姫宮桃李と伏見弓弦は、自分を待ってくれている家族に向ける想いを捨て去ってしまうことはきっとない。
"家柄"を利用するだけではなく、"家族"を大切にすることを忘れないまま、彼らは新しい一歩を踏み出していく。そんな希望に溢れた物語が、「スカウト!高貴なる遊戯」で表現されていたと思います。
スカウト!カードバトラー
ポーカーでもやるのかなと思ったらマジック・ザ・ギャザリングが始まって大困惑。
過去スト含めた『あんスタ』きっての問題作(※主観)が大登場。一体誰をターゲットに書いたんだこれは。
想像以上にあまりにもリアリティがあるカードゲーマー描写に、さすがにライターの実体験含んだ内容だろうと言う他ないストーリー。恐らく全TCGユーザーがこのストーリーの内容には納得します。
と、カードゲームの話をし始めると平気で10,000字を超えそうな(上に読者さんには結局伝わらない)ので、今回はキャラの関係性に的を絞って書きましょう。
「カードバトラー」は大人気カードゲーム(らしい)「イドバト」を多くのキャラでワイワイ遊ぶ内容で、主に上級者である大神晃牙と朱桜司の2名を中心にして物語が進行します。この記事の司率スゴいな。
上級者として主にストーリーを牽引した晃牙は、本当にカードゲームが好きなんだろうなと思わせる知識とプレイング、矜持を持ってイドバトをプレイ。後出しとは言え「勝つためなら何でもやる」気性の荒さと威圧的な言動は玉に瑕ですが、カードにかける情熱は確かなものを持っています。
一方の司は金に物を言わせたデッキで、初心者狩りに興じるなかなかのプレイを披露。この記事を書いている間にスオ~の株がどんどん下がってるぞオイ(※初心者に弱いデッキ=簡単なカードが多い束を渡すこと自体は間違いではない)
そんな冗談はさておき。実感値としては司のカードゲームに対する知識や考え方は、僕の感触としては「"一人遊び"のそれ」に近いなと思いました。
カードゲームは対戦相手がいないと成立しない遊びです。やりたくてカードを集めてみたは良いものの、周りにプレイヤーがいないという状況は普通にあり得ます。
1人で複数のデッキを組んでごっこ遊びのように1人で対戦させてみる…という遊び方をしている人も珍しくなく、司もその"一人遊び"に興じる1人であると推察しています。あんずに無理矢理ルールを教えて付き合わせているのも、恐らくそういった理由が関係しているのでしょう。
だからデッキの性能に偏りがあるのも、弱い方を友達に渡すのも、司のプレイ歴と心情的には自然なことです。何より友達とカードゲームで遊べるという状況自体が、司にとっては本当に嬉しい現実、「夢が叶った」ような幸福感があったと思います。
その状況で客観的に自分の行動を省みるのは難しい。晃牙は司のプレイスタイルを諫めていましたしそれは正論ではあったのですが、司の方に気を向けると「まぁ致し方ない」とも言えるのです。
その後は司が巻き込んだ1年生たちが続々とイドバトにハマって行き、友達伝いにプレイヤー数は増加。1年生の教室でプチブームを巻き起こします。少年たちの間で1つの遊戯が広まる時は、得てしてこういう流れを踏むもの。大変にリアリティが感じられる描写です。
対戦型のホビーはそれを通じて友達付き合いを増やし、時には年齢という垣根を肥えた"遊び友達"を生むこともある。それが本当に良いところだと思います。
僕も熱心にカードゲームで遊んでいた頃は、いつも様々な年齢の人たちと対等な対戦に興じていたものです。中学生の頃にショップ大会で大人に買って優勝したり、大学生の頃にショップ大会で小学生の女の子(※小学生以下の部全国優勝者だった)に追い詰められたり、鮮明な思い出も少なくありません。司のように熱中しすぎて親にカードを没収された経験も数え切れないほどありますし、ただならぬ親近感を覚えてしまいます。いかん油断するとすぐに早口で自分語りをしてしまう。
そんな司の少年心が偶然の出会いを生み出して、1つのキッカケが大きな輪を作っていく。
立場や年齢を忘れて、ただただ"楽しい"というだけで集まって盛り上がる。何のしがらみもない平和な時間がひたすら最後まで続くストーリーで、『あんスタ』の世界観ではかなり珍しい形式を取った1本だと思います。
最後の最後まで「カードゲームを一緒に遊びたい」という気持ちだけで怒ったり泣いたり笑ったり。果ては身銭を切ってカードを買いに行ってしまったり。とにかく「これぞ少年」という本当に異質な内容で、読んでいて心がとても温かくなりました。
いわゆるやかましいカードゲーム(アニメ)感のある内容ではなく、粛々とカードゲーム(ホビー)を遊ぶ内容なため、それぞれのカードの扱い方や遊び方にキャラクター性がしっかりと表れているのも面白ポイント。
その辺は動画で細かく語ってみましょうかね。恐らく文章で読むと前提知識の共有が必要なせいで勉強っぽくなってダルいですが、話半分で聞くには良い内容だと思いますので。
スカウト!ビブリオ
図書室を取り巻く生徒たちによる、どうにも要素の混雑が激しい一作。
紫之創と高峯翠という組み合わせからして珍しく、そこに3年生のつむぎと蓮巳が加わるという謎メンバーなのが特徴的です。序盤の創ちんと翠のやり取り、完全に恋に発展する前の微妙な関係を醸すカップル未満な人たちのそれだった。
ここのところは「スカウト!」もかなり整った内容のものが多かったため、こういう斬新さのある組み合わせのストーリーは久々な気がしています(冷静に考えたら「カードバトラー」もそうだが、内容のインパクトが勝った)掌編としては読んでいて楽しみの多い内容でした。
表題キャラは青葉つむぎが務めますが、全体の進行担当は創が担当するという構成に。
創はユニット外にも稀有な関係性をたくさん持っていて、何となくRa*bitsと関係なく登場する時の方が面白い動きをしてくれる印象があります。
Ra*bitsにいる時はそのゆるふわな性格で、騒がしいメンバーの間をのらりくらりとしているイメージ。それ以外の時は、逆にその柔らかい性格で周りの関係性にゆらぎを与えてくれているような感覚です。物語の進行役というポジションは、意外と彼に合っているのかもしれません。
中盤以降は蓮巳とつむぎが過去に持っていた関係性も拾われて、思いの外大きな進展も描かれます。
英智という共通の友人(?)を介した関係程度しか情報がありませんでしたが、本好きという共通項を介して直接的な関係性を持っていたことが判明。蓮巳の過去の創作活動にも一枚噛んでいるなど、意外とディープなやり取りをしている仲なことが今回で分かりました。あと眼鏡。
内容としては方向性的に「本好き3人」が中心となっていて、そのせいで「色々あって創に付き合った翠(※創と元々仲が良いわけでもない)」が最初から最後まで明らかに浮きまくっているのが何とも面白いです。
別に物語の展開としては翠であった必要性はないものの、故に翠は登場キャラの個性がスパイスとして反映されやすい立ち位置にいたと言えます。今回の場合「翠だから同級生の創をそっとサポートできていたんだな」というような見え方になるのが、彼が登場した"意味"ではないのかなと思います。
そういった新規の関係性が描かれたことを除くと「特に何も起こっていない」という内容になっており、「カードバトラー」に続き人畜無害なストーリーなまま終わってくれています。夏目は地下書庫について勝手な思い付きを述べているモジャモジャ頭にキレる権利はある(元々勝手に占拠している身とは言え)
ただこの「ビブリオ」、割と近々に「追憶*それぞれのクロスロード」が控えているため、明らかにそれへの伏線を意識した創りになっている気配を感じています(※雰囲気的にデッドマンズ辺りの内容が回収される「追憶」だと思っている)
つむぎがそこに絡んでくるかは現状は何とも言えないのですが、少なくとも蓮巳の過去については押さえておいた方が良いだろうと思っています。そういう意味では、提示された情報の重要性は内容以上に高いと考えられるストーリーです。
公開順に読んでいるとは言え、先に展開されている内容は露見している状態。故にこういった先読み的な見方ができるのも、僕の楽しみ方の1つでしょうか。「スカウト!」はまとめのタイミングで本当にまとめて読んでいるのですが、今後はとりあえず先に読むようにしてみようかなぁ。
おわりに
というわけで4本まとめ書きです。要点だけを4本分書く都合、いつもより読んで解釈するのが大変なような書くのが楽なような、まぁ一長一短です。
直近に書いた記事が"アレ"だった影響で割と疲弊していたので、今回扱ったストーリーが全体的に馬鹿馬鹿しくてゆる~いやり取りの作風なものばかりだったのは助かりました。改めて『あんスタ』の光部分の魅力に触れ直して、エネルギー再充填!という感じですかね。
最近はそんなこんなで『あんスタ』の記事更新のペースが鈍化してしまっており、色々お待たせしている方には歯痒い思いをさせてしまっているかもしれません。
何より僕自身が自分で自分の首を絞めているよう状況であるとも言えるのです。このペースで続けるといつまで経っても現行の内容に追いつくことができず、『あんスタ』がサービス終了するまで一生化石のまま生き続けなければなりません。それは困る。4年前のストーリーのツイートをバズらせている場合じゃない。
またしっかりと更新ペースを戻して、来年には「ズ!」を書き終えるのを目標に頑張ろうと思います(目標)よろしければ、ゆるりとお付き合い頂けますと幸いです。
それでは今回はこの辺りで。超感想エンタミアのはつでした。また次回の記事でお会い致しましょう。
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