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【ミリしら超感想】『A3!』第20話 困惑する冬組 「タイマンACT」と無間人形

2020年12月7日

 

引用元:https://www.a3-animation.jp/story/s20.html

"濃い"キャラクター揃いの「冬組」が始動し、新たなスタートを切ったMANKAIカンパニー。

経験や感性など他と一線を画する粒揃いのメンバーたちですが、それだけに1つにまとまって行くのは大変そうな印象も。

最初からこじれた関係性などもあり、今回も前途多難な様相を呈しています。

まだまだ一切の先が見えない冬の物語。その方向性が見え始めるこの20話を、今回も紐解いて参ります。よろしければお付き合いくださいませ。

「タイマンACT」を巡る物語

「GOD座はMANKAIカンパニーに、タイマンACTを申し込む!」

「タイマンACTだと!?」
「何かねそれは?」

何かねそれは?

冬組の物語の指標として打ち出されたのは、劇団を敵対視するGOD座から受けた宣戦布告。『A3!』独自の形式による公演「タイマンACT」でした。2つの劇団が同時に公演を行い、どちらの公演が良かったか観客の投票で決める真剣勝負。演劇を利用した格闘技と言ったところでしょうか。

現実でも演劇の優劣を決めるコンテストは当然あるものの、2つの演目が互いの威信を懸けてぶつかり合うというのは極めて稀なこと。表現では優れた作品を賞賛する必要こそあれ、明確な敗者を決める必要はないからです。

しかし『A3!』の舞台は、現実よりも舞台演劇が浸透した現代日本。ここまで忘れがちでしたが、実際の演劇事情とは異なる部分があって当たり前でしょう。

演劇が大衆娯楽として一大地位を築いており、ストリートACTなども当たり前に許容される世界観の作品。それだけ様々なスタイルの文化が成長していてのが自然と言えます。タイマンACTも演劇にそういったヒリつきを求める人にとっては、十分に価値あるものになり得る形式だと思います。

リアルな演劇事情を取り扱ってきた過去3組から少し外れて、冬組は『A3!』独自の世界観を利用した物語性を軸に話が進められて行くことに。

自分と向き合って演目の成功を目指すことと、公演で「相手に勝つ」ことを目標にするのとでは意識すべきことも変わります。個々の成長よりも全体のクオリティを求められる状況で、新進気鋭の座組がどう活動して行くのか。そこにしっかりと注目して行く必要がありそうです。

GOD座の策略

タイマンACTはただ勝敗を決めるだけではありません。
勝者には報酬が、敗者には罰則が与えられるところまでがセットというシビアな内容です。

神木坂レニは、MANKAIカンパニーが勝利した場合にはGOD座の次回公演の売上の全てを。GOD座が勝利した場合にはMANKAIカンパニーの即時解散をと、身勝手な条件を叩きつけてきました。

しかも冬組がストリートACTで集めた観客の前で宣言することでそれを周知し、MANKAIカンパニーの逃げ道を塞ぐという姑息な手段を使って彼らを追い込みます。

MANKAIカンパニーは選択権のある立場ですが、申し込んできた相手はGOD座は誰もが知る超一流劇団。格闘技に置き換えて考えると「チャンピオンがチャレンジャーを直々に指名するようなもの」ですから、客観的に見ればGOD座側がそれだけMANKAIカンパニーを"買っている"ことになってしまいます。

秋組までで積み上げたMANKAIカンパニーの評判も追い風(ある意味向かい風)となり、世間はそのマッチングに否応なく期待感を高めるでしょう。

結果として、MANKAIカンパニーは非常にこの誘いを蹴りづらい立場に置かれてしまっていると言えるのです(それにしたって格上から「解散を賭けた勝負」を強制される劇団を見て楽しそうにするお姉様方はどうかと思うよ)

劇団の未来 冬組の受難

とは言え、ここまでのMANKAIカンパニーの評判と冬組のメンバーは全く関係がありません。

現状ではタイマンACTの申し込みを受けなければならないのは冬組で、彼らは半数がズブの素人状態の初回公演でGOD座とやり合うことになってしまいます。

冷静に考えれば受けるべきではありません。しかしこれは、劇団が抱える借金を帳消しにできるという意味では望外のチャンスでもありました。

今の状況では冬組の公演が成功しても借金の完済はかなり厳しい状態。どちらにしても解散しなければならないなら、このタイマンACTに懸けてみるのも1つの手だと劇団員たちは思っているようです。

ここまでどれも感動的な公演を見せてくれていた彼らでも、やはり金銭的にはラインを超えていなかった様子。千秋楽はどれも満員御礼とは言え、監督1年目のいづみが利益まで含めた完璧な成功を収めるのは難しかったということでしょう。

改めて確認しておくと、左京が春組発足前に提示した条件は「春組の千秋楽の満員」「全4組の結成と公演の成功」「1年以内に借金の完済」の3つです。どれか1つでも達成できなければ「問答無用でここを潰す」のが、1話にて彼が宣言した最大譲歩でした。

全て満たすには現状「結成された冬組がタイマンACTに勝つ」以外に方法がなく、話しぶり的に他の団員がその公演に介入することも条件違反となるようです。

冬組公演とは別にタイマンACT用のドリームチームを結成する(稽古を並行する)というのも、体制的には現実的ではないでしょう。戦力が分散され、結果どちらも失敗という可能性の方が高そうです。

ここまでも十分すぎるほど成功しているのだから、左京さんこれは流石に融通を...と思わざるを得ませんが「それはそれ、これはこれ」という"大人の対応"なのでしょうか…。彼らしさは感じるものの、何とも世知辛いことです。

かくしてMANKAIカンパニーの存続という、凄まじい"責任"を負う形でスタートした冬組の物語。これからどのような展開が待ち受けているのでしょう。まだまだ予想ができない状況が続きます。

「劇団七不思議」の謎

冬組の物語は「劇団七不思議」という、三角の登場シーンで一瞬だけ触れられた設定が物語に絡んでくるようです。って言うかいきなりどうした?突然のトンデモ展開にまだついて行けてない。

冬組は19話の時点で他の座組よりもファンタジー色の強いメンバーが揃っているなぁとは思っていましたが、まさか本当にファンタジー要素が入ってくるのは想定外。どこぞのエンドレス何とかのような展開に入り、次回またほぼ20話が放送されるのではないかと戦々恐々としています。冗談です。

冬組も今までと同じようにキャラの関係性をしっかりと読み解いていく心算で見始めたものですから、「んえ???んん????」と声を出しながら顔を顰めてしまいました。今回はまず今までの常識を改める必要があるなと、思わされた次第です。

そんな中、今回扱われた七不思議は「無間人形」。
不思議な人形が現れ、永遠に無間地獄を彷徨わせるという恐るべき内容です。恐ろしい。多分。

他にも「開かずの間」「まごころルーペ」など色々あるようです。このアニメ内で多くが取り扱われる可能性は低いでしょうが、頭の片隅には留めておきましょう。

こうなって来ると、御影密くんの出自にまつわる話も可能性が無限に拡がってしまうなど、いよいよもって冬組の物語は完全に予測不可能に。あと4話分しかない中で、一体何がどう語られるのか。その構成にも着目して楽しもうと思います。

ところで19話にて、オウムが喋った上に当たり前のように受け入れられてることに心底驚いたのですが、彼(?)は『A3!』のマスコットキャラ枠だったみたいですね。あれも唐突なファンタジー要素かと誤認するところでした(ある意味ファンタジーではある)

アニメ勢としては本当に衝撃的でした。あの、どこか他の回で喋っていましたか?失念している可能性もあるので、もし分かる方がいたらお教え頂けると幸いです。よろしくお願い致します。

今回活躍したキャラクター達

では今回も冬組のメンバー1人1人についてコメントを。演劇の話が少ない中、困惑する筆者の様子をお楽しみ下さい。

月岡紬

なし崩し的に冬組のリーダーとなった元経験者。

「誰もやらないなら引き受けても良い」というかなり消極的な態度ながらも、リーダーになることを嫌がっているわけではなかったのがポイント。流れで押し付けられたようには見えていません。

心のどこかで「やりたい」と思ってはいるものの、それを自分から言い出す勇気を持っていないという感じでしょうか。過去の経験から何かしらのコンプレックスを抱えているらしく、自身が前に出ることに引け目があるようです。

その辺りの事情は丞も理解している話しぶり。恐らく彼は紬がそう思うようになった事件の当事者なのだと思います。

後半では「タイマンACTに勝つためには自分では力不足」などの理由を付け、リーダーを丞に譲ろうとするシーンも。これも「嫌だから降りようとした」ではなく、しっかりと考えた上で導いた結論がそれだったという印象です。

丞にドヤされてもその意志を曲げようとすることはないなど、自信なさげな態度の割りに頑固な一面もあるのが味わい深いキャラクター。少しズレた"かわいい"の感性を押し通そうとするのも、そんな彼らしさと言ったところでしょう。

昔は明るく丞と芝居をしていた姿も見ることができ、恐らくベースは前向きで行動力のある青年なのだと思っています。それが何か大きな経験によって、変容してしまっている雰囲気を感じます。

何とかその暗闇から脱却しようともがいているものの、どこかで「どうせ自分なんて」といったネガティブな気持ちが自分の中で優先されてしまう。そしてそれは案外、無意識の産物だったりするものです。彼のようなタイプの場合、まずはその全てに自覚的になることが必要なのだと思います。

しかしながら、どうにか今の自分を変えて行きたい。その気持ちを持っている以上は、前に進むことができるはず。天から降り注いだ無間人形(暫定)の力を借りて、変わって行く彼に注目して行きたいです。

高遠丞

冷静に物事を判断しそうな第一印象とは裏腹に、だいたいのことを自身の感情優先で決めようとしてしまう熱血漢。これで結構なトラブルメイカー気質。

大して説明もせずに紬をドヤしたり、怒って稽古を抜けてしまったり、GOD座のタイマンACTの誘いを頑として突っぱねようとしたり、この20話だけでも直情的に判断しているシーンが目立ちます。まぁ冷静な人間ならばそもそもGOD座を抜けることもなかったでしょうから、「行動指針が一貫している」という点では分かりやすいキャラクターです。

紬とは過去に色々あったらしく、彼の態度がいちいち癇に障るのは間違いない様子。ただし一緒にいるのが本当に嫌というわけではなさそうですし、裏を返せば「紬のことをやたらと気に掛けている」と取ることもできる対応が非常に多いです。

言い方や接し方に問題はあるとは言え、基本的には紬の"良くないところ"を指摘して叱咤している印象。紬に変わってほしいと思っている可能性は高そうで、転じてその気持ちを感情的に押し付けようとしすぎているのが玉に瑕という感じ。

その点では、実は紬の方が丞の気持ちや人間性を受け入れている側にも見えています。正に剛柔の関係性が成立している2人と言えるのではないでしょうか。

本当は昔のように仲良くしたいと思っているのは、丞にとっても同じことのように思います。ただ、だからと言って信念を曲げてまで安易に彼を許すつもりもないのだろうと言ったところ。

脱落者の紬に対し、才能に恵まれた成功者である丞。この辺りの違いが彼らの軋轢には関係していそうだと解釈しており、過去にあった事件の詳細が開示されてからが本番でしょう。押さえるべきところは押さえておいて、あとは静観と洒落込みます。

御影密

意外と芝居ができる。
しかもエチュードにて演じたのがファーストフードの店員という謎のチョイス。

未経験の人間(?)が咄嗟に引き出せる役柄は普段の自分に近いもの(もしくは触れているもの)になりがちなため、そこからある程度は人となりを想像することが可能です。

あえてアルバイト店員を演じたことで、先週の印象から打って変わって一気に世俗的なイメージに。

まだまだ分からないことだらけですが、少なくとも現世に生きている普通の人間(という側面もある)だろうことは明らかになりました。

未だ稽古中も寝続けているし、立ったまま寝ることができる(寝ながら立つことができる…?)し、寝ながら話を聞くことができる(話を聞きながら寝ることができる…?)など、基本姿勢が睡眠であることは変わらず。

その設定がどのような意味を持つのか、何かファンタジー要素との関連はあるのかなど謎多きキャラクター。ひとまず置いておこう。

有栖川誉

エチュードでいきなり独特の世界観を引き出せる辺り、流石は詩人と言ったところか。

吟じる能力はそのまま演技力にも活かされていて、彼にしか出せない独特の味わいを生み出しています。

その癖の強さは役者としての幅が狭いことにもなるのですが、初回公演の今回においてはあまり気にしなくても良い部分でしょう。

ファンタジカルな世界観を好む一方で、オカルト話には興味を持たないといったリアリストな一面も。ただ「七不思議」自体には人一倍興味を示していたので、現実にある"逸話"には敏感という線引きがあるようです。

空想は空想だからこそ良い、といった価値観なのでしょうか。庶民が想像できる範囲で創られたフィクション(オカルト)は、逆に自由な空想の阻害になるとも言えますしね。

同室となった御影密の生態(?)にはかなり興味があるらしく、彼の起床をコントロールする方法を色々と試しているだろうことが伺えます。

それが表現者として持っている"異人"への興味なのか、はたまた同じ座組のメンバーと仲良くしたいという単純な想いなのか。

この辺りの人間関係の紡ぎ方が、誉の人間性を解釈する上で1つ押さえておきたいポイントになりそうです。彼ら2人の関係性の進展にも注目しましょう。

雪白東

のらりくらりと周りに合わせて動く謎多き男。

人の考えを否定することはなく、コミュニケーションを取ることにも意外と積極的。消え入りそうな線の細い見た目の割りに内面は陽気で明るく、接しやすそうな雰囲気を持っているのが見て取れます。

演劇は未経験のはずですが、振る舞いは堂々としていて人前に立つことに一切の抵抗がない様子。また演技幅も広く、今回のストリートACTではサラリーマンものの取引先課長を熱演。自分とかけ離れた役柄もこなせる辺り、役者としての素養もかなり高そうです。

いづみ曰く「上手く返せるようになってきた」とのことで、既にある程度まで稽古を積み始めているようですね。短期間でアドリブ力を求められる"切り返し"の技術を習得できるのも良いですし、丞とコンビで人前に立てるだけのことはあるという感じ。

ロクデナシ系のキャラだったのでどうなるのか心配だったのですが、蓋を開けてみれば20話で一番ちゃんと芝居の話をさせてくれるキャラになっているという大三元。違った大惨事。

冬組全体が"こういう方向性"になってくると、東のようなキャラでさえまともになってしまうのです。超常現象を目の当たりにしています。

とは言いつつも、胸に抱えたものも数多くありそうなキャラクター。内情がかなり気になるメンバーの1人なので、アニメで少しでも彼のことが語られたら嬉しいなと思っています。

おわりに

この第20話は、残り話数的に冬組全体がどこに向かって走って行くかを決定付ける回。その想像の上で心構えを作って視聴しましたが、困惑に次ぐ困惑で気持ちは( ◠‿  ◠ ) という感じ。

そもそも『A3!』は各座組に与えられた尺が6話しかない都合上、各座組の2話目以降は誰か1人の内情が伝わってくる話創りが基本となっていました。

この点で冬組は「2話使って伏線のみが投げられている状況」(しかも話の軸がファンタジー)なため、既に他の座組とはストーリー構成が大きく異なっているのが特徴的です。

タイマンACTという劇団全体に関わる問題が主題となっていることもあり、ここからどう話が動いて「冬組の物語」に着地するのかがまだまだ見えてきていません。

ですがしっかりと解決すべき問題、立ち向かうべき葛藤は提示されています。混迷を極めてはいますが、今まで同様に『A3!』らしい光ある人間関係が楽しめることに期待しています。

次回はまたガラリと変わるかもしれませんし、油断はできません。しっかり腰を据えて感想記事にして行こうと思います。それではまた。

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。二次元イケメンを好み、男性が活躍する作品を楽しむことが多い。言語化・解説の分かりやすさが評価を受け、現在はYouTubeをメインに様々な活動を行っている。

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