5話です。
先週で大きな一区切りを迎え、今後のキャラの関係性構築が楽しみになってきた『あんさんぶるスターズ!』。
今回からは2話に渡って「マリオネット」というサブタイトルのストーリー。どうもアプリ内ではメインシナリオから外れたサブシナリオ的な位置付けのものなようですね。
ネットの反応を見るに、原作ファンの方々にとってはかなり不意打ち的な展開だった上、この「マリオネット」は曰くつきなシナリオな模様。ドキドキしながら見させて頂きます。
ミリしらではあるのですが、こうやって感想を重ねてくるとどうしてもネットの反応は目に入ってきてしまうもので。身構えている時点でミリ知ってしまっているのかもしれませんが、その辺りはご容赦を…。
マリオネット(前編)語らせて頂きます!
初見にも優しい物語構成
アニメ序盤では手酷い仕打ちを受けたRa*bits。
その1人として登場していた仁兎なずなくんの過去の物語。今更だが3年生だったのか…。
彼は登場こそしていたものの、目立った活躍はなく今のところは影の薄いキャラクターという印象でした。ただ「兎」という字が名前に入っていることから、彼がユニットの鍵を握る人物なのだろうという引っかかりのようなものはありました。「マリオネット」はそれに至る物語の1つなのだろうと考えています。
先週までのS1では裏方に回ったRa*bitsの面々でしたが、序盤で改めて関係性と上下関係や細かい設定が提示され、今回は彼らの物語であるかのように演出されていましたね。
何度も言っている通りですが、キャラが多い作品なので初見としてはこういった細かい気遣いがありがたい。この割り振りによって記憶を思い起こしますし、それが物語の本筋へのスムーズな導入を作ってくれている。
『あんスタ』のアニメは様々な視聴者がどう情報を整理して見ているかを周到に練って構成している印象があり、ファン向けでありながら新規への気配りを忘れていません。それが僕のようなゼロスタートの人間でも疎外感なく楽しめている所以であり、製作陣の心意気が伝わってくるのが心地よいですね。
天祥院英智に病弱という強いキャラ特有の弱い設定が付与されてしまったところで、物語は過去へと舞い戻ります。
Valkyrieの危うい関係性
5話は仁兎くんが過去に所属していたValkyrieという当時学院内最強であったユニットがフィーチャーされる物語。
アクが強すぎる斎宮宗(読みがムズすぎる名前)を中心に自己主張の弱い仁兎くんと影片みかくんというなかなか闇が深そうなキャラによって結成された戦乙女ユニット。
斎宮は朔間パイセンの話にあった旧五奇人の1人であり、その振る舞いも出で立ちも"確かに"と言わざるを得ないキャラクター。現在は三奇人なのか、脱落した2名のどちらかなのかが気になるところ。アニメ界きっての糸電話の使い手でもある。
前編である今回は彼らのキャラ見せ及び関係性の構築をしっかり行った1話であったため、そこをしっかり掘り下げて行こうと思います。
絶対的リーダー 斎宮宗
ドール趣味と服装が強烈。
喋り方もキザっぽく、朔間に続いて分かりやすく奇人なキャラ。
高い演出力と衣装作成スキル、パフォーマンススキルによってValkyrieの全てを1人で動かす絶対的リーダーであり、ほぼ1人の感覚によってユニットをトップに押し上げた実績も併せ持つ。その実力は間違いないものと言っていいでしょう。
またメンバー選びも秀逸。
実力はありながらも自分がなく、与えられた指示に確実に従う仁兎と、自己肯定観が著しく低く、自分を引っ張ってくれる者を求めている影片。人選も「自分の世界を確実に体現するため」に振り切ったものであり、元より自分に相当な自信がある人物のようです。
自分の世界を絶対だと思っている節があり、どことなく癇に障る言動が多いキャラなものの、実際それで成功している以上は傲慢だとすることはできません。結果が伴っていれば、それは正当な自信であると解釈すべきです。
加えてその結果主義の態度とは裏腹に、メンバーに対する愛情もまた(独占/独善傾向があるとは言え)確かなものであり、それが2人のメンバーをしっかり惹きつけているポイントでもあります。
彼は決してメンバーをただのコマだとは思っていないし、その管理の先には強い想いがある。論理的な行動に反して感情的な人間だというのが斎宮宗の良いところに見えます。
しかし完成されたワンマンスキルによる体制には、進歩はあっても発展はありません。優れた個人に依存した集団には絶対に超えられない限界があり、最終的には平均的な個による優れた集団に上回られてしまうことがほとんど。
彼はその類い稀な個人力により、限界を知ることなく頂点に登り詰めてしまったことで、個人による統治の絶対性を信じ切ってしまっています。これこそが蓮巳が指摘した危うさに繋がるものでしょう。
自分の世界を体現すればValkyrieを頂点に立たせられる。そのためなら、全てを自分の思い通りにすることを厭わない。
このような感情が、結果として仁兎に歌を歌わせないなどの形式的な管理体制を生んでしまっている…といったイメージでしょうか。鬼龍の「最近きな臭ぇ感じ」という言葉から、彼が元々そういった人物でないことも窺い知れます。
個による集団を成立させる絶対条件は、その個が残りのメンバーから絶対的な信頼を得ていることです。それは結果や能力に加え人格などのパーソナリティを含めた全てのバランス=カリスマ性によってもたらされるものですが、結果を出しすぎてしまった斎宮はその経験で感覚が麻痺し、カリスマ性を徐々に失い始めていると思われます。
これが仁兎が後にValkyrieを脱退してしまう大きな問題の1つになっていく部分と考えています。
情熱のマリオネット 仁兎なずな
魅惑のソプラノボイスでValkyrieの歌唱の軸を支える存在にして、声変わりに悩まされる少年。
元々自身の持っていた長所が少年性に依存している彼にとって、声変わりなど「自分が大人に近付いていく」ことへのプレッシャーは半端ないものなはず。それが、現在自分が所属するユニットの在り様を変えてしまうものであれば尚更のことでしょう。
Valkyrieの世界観を維持することに固執する斎宮により、人前で歌を歌うことを禁じられてしまったことでその苦悩は何倍にも増幅されます。
ところが彼はそれでも斎宮を責めることは決してなく、自分の歌のレベルが"落ちてしまった"から駄目なんだと鍛錬に励みます。声変わりは仕方のないものであり、それを劣化と思わず新しい個性を見つけ伸ばすことが大事だと思うのですが、今の彼にそれが分かるわけもなく…。
その行動の先には「Valkyrieをより良いユニットにしたいから」という想いがあります。彼は斎宮の采配や能力を信用していながらも、ワンマンチームの限界点や現状維持を主とすることに確かな危機感を覚えており、それを変えられるのは自分であると信じています。無口ながらも秘めたる情熱は人一倍ですね。
この仁兎の考えは、想いを同じくしながらも、斎宮の目指すValkyrieとは全く違う方向性です。真逆と言っていいかもしれません。
通常であればこの価値観の違いは必要な衝突となり、ユニットをより良いものに進化させていくキッカケにできるものです。しかし、結果に固執するようになった斎宮が"付き従う存在"でしかない仁兎の価値観や言葉に耳を傾けてくれるかどうか…。それがユニットの大きな争点に。
朔間と斎宮のスーパー糸電話の行動(チケットを売るなど)を鑑みるに、斎宮は口ではブツクサ言いながらも、人の意見にはしっかり耳を傾け行動に移せる柔軟性は持ち合わせているようです。
ですから仁兎が意見をしたとしても、寵愛の対象である彼の意見を聞き入れる可能性は決して低くないと思っています。
にも関わらず、この先にはValkyrieと仁兎の決別が待っています。そこにはやはりあの天祥院英智の影があるということ…。後編で何が起こるのやら…。
自我がない強さ 影片みか
とにかく自信がなさそうなオッドアイ関西弁。
蓮巳に「特に言うことはない」と切り捨てられ、仁兎から「バックダンサー扱いを受けている」と言われる程度には、外側から見ても実力に欠けるところがある様子。
しかし斎宮は彼を決して軽んじず、必要な存在として全力で接しているというのがポイント。
斎宮に従いながらも、裏では全く違う価値観を燃やしている仁兎と違い、最初から最後まで完全に斎宮を信頼し切っているのがこの影片くん。
自己肯定観が低い彼はとにかく色んなことに一生懸命。
お師さんの言うことは絶対に守るし、なずな兄ぃのことを決して疎まないし妬まない。自分よりも凄い相手を素直に賞賛できる長所がある。
斎宮は彼のそういった人間性を買っているだろうと思います。
世界観の体現において阻害となるのはチームワークの欠如。それを生まない彼のような人間こそ、ワンマンチームのValkyrieには必要だったのかもしれません。
奇人たる斎宮の振る舞いの全てを受け入れて立ててくれる人間はさほど多くはないだろうと考えると、影片のような実直な人間は斎宮にとって最も信頼できるし、身近に置いておきたい存在であるのにも納得できます。
人前に立つエンターテイナーとは、現実でも全体的に頭のネジが飛んだ人の集まりで、世間的にもそういうイメージがあると思います。やりたがりや目立ちたがりばかりだし、調和を乱したがる人も多いです。
そんな中で、一定の実力を保ちながら自己主張せず、他人の指示を絶対に守り付き従うことを選択できる者は大変貴重な存在だと言えます。
僕の経験から言っても、演出家や監督といったポジションの人が好むのはこういった「上の意思を尊重できる者」であり、実力があっても和を乱す我が強い者を嫌う人は多いです。こだわりの強い人であればあるほどそうですし、斎宮もそこから外れていないと考えられます。
自分に自信がないのに人前に立つことを選ぶという自己矛盾。それが生み出す指示を正確に遂行する受け皿としての器量。それこそが影片みかのエンターテイナーとしての才能です。
こういう人材は時として実力以上のものを発揮しますし、色んなものを吸収して1人の個性では決して見せられない輝きを体現できるようになる可能性がある。絶大な個に気に入られた彼は、ここから大きく伸びて行けるでしょう。頑張れ!
ただ、今後待ち受けるValkyrieと仁兎の決別が、そんな純粋な彼にどういった影響を与えてしまうのか。それが本当に気がかりですね…。
おわりに
Valkyrieというユニットの在り方について、3人の個性を紐解きながら書かせて頂きました。
統治と管理を主とする王者でありながら、何となくほんわかとした空気感のある幸せそうなユニットが描かれた5話。その中には崖際ギリギリで持ちこたえている問題点が数多く見受けられました。
何か1つでも崩れれば、そのまま全てが瓦解して崖下に真っ逆さま。
そんな危うさに覆われていて、見ていてどうにも落ち着かない嫌な感じを胸に抱えた一話となりました。
今のValkyrieを支える屋台骨の1つが確固たる結果であるとすれば、次週で展開されるであろうドリフェスの顛末が軋轢を生み、全てを終わらせる引き金となることは想像に難くありません。
「マリオネット」は決別がゴールの物語であり、バッドエンドは確定的。次回は覚悟して鑑賞しようと思います。
そしてRa*bitsにとっては始まりへと至る物語でもあります。
序盤から登場したTrickstar側の彼らが、どのようにして出会い結ばれることになるのかのターニングポイントも見られそうで楽しみです。
それではまた次回の感想で。
お読み頂きありがとうございました。
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