ジャッジメント
いよいよ迎える当日を迎えた"ジャッジメント"当日。月永レオは(謎の)校則に則り、臨時ユニットを結成。
その名は「ナイトキラーズ」。ナイトを殺す者。レオは本気でKnightsを粛清する意志を込めてメンバー選び、ユニット名を付けました。
(※追記:ユニット名は英智が付けたらしい。どうもレオのキャラに合わないユニット名だと思ったんだ。お前は人の庭で何をしているんだ?)
同級生でクラスメイトの鬼龍と仁兎。さらに生徒会長で皇帝の英智を加えたドリームチーム。全員確かな経験値と実績を持つ存在で、個人力で見れば最強クラスのユニットなのは間違いないと言ったところ。
レオの宣言と共に幕を開けたジャッジメントは、個人戦を繰り返し行うことで相手を全滅させるかキングを討ち取った方が勝つ変則ルールのドリフェス。ただし必ずしも同数同士でぶつかる必要はなく、極論4対1を繰り返して勝利しても良いようです。メンバーの消費の仕方に駆け引きがあるわけですね。
内部粛清らしく、負けた方は勝った方の言うことを何でも聞かなければならない特別ルールも採用。
ナイトキラーズが勝てば、レオの命によりKngihtsの即時解散が確定。レオと司の喧嘩のはずが、彼ら全員にとって絶対に負けられない戦いとなりました。
「そんな顔しないの」
しかしKnightsの面々は決してそれを仰々しく語ったりしません。司に責任を押し付けて何かを背負わせようとすることすら、先輩である3人は考えてもいないのです。
「Knightsは確かに個人主義者の集まり。司ちゃんはその末っ子みたいなものなんだから」
むしろ後輩でありながらKnightsの未来を左右する立場に置かれてしまった司の緊張を解し勇気付け、自分達に任せて"王様"らしく構えていろと、エールを送る。
「たまにはお兄ちゃん達に甘えなよ。クソガキ」
個人個人の生き方や選択を尊重しながらも、決してユニットとしての自分達を軽んじない。他者を責めず否定せず、でも何かあった時は助け合って支え合う。それが騎士道精神を重んじるKnightsの名を冠する彼らの在り方。
威風堂々と先陣を切る瀬名と鳴上の後ろ姿を、司は一体どれほど心強く感じたことでしょう。一番手たる彼らの戦いから、ジャッジメントは幕を開きます。
変わってしまった王 変わらない信頼
今回、背負う物がないからこそ役割に徹することができる鬼龍と仁兎の魅せる自由なパフォーマンス。Knightsにとって脅威ではあるものの、彼らは所詮急造のユニット。相応のコンビネーションでしか戦うことができません。
それに対する2人は、同じユニットとして通じ合ったパフォーマンスでの対応です。凛月が冷静に「せっちゃん達なら負けはしないだろうけど…」と言えるのは、彼らの個人力の高さを改めて伺わせるのはもちろん、ユニット間の波長の合い方から来る自信でもあると思います。
「王様…あんたを引きずり出してあげるよ」
そんな中で、ステージ上には密かに情熱を燃やす瀬名泉の姿がありました。
彼はレオに対して一際強い個人的な想いを抱えていたのが分かります。大きく口には出さないものの、やはり身内に対する強烈な感情の強さはここでも発揮されました。
革命を果たした英智と生徒会の独裁状態を経てもなおKnightsが生き永らえることができたのは、レオが死に物狂いで努力してきた結果であると。王が色んなものを捨てて、壊れ果てるまでユニットのために動き続けてきた結果が、今に繋がっていると吐露します。
少なくとも瀬名泉は月永レオのことを理解しているし、理解したくてKnightsにいる。それがこの発言からだけでも伝わってきます。
正確にレオが残したものがどうKnightsの存続に貢献したかまでは分かりません。ですが、レオが残した楽曲やKnightsの持っていた名声がギリギリのところで彼らを繋ぎ止めたのは間違いないと思います。
でも今と昔では状況も環境も変わってしまっているのも事実です。現にKnightsはリーダーを欠いた4人で活動するのが当たり前になり、レオはジャッジメントを開催してKnightsの解散を迫っている。
それが何を意味しているのかまでは、どんなに深い付き合いがある人間でも理解できないものでしょう。それが天才という人間を相手にすることですから。
「今のアンタがどんな生き物になっちゃったのかは、俺にもよく分かんない。けどさ――」
それでも、レオが自分の欲望のためだけに動いて、他の全てを犠牲にするような"暴君"になってしまったとは思いたくない。何か理由があって今この場でこんな戦いを推し進めるに至っているに違いない。
「それって、アンタが一番嫌いだった"皇帝"と同じだからさ」
Knightsを滅ぼしたいのが彼の意向なのだとしても、今の彼のことを100%理解できなくとも、瀬名泉の持つ月永レオへの信頼は決して無くならない。
「だから、アンタを引きずり出して真意を確かめる」それが瀬名泉が今に全力を懸ける理由でした。
その想いは隣りにいる鳴上にも確かに伝わって、彼らはナイトキラーズの2人を上回ったと見るべき。実力以上に、この場に懸ける熱意がナイトキラーズの2人を上回っているからこその勝利だと思います。
"王"の資質を持つ者
そんな1つ目の戦いの脇では、現状を冷静に分析する凛月の姿がありました。
実力的にはKnightsが劣っているわけではないが、今回のKnightsは(レオの取り決めにより)普段使用している月永レオ作曲の歌を使えない。まともなパフォーマンスを行える楽曲数は限られてしまっています。
一方のナイトキラーズは、潤沢に存在するその月永レオ作曲の楽曲を使い続けることができる。無限にあるリソースが彼らのバックには存在し、それが急造ユニットの欠点を補完するに至っているわけです。
詳しいルールは分かりませんが、この言い方的に一度使った曲を二度使用することができないのでしょう。だからKnightsは回数を重ねるごとに不利になるし、長期戦を構えることもできない。敵の実力を考えれば、総力戦で確実に勝ち星を重ねて行くべきだった。
鬼龍と仁兎の2人を沈めても後続にはあの英智が控えている。最良の楽曲を使った上で疲弊した2人では、英智に勝つのは難しいはず。王が負けたら敗北になってしまう以上、凛月までの3人で何とか英智を沈めなければならないのに、凛月は最悪、残った楽曲で英智との一騎打ちを迫られる。
「ごめんね、作戦の立案は俺の役目なのに…」
この流れではKnightsはあまりにも分が悪い。
仮に英智を斃せたとしても、司を無傷でレオの元に連れて行けないかもしれない。その計算違いが自分のせいならば、凛月を弱気に落とし込んでしまうのも無理もありません。
「そんな顔しないでください! 凛月先輩!」
そんな折、ここに来て初めて強気な姿勢と言動を見せる、朱桜司の姿がありました。
「先輩達はいつも余裕で、偉そうで…。けれどそれは、常に勝ち続けてきたからこその自負故にでしょう?」
いつだって自信に満ち溢れていて、けれどそれは無根拠ではない実力に裏打ちされているからこその輝きで。
その誇り高い姿に導かれてきたからこそ、自分はKnightsのメンバーとしている自分に誇りを持っているのだと、目を輝かせながら先輩に語り掛けるのです。
「私は、そんな先輩達に憧れているのですよ!」
どこまでもまっすぐで実直で、煌々と輝く熱意を感じさせる司の笑顔。こんな絶望的な状況でも彼はKnightsというユニットに本当に夢を見ていて、その気持ちを純然たる美しさで先輩達に伝えることができてしまう。
先輩達が敗北する未来なんて、微塵も想像していない。勝利して当然で、現実がどうかなんて関係ない。
それは共にステージに立つ存在としては、あまり褒められた精神性ではないかもしれません。
「…そんな風に見えてたんだ、俺達は。憧れてるなんて、思ってもみなかったんだけど」
けれどそれが朱桜司という人間の出せる強さでもある。そしてその在り方が、確実に朔間凛月に前のめりな活力を与えたと思います。
「じゃあお兄ちゃんとしては、格好悪いところ見せられないね」
無根拠な理由を勝手に根拠だと思い込んで、どうしようもなく前向きで、ただ目の前の自分達をひたすらに信じてしまっている、どうしようもない可愛い末っ子の姿。
「俺はね、約束だけは死んでも守るから」
でもそこに見えるのは紛れもない王の資質です。
何かができるわけではない。何もできないかもしれない。でも、その存在が自分達に勇気と前に進む力を与えてくれる。戦いにおいて"ただそこにいてくれること"が理由となる存在。
「俺達の屍を超えて、未来を掴み取ってほしいな」
それは"象徴"としての王の姿。
この時、朱桜司は間違いなく王になっていたのです。
だから凛月もその存在に応えて、刺し違えてでも天祥院英智を斃して帰ってくることを誓った。王と王が全力で語らう場所を、その手であつらえるために。
「じゃあね、行ってくる」
臆することなく、怯えることなく、身構えることもなく。決意だけを持った朔間凛月は運命のステージの上へ。その表情と後ろ姿の勇ましさは、今回の大きな見所の1つだったと思います。
「――私達は今日この日、初めてKnightsになった気がします」
そして司からその力を受け取った凛月の後ろ姿が、今度は残った司に絶大な勇気を与えるのです。
共に1つの舞台で戦い抜く。
その一体感が彼の心にもたらした変化は、一体どのようなものだったのでしょうか。
「死地に臨み、勇ましく戦い抜く、一振りの刃に」
彼自身その変化に気付いていないかもしれません。彼の中身が大きく変わったわけでも、ないのかもしれません。
「…誇り高い"騎士"に!」
しかし何かが変わったのだとしたら、その変化を生み出したのは彼自身に違いありません。彼の信じた騎士道精神は、間違いなくKnightsに新たな風を吹かせている。今はその事実があれば、十分なのでしょう。
Knightsの王
互いに3者が倒れ、図ったかのように訪れた王対王の一騎打ち。
司はこの全てがレオの計算、掌の上の出来事だったのではないかと感じ、その旨をレオに伝えます。
「…買い被りすぎだよ新入り」
一方でレオは、それを謙遜する形で返しました。
自分は神様ではないから、未来で何が起こるかなんて分からない。当然、未来で起こることを自分の思い通りにすることなんてできない。もちろん自分は神に愛された大天才だから、それに向かって動くことはできるのだけれど、神その物になったわけではない。
「むかーし、俺はそこを勘違いしていた」
謙遜なんて1ミリたりともしなさそうな彼が見せたのは、過去の経験から来る大きな達観でした。
やりたい放題やって、身勝手な振る舞いで沢山の人を傷付けてしまった。取り返しのつかない失敗をしたことで見えた世界はあったけど、それに気付いた時にはもう、遅かった。
「全部失って、逃げちゃったんだ」
自分はそんな情けない人間だと、噛み締めるように話すのです。
全てを悟って反省して前を向いた月永レオは、自分がKnightsのリーダーに相応しくない人間であることを自覚しました。一線を退いて独りで動くことを決めたものの、中途半端な状態にしてしまったKnightsを見捨てることはできなかった。
だから最後に今のKngihtsの真贋を見極め、新体制の是非を問う。必要であれば強制的な解散も辞さない。そんな覚悟で彼はこの"ジャッジメント"を開催したと受け取りました。
「この様子だと、何の心配もいらないっぽいか!」
その彼が辿り着いた結論が晴れやかなものであったことは、言うまでもありません。
新たなメンバーが自分になり替わる資質を持つものだと判断したレオは、「無能で自分勝手な王様からの最後の命令」として、自分を欠いた状態での自由な活動をKnightsに科しました。
彼がどのような過ちを犯したのかは、まだ僕には分かりません。だから軽々しく彼の過去を語ることもできません。けれど、彼が今この場でまだ大きな勘違いをしているのは分かります。
この話を聞いている時のKnightsの表情を見ていれば、決して彼が周りに許されないような人間でないのが伝わってくるからです。
犯してしまった罪は消えないかもしれないけれど、自覚して改めることができるならまたやり直すことはできます。そしてそのチャンスの有無を決めるのはレオ本人ではありません。
「ワガママばかり言わないで下さい」
そう、周りの人間が彼を求めるなら、何度だって再出発できる。過去のことを知らない人間の中では、"今の月永レオがどうなのか"の方が遥かに重要なのですから。
朱桜司にとっての月永レオは、あくまでもずっと憧れてきたKnightsのリーダー。今も昔もよく知らない彼からすれば、そのレオに勝手に自己完結して去られてしまうなんて許せるはずがありません。
まして、レオは今この場でKnightsへの強い想いを示してくれた。そんな誇り高い存在だと分かったのだから、なおさらどこかに行かれたくないのは当然でしょう。
「かつて勇名を馳せた我らの王の武勇伝くらい、聞かせてくれませんか?」
レオにとっては馬鹿な昔話でも、司にとっては全てが輝かしい歴史となる。かつてKnightsを生み出し、今なお想いを持ち続ける生きた伝説。その相手を前に、司はただまっすぐに自分の気持ちをぶつけて行きます。
「聞いて面白い話なんてないけどなぁ…。でもまぁ考えといてやるよ」
そしてその司の善性が、誰でもない個人になろうとしていた月永レオの心を、再びKnightsの元へと動かしたことでしょう。
「さぁさぁ! 勝負しよう! ううん――」
4人で完成されたKnightsは、今日この日この瞬間から5人のKnightsへ。
レオがかつて壊しかけた夢の残骸は再び寄り集まって1つになり、輝きを纏う全く新しい存在へと昇華された。
「思いっきり遊ぼっか! 新入り!」
それはきっとこの場の誰にとっても大きな誤算で、でもきっと誰もが心の奥底に抱いていた理想の結果だったのではないでしょうか。だからこの瞬間にその理想が目の前にあるという現実を全力で楽しんで、確かめる。それが今のKnightsに必要な時間。
ですが勝負は勝負。
勝った方が何でも言うことを聞くというルールは残っています。
その形式に則り、司が要求したのは自らの名前でした。
「自己紹介から始めましょう。ようやく帰還された我らKnightsの王よ」
"新入り"ではなく、王にかしずく1人の騎士として。そしてこれから多くの時間を共にする、同じユニットの同胞として。
朱桜司は王の前で高らかに宣言します。
"審判"の先で勝ち取った、"騎士"としての誇りを胸に抱いて。
「Repeat after me! 私の名前は、朱桜司です」
「どうか、以後お見知り置きを!」
おわりに
「ジャッジメント」は1話に今までの2話分の情報量を押し込みながらも、決して崩壊しない絶妙なバランスで組み立てられた一話でした。超スピードを活かした構成面では、今まで最も優れた話だったように思います。
他の前後編のエピソードに比べるとストレートに力強い内容で、ストーリーの主軸その物は複雑ではありません。見せ方次第でキャラの良さを伝えることができれば、一話での処理も可能と判断されてこの形に落ち着いたのだろうと推察しました。
このハイテンポにも関わらずギリギリで感動を体現する間と演出の使い方は、今までで一番監督 菱田正和を感じるアニメだった気がします。正直なところ前後編で丁寧に見たかった気持ちはゼロではありませんが、前のめりな司とレオの魅力が強調されるこの創りもオツなものだなと。
結果として僕は1話で2話分の記事執筆を要求されたので「おい菱田ァ!」と言いたくはなってしまうんですけどね。
ただ今回は非常にイメージが湧きやすく楽しめた回だったので、内容量の割に記事を書くのは楽でした。この回が人気である理由もある程度理解できたと思います。物語の勢いに僕の記事が一花添えられていたら幸いです。
まぁ楽だとか楽しいとか言いつつも、基本的には最近何かとしんどい回が続いているのは事実。そろそろ休憩したいなぁと思わなくもない。あくまで比較的どうかというだけのことで、しんどいはしんどい!!
しかし、今更そんな甘えは許されんと覚悟を決めております。毎週何千ものアクセスを頂いていることが、本当に励みになっています。皆さん、本当にありがとうございます。
最後まで駆け抜けます故、今後ともよろしくお願いします!お読み頂きありがとうございました!
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