Adam
では今回初登場となったEdenの片翼「Adam」の2人について、項を分けて語って行こうと思います。
非常に癖が強く難しい2人です。
その両名について、19話から感じ取れた部分をできる限り言葉にさせて頂きましょう。
七種茨
絶対にCV:岸尾だいすけだと思っていたらCV:逢坂良太だった…。
畳みかけるような早口にハキハキとした語り口。ピシッと整った姿勢に洗練された動きと態度。機械のような整然さが光る、人間味溢れる第一印象のキャラが多い『あんスタ』では異色な存在として登場した七種茨。
「軍隊っぽいところにいた」という酷く曖昧な表現で行った自己紹介。つまり本当の軍隊に所属していたわけではないのでしょうが、この"っぽい"という表現の裏に何が隠れているのか全く予想できない作品なので困ってしまいますね…。
規律を重んじ、礼儀正しく相手を立てる。
上下関係をはじめ客人との接し方もしっかり教育されているようで、総合的に穴がない振る舞いが徹底されている印象。
現実にいたら胡散臭いことこの上ないと思いますが、作中ではTrickstarの面々が一切の警戒心を抱いていないことから、嘘や偽りを感じさせずそれが素に見えるほどに"様になっている"キャラだと解釈しました。
実際はその機械的に研ぎ澄まされた対応能力により、自身の感情や本心を相手に読ませないキレ者。相手を徹底的に信じ込ませることで罠に落とし、確実な勝利を手に入れようとする邪悪な頭脳を持つ男です。
英智が人心掌握によってTrickstarをコントロールしようと試みたことを思うと、茨は単純に罠の位置まで相手を誘導するために自分を偽るタイプ。
英智が洗脳的なら、茨は詐欺的というイメージでしょうか。今回のオータムライブへのTrickstar招へいも、全てSSで確実な勝利を収めるために彼がプランニングした作戦のようです。
相手を罠に落とすという言い方はEveにも共通して見られたもの。玲明系列の「一部の特待生以外は奴隷」という方針下で生き延びるためには、特殊な処世術を身に付けることが1つの課題のようなものなのかもしれません。
ただEveの日和が仕掛けていた罠はステージ上で優位性を取ることに終始していたのに対し、Adamの茨は戦わずして勝利することを旨としているように見えるなど、同じEdenの中でもAdamとEveの考え方には相違が見られます。これが今後のエピソードでどのように効いてくるかが楽しみです。
"閣下"との関係
同じAdamの乱凪砂を"閣下"と呼びリスペクトしていますが、その凪砂の行動方針を決めているのも実は茨の方という徹底ぶり。
立てている…ということはアイドルとしての実力は凪砂が上だと認めているのだと思いますし、現にAdamはもちろん、Edenのリーダーも凪砂です。その他、旧fineの二枚看板でもあるなど多くの実績を持つ凪砂を実質的にコントロールし、率いているのは茨の作戦であるというのがなかなかに邪悪。
それについて凪砂に「利用させてもらっている」と隠すことなく告げ、凪砂もそれを受け入れて否定しないというのがこの2人の関係性の面白いところです。
本心はまだ見通せないものの、凪砂も決して全てを悪く思っているようには見えないし、Adamは歪んだ関係ながらも互いの素養を認め合って活かし合っているユニットだと見ています。
狡猾な軍師であり、底は見えない存在。
今のところの茨は完全な悪役と言って差し支えない状態ですが、この作品のことだから決して悪人というわけではないとも思います。
後編で彼の考えた作戦がどう花開いて行くのか、そしてそれが彼の秘めたるキャラクター性にどう関与して行くのか。楽しみに待たせてもらいましょう。
乱凪砂
うーん出るアニメを間違えたのかな。
突飛な発言と全く感情が読めない態度、ほとんど変わらない表情に落ち着いた振る舞いで謎の貫録を漂わせる乱凪砂。
OPや旧fineの曲などでCV:諏訪部順一を把握していたこととその線の細いルックスと自信ありげな表情から、いわゆる俺様系のキャラを想像していましたが、蓋を開けてみたらあまりにも強烈なキャラクターで言葉を失ってしまったというのが本音です。
恐らくかなり多くの方が初登場時は似たような感想に陥ったと思うし、それを狙ってのキャラメイクだったことでしょう。してやられたという気持ち。
みすぼらしく泥だらけになるまで我を忘れて化石の発掘に没頭。応接室に戻っても暗い部屋で化石の手入れに勤しむ凝り性で、どちらかと言わずとも根暗な美人という印象。
それだけでも闇を感じるのに、価値観や考え方、人生観もまた独特というなかなかの曲者キャラクター。
「生は責め苦。命は天罰。人生は許されざる原罪。そこから解き放たれたいと、自由になりたいと願うのはいけないこと?」
ちょっと何を仰っているのか。
数多の誉れ高い肩書を持ちながらも、そういった固着され縛られた範疇にいることを嫌い、ひいては名前という記号の中にさえ縛られることを良しとしない。ただただ個人…というより"個の存在"を追い求め、その先にある自由の獲得を目指しているようです。
争いによる生物の発展を理解しながらも決して肯定せず、その枠組みさえも受け入れない。崇高で争いのない世界を求めて、迷いなく歩みを進めている男性。
彼がその手に収める化石は、人類が生まれるずっと前、弱肉強食という自然の摂理=争いのみによって進化を繰り返してきた原生生物達の軌跡が形になったものです。その遺物に虚ろな目で想いを馳せるのは、どこか自分の思想の荒唐無稽さに絶望しているからなのかもしれません。
必要以上に強い執着を向ける理由は、"生"という概念から外れてなお原型を維持するものへの興味か、はたまた"死"してなお何万何千年も"生"を象る宿命を背負わされた存在への憂いか。
人間という生物その物を失敗作と否定し、その存在のルーツを辿る者。失敗に至るまでの過程を調査し、人間が人間であるが故に与えられた理性でより高みへの解脱を試みる超越人。何を言っているのか分からないって?大丈夫、俺も何を書いているのかよく分からない。
とりあえずお前はなんでアイドルをやっているんだ?
選ばれし者だけのEdenを目指す
乱凪砂ワールド全開の登場シーンではありましたが、アイドルとしての側面も見せてはくれました。
スバルがあだ名で紹介したにも関わらず北斗と真の本名を把握していたことから、事前にTrickstarの情報を仕入れ、記憶する程度には興味を向けていたことが分かります。
唯一否定した真緒への対応も、事前に能力を見定める機会があったこそのものだったと考えられます。
真緒が自分の前で納得するパフォーマンスを披露できていたら、Trickstar全員を認めるつもりで試したのでしょう。情報だけで最終判断をせず、しっかり自分の目で見極めたい意志がある様子(その結果は、彼を一瞥することさえ必要ないと判断するものだったようですが…)
総じて彼はTrickstarにはしっかり気を配っているのが分かるし、彼らのことを見下しているわけでもなさそうです。
また真緒の行く末についても「気持ちが正しく伝わらない」と漏らしていることから、否定的な意図を持った発言ではなかったと解釈できます。
恐らく凪砂としては「彼が付いて来ていないと思うようになったら、他のメンバーと入れ替えた方が良い」というアドバイスのつもりで発言したのではないかと考えます。
残酷な現実を突きつけてはいるものの、アイドル業界は綺麗事では乗り越えられません。玲明の掟に則っている彼らはよりそれを実感しているので、言い方が厳しくなるのは仕方ありません。それについてはEveも同様の態度でした。
凪砂も言い方こそ痛烈ですが、19話の対応を通して見ると、日和以上に悪意や敵意を持っていない印象を受けます。基本的な人間性は善に寄っていると捉えて良い雰囲気です。
しかし自分の目的の邪魔をするなら"蹴落とす"、ついて来れなくなった者は"入れ替える"など、高い場所には相応の者しか居てはいけないといった強い選民思想を持っている傾向があり、それは上述した人生観に一致する考えだと言って良いでしょう。
その価値観は確かに切磋琢磨して互いを高め合おうとする夢ノ咲ではなく、与えられた階級に従うことが是とされる玲明の方に比較的馴染みやすいとは言えそうです。
争いの根絶を理想に掲げながらも、自身に付いて来られない者・理解を示さぬ者は付いて来なくて良いといった排他的尺度を持つ少年(少年と言うには違和感がありすぎるが)
選ばれし者だけの楽園――Edenを目指す存在、それが乱凪砂なのでしょう。
どのようなアイドルなのか
終盤で描写されたは茨との歪な関係。
その中で凪砂には「シンプルに、言われた通りに行動するのは楽」といった発言がありました。
また日和と同じく、旧fineで英智に体良く使われたことを彼も快くは思っていなさそうだったと記憶しています。にも関わらず、秀越でも誰かに決められた行動指針に乗っかることを選んでいる。
ここから察するに、目的意識が強い割に強大な自我を持っているわけではないようで、この辺りがキャラクター性として謎が大きい部分であると思っています。
表情が乏しくテンションも低いため、アニメから心意を推察するのもかなり難しいキャラクターです。本心でそう思っているのか、茨を立てて建前で喋っているのかも全く判断ができません。
そして何より、彼がアイドルとしてどういったパフォーマンスをするのかが完全に未知の領域なままです。
Edenのリーダーを務め旧fineの二枚看板とされていた。この情報だけでも類い稀な輝きを放つアイドルであることは自明ですが、何を魅力とした存在なのかは予想不可能な存在です。
ステージ上で見せてくれる姿もまた、彼に眠るキャラクター性を掴む大きなヒントになるはず。彼についての本質的なところは、20話を待つしかありません。
「サマーライブ」同様、前編からでは展開の予想が難しいこの「オータムライブ」。後編を実に楽しみに待たせて頂きます。
おわりに
Trickstarを主人公に、2人の新キャラクターの曲者っぷりが描かれた第19話。
「オータムライブ」はこの前編からTrickstarのエピソードであることが分かりやすく描かれており、久々に彼らの物語を安心して見られているなという印象です。
「サマーライブ」の前編は日和を中心とした夢ノ咲の事情が描かれていて、Trickstarが全員揃うことが最後のシーンまでなかったため、彼らの物語であるという前提が生まれなかったんですよね。その認識不足が後編記事での苦労を招いたわけですが…。
もちろんEve以上に表面的理解が難しいAdamの2人の読解には苦戦中。正直彼らは後編を見ないと、憶測の域を脱せないほどの曲者だと感じています。予測ではなく憶測。つまり当てずっぽう。
ただその分後編がいつも以上に楽しみだなぁと感じているエピソードです。個人的にかなり注目していた衣更真緒の短所の解決も見られるかもしれないし、分からないことが沢山分かりそうでワクワクしています。
次回はまた気合いを入れ直して行こうと思います。
後編の記事をお待ち下さいませ(「ジャッジメント」の影響で何故か前編の記事もいつもより長めに…)
今回もお読み頂きありがとうございました。
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