TRICK with TREAT!!
「今宵はハロウィン…魔物と人間が交わる得難い祝祭じゃ」
「土足で踏み込み…荒し回ろうぞ!」
夜更けから始まるハロウィンパーティー!
アニメを彩るのは、不死者の名を冠する彼ら達!
そして今回の主役は2wink!
主である朔間零率いるUNDEADを巻き込んで魅せる、正真正銘彼らのためのステージが開幕です!
今までの登場シーンは作戦遂行の役割に徹していたり2人だけではなかったりと、なかなか完璧なライブを披露できなかった2wink。3D映像を引っ提げて、満を持してのメインライブとなりました。
3D映像になると、微妙な背丈の違い(弟のゆうたの方が少し高く見える)が見て取れますし、2人の振りがピッタリ合っていないことなどがより際立って見えるようになり面白い。
2winkの3Dライブが来るなら、今までにないほどピッタリと合ったものになるのではないかと思っていただけに驚きました。
2winkとしてあえてズラした振りなのか、「サマーライブ」で見せた兄と弟の間にある考え方の違いを表現したアニメなりの演出なのかは定かではありませんが、どちらにしても今後への引っ掛かりを残してくれる映像作りになっていたのはグッド。
ライブ演出もハロウィンパーティーらしい、様々なユニットを巻き込んだ明るく楽しい仕上がりに。
特にいつも行動を共にしているUNDEADとの息はぴったり。UNDEADの持つ退廃的な雰囲気を反利用して、饗宴に相応しいコミカルな空気を創り上げることに成功していたと思います。
今回2winkは前半に目立った台詞は無く内容によるキャラの掘り下げは少なめでしたが、その分ライブの魅せ方や見栄えから伝わってくるものが沢山ある構成。
過去の彼らの会話や登場の機会を記憶していれば、このライブシーンに込められた意味や意図は感じ取ることができるでしょう。
ひたすらに楽しい雰囲気の中で、このストーリーを1話に落とし込むための工夫が見られたライブシーンでした。
兄弟
2wink&UNDEADのライブが終了する頃、舞台裏では1つ別の物語が進行していました。
あんずがKnightsに協力を求め、凛月と朔間が語り合える場を設けようとしていたのです。
話の流れを見るに、あんずと真緒との間でやり取りがあり、互いが持っていた凛月の情報を共有してこの結論に至ったと考えるのが自然でしょう。
Knightsのメンバーもそれに対しては好意的に受け止めたようです。面倒見が良い鳴上と仲間想いのリーダーが率先して凛月のために動き、他人の人間関係には中立派のイメージがある瀬名と状況をよく分かっていないだろう司が同行していないというのに"らしさ"を感じますね(憶測です)
無理矢理に服を着替えさせられ、朔間達が待つステージに強制連行されるリッツ。それを迎えるのは観客の大歓声です!(どうしてこのアニメはプライベートな話をステージ上でしてしまうのか)
久々に腹を割って話すことになった兄を前にして、怒りの感情を剥き出しにする凛月。
それはアニメでは今まで一度として見せたことがない、感情的な朔間凛月の姿です。それだけ兄のことを意識していることに他なりません。
「平気で約束破る裏切者が、今更お兄ちゃん面しないでよ」
アニメでは、その約束の内容は分かりません。
凛月がそこまで怒るほどのことなのかを客観的に判断することは不可能です。
けれどたった1つの大きな失敗は、いつまでも禍根を残す結果に繋がる。これは私的な心の問題であり、客観的意見にさほど意味はありません。怒っているということだけが重要です。
そして加害者側がどんなに謝意を持ったところで、その相手の心を動かせるとは限らない。それが現実です。
ただ"アイドル"として
「…凛月の言う通りじゃ」
それを朔間も理解してしまえるから、許してくれとは言えない。蔑ろにした事実を無かったことにしようとも思わない。その言葉が余計に弟を傷付けることになるだけだと分かっているから。
「お主を置き去りにした我輩に…家族を名乗る資格はない」
ただその事実と現実を認めて、弟の心に寄り添うことを選びます。
犯してしまった過ちを自分で認めるのは、どんなに経験と年齢を重ねても辛いことに変わりはない。むしろ積み重ねがあるからこそ難しくなっていく。『あんスタ』における朔間零がそれを臆せず選ぶことに、どれほどの意味があるでしょうか。
「けれど家族では無くとも、せめて同じ夢ノ咲学院のアイドルではいさせておくれ」
それでも朔間零は自分の想いを告げることから逃げたりはしません。
無くしたものは元に戻せないけれど、自分達はこうして同じ場所に立っている。新しく積み重ねてきたものの上でなら、自分達はもう一度対等なやり取りができるのではないか。
この輝かしいステージに立っているほんの刹那の時間だけでも、言葉を交わす猶予をと。決して弟の今の感情を否定せず、自身を肯定もせず、朔間零は朔間凛月に歩み寄って行くのです。
「見るがよい凛月」
今宵は魔物も人間も入り乱れたハロウィンパーティー。誰もが立場も役割も種族も乗り越えて、ただ楽しむためだけにこの場に集うことを選んでいる。
普段は憎み合う関係の者達も、いるのかもしれない。でも今だけは全ての者がそれを気にせずに、心から笑い合うことができる。
「眩しいのう。あったかいのう…」
自分達がそうなれるのかは分からない。
それは自分が決めることではないから。
でも…もし許されるのなら、この幸福な夜に隣りで歌を歌う。その夢を共に見させてほしい。
朔間はそう言いたかったのだと思います。
どこまでも慈愛に満ち溢れている人間で、それだけに最も身近な存在を傷付けてしまったことを悔いていることが伝わってきます。
「…………」
そしてその想いは、仲間達によって解きほぐされていた凛月の心の隙間に、しっかりと沁み渡って行きました。
我輩と俺
「…歌いたいなら勝手に歌えば?」
「…………!」
凛月が返したのは、見てくれは不愛想な言葉でした。
しかしそこに込められた想いは言葉尻とは全く違っていて。多くを語らずとも、伝わるものがある。2人だけにしか分からない心のやり取りがある。2人の表情はそう言いたげです。
"兄弟"という絆で結ばれているからこそ分かり合える、2人だけの空間がそこにはありました。
それならば…
「では…最後にあと1つだけ言わせてほしい」
心を開いてくれたのなら…どうしても伝えたいことが1つ、朔間零にはありました。
「我輩のことは嫌っても良い。憎んでも良い」
恐らく朔間がずっと心に秘めていて、ずっと伝えることができなかった一番大きな想いが、ここから先の言葉に込められていると思います。
「けれど、自分のことは大事にしておくれ」
凛月のことを愛おしく想っている人間が、自分の他にも大勢いる。
"夢ノ咲学院のアイドル"として朔間凛月が紡いできた歴史の中に、掛け替えのない存在が沢山いると、朔間零は弟に伝えて行きます。
自分が全てを投げ打ってでも守ろうとしたような存在が、凛月にもきっとできているはずだから。自分が犯してしまった過ちのせいで、凛月がその大切な存在を見失うことはあってほしくない。そのような想いが朔間にはあるはずです。
今回のことだって、その仲間達がいなければきっと為し得なかった結果です。
凛月の周りにいた仲間達が、彼の心に温かい光をたくさん届けてくれた。それによって、朔間の言葉を凛月は辛うじて受け入れることができたと解釈できます。そのアンサンブルがなければ、朔間の言葉は凛月に唾棄されていたに違いありません。
その仲間達のために自分を大事にしてほしい。
それが朔間零がずっと抱えていた想いの全て。
「そして…本当に苦しくなったら――」
けれどそれを守る過程には、様々な困難が待ち受けている。今は良くとも、行動し続ければ必ず綻びが生まれる時が来ます。もし、そんな不幸に凛月が直面する日が来てしまったらその時は…
「――遠慮せずに"俺"に甘えてくれよ」
きっと朔間零はその当事者となった時に、頼れる相手がいなかったはずです。自分で全てを何とかする他なくて、その結果、本当に沢山のものを取り零してしまった。
でも凛月は違う。
そうなった時には、前を歩く兄がいる。
同じような経験をして、大きな失敗をした兄がそばで見守っています。自分を許せなくても恨んでいても、仲間達のために俺を頼れと、朔間は凛として弟に告げるのです。
それが朔間個人にとっての幸福と呼べるかは分かりません。結局彼はまた、誰かのために自分を犠牲にする選択を取り続けようとしているからです。
どこまで行っても朔間零という人間の本質は、変わっていないということなのかもしれません。
「…分かってる。あんたがそういう人間だってことは」
そのことをきっと凛月も理解しています。
自分の兄はどこまで行ってもお人好しで。誰かを助けることが自分の生き甲斐だとでも言わんばかりに、屈託のない言葉と気持ちをぶつけてくる。
兄弟の過去に何があったのかは分からなくても、約束を絶対に守ってほしかったくらい凛月は朔間のことが好きだったのは分かります。そしてその兄への想いは、きっと今でも変わっていないと思います。
「だからえっと…今日は機嫌が良いから言ってあげる」
だから今くらいは、昔の自分に戻って気持ちを告げてみても良い。
今更そんなことを言うのは恥ずかしくて仕方がないけれども、弟として兄の気持ちに応えてあげるのを悪いとは思わない。
「心配かけてごめんね――」
どんなに嫌っても、どんなに遠ざけても、自分のことを精一杯気にかけてくれる兄に。他の人を自分と同じくらい気にかけて、全てを助けようとしてしまうどうしようもない兄に。
日頃から感じている気持ちを、朔間凛月はまっすぐと言葉にして行きます。
「ありがとう…お兄ちゃん」
今宵はハロウィン。
終わりのない愉快なパーティー。
月明かりの下で吸血鬼の兄弟は歌い踊り、笑い合う。
「「Trick or Treat!!」」
おわりに
「ハロウィンパーティー」は、最近の中ではかなりすっきりとした展開で分かりやすく見やすい物語だったという印象。
情報量が凄まじいことになるぞと質問箱で散々脅された(メッセージありがとうございます)ので身構えていましたが、見終わった時には肩を撫で下ろしたものです。感覚が麻痺しているだけかもしれません。
故に(最近の中では)薄い記事にならないように、朔間兄弟の話を自分なりに深く掘り下げて色々と工夫を施してみました。
後半は今までで最も寝不足の勢いで書いた記事なので、感想記事というより読み物としての側面が強調された内容になったと思っています。どうにも独自色が色濃い記事になりました。楽しんで頂けていたら嬉しいです。
次回は「スターライトフェスティバル」!
最早タイトルからは何をする話なのかさえ想像ができなくなりましたが、次回も1話で1つのシナリオのよう。
ラストエピソード前、最後の夢ノ咲学院を中心としたお話になるような気がします。相応の心構えで視聴と記事執筆を行いたいと思います。
12月に入り、いよいよ最終回が見えて参りました。この記事執筆が生活の中に当たり前にあるものになってきたので、終わりが見えてくると寂しさが込み上げてきますね。
ひとまずアニスタ最後まで走り切ります。
今後ともよろしくお願い致します。
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