煌めく革命の星
Valkyrieに続いて全てのユニットがキラキラと輝きながら、スターライトフェスティバルは進行して行きます。
基本的にEDテーマとして歌唱した曲をライブで披露した形式な中、Ra*bitsだけが初めて踏んだライブシーンを3人でもう一度。
あの時それはもう悲惨な目に遭った彼らが、今度は凛とした笑顔でもう一度同じ曲のステージを披露。アイドルアニメらしからぬ(?)鬱展開を見たあの日がもう5ヶ月も前。
そんな彼らのライブを皮切りに、当時は全く知りもしなかったキャラクター達の曲が順番に流れて行くのは本当に感慨深い。思えばあんスタのアニメとの付き合いも長くなったものです。沢山のキャラクター達のことを知りながら、ここまで記事を書いてきたんですね。
「どのユニットも気合い十分だね!」
そのトリを飾るのはもちろん彼らTrickstar。
自分達で望んで立った逆境。その場で誰よりも輝こうとする夢ノ咲のアイドル達が彼らの前に立ちはだかります。
「俺達だって負けてはいない!」
だからこそ今の彼らはより強く燃え上がり、今までにない大きな輝きを放つのです。
「Trickstar、出番だ!」
多くの人の力を借りて立ち上がった革命の星。
追う側から追われる側になって、初めて迎えた学院全体との総力戦。見える世界も変わったはずです。
「いっちばん煌めくのは――」
全ての輝きを見届けてなお怖気づかず、いつものTrickstarのまま自然体で臨む彼らは、確固たる自信に満ち溢れていました。
「――俺達だ!」
納得して臨めなかった者達
代表であるTrickstarの煌めきを大いなる期待感を持って見届けている夢ノ咲のアイドル達。
彼らの決意のおかげで、何の不満を残すこともなくSSを迎えることができる。きっと出場するのは自分達ではなくTrickstarであると分かっていながら、その結果に否定的な感情を向ける者はいないのです。
しかしその結果がどうであれ、このスタフェスを100%晴れやかな気持ちで迎えられなかった者もいます。
今回、完全に裏方に回り皆のステージを見守った紅月の神崎颯馬は、舞台裏で刀を握り締めて自分を殺していました。スタフェスに参加できなかったことに、並々ならぬ想いを感じているのは間違いありません。
彼は蓮巳を尊敬し信頼し、リーダーとしてその決断に従っています。それでも、他人である以上は100%同じ考えにはなり得ない。蓮巳の決断の中にも、本当は到底受け入れられないものがあっておかしくないのです。
生徒会副会長という立場上、こなさなければならない責務があるのは分かっているでしょうが、会長の英智がステージに上がるのだから物理的に不可能だったわけではない。ただ、誰かがやらなければならないことを、自らが犠牲となって一身に背負う選択を蓮巳がしただけのこと。
それその物は人間として崇高な考えでありますが、同じユニットのアイドルとして巻き込まれるとなると全肯定は難しいのが現実ではないでしょうか。
ですが神崎颯馬というキャラクターはここまで、生徒会に属する紅月の一員として納得して活動している描写がほとんど。自らの意志を持っている描写がありませんでした。
その状態でこの一瞬のカットが入ったことで、彼個人だけでなく紅月というユニットについても"先が気になるポイント"が大きく増加したと思います。彼らも決して完成された3人組というわけではないんですね。
「…変な連中」
そしてTrickstarの煌めく姿と自身を照らし合わせ、言葉を紡がずにはいられない少年がもう1人。
「どうして僕は、あんな風に頑張れないんだろう」
fineの最年少メンバーにして、今回の「スターライトフェスティバル」を取り巻く最大のキーパーソン。姫宮桃李でした。
否定された企画書
お待たせしましたあなたの日々樹渉です。ようやくfineの話が始まります。
今回のスターライトフェスティバルの開催に伴って、全てのお話の前段階として展開されたストーリーがありました。
それは姫宮桃李によるスタフェスの改案。
TrickstarがSSの代表であることに異論はないが、あの敗北も純粋な実力によるものではない。結局夢ノ咲学院で最も優秀なユニットは今でも自分達fineである。それを今一度証明したいと彼は考えました。
あの時は自分の実力不足が足を引っ張ってしまったけれど、成長した今はきっと同じ結果にはならない。自分が成長したなら、元々最強だったfineは絶対に最強に違いない。そう思えるほどに姫宮が努力を重ねてきたことは、劇中でも何度も語られています。
だから今度のスタフェスではfineが最も輝けるシナリオを用意して、敬愛する英智と共に最高のステージをする。それが姫宮桃李が夢見たスターライトフェスティバルでした。
しかし、その希望は他でもない、彼が誰よりも立ててあげたかった天祥院英智の手によって、無残に否定されてしまうことになったのです。
生徒会室で交わされた言葉
これまでも英智は熱意だけで作られた企画書にほだされることはなく、あくまでもドライで現実的に物事を判断する政務者として在りました。
ストレートに見れば今回も同様に、生徒会長として粗雑な内容の企画書を不認可にしただけ。そう捉えて差し支えない展開だったと思いますが、その割には姫宮の反応が酷く痛烈です。
ここまでの英智は極めてドライではありますが、冷酷な人間として描写されたことはありません。過去の英智を考えれば、企画書の否定程度であそこまで姫宮が傷ついてしまうのは不自然でしょう。
だからきっと、あの部屋の中では想像以上に姫宮を傷付けるようなやり取りが展開されてしまったのではないかと思っています。あの時の英智は体調も悪かったせいで心に余裕が無く、姫宮の想いを受け止めきれなかったのかもしれません。
「今年のスタフェスは、あくまでTrickstarの壮行会。万が一にも、主役を食うような真似をするべきじゃない」
彼は努めて冷静な判断として、Trickstarを立てる演出にこだわりました。どんな理由があるにしても、fineが主役に見えるような催しにしてはならないと、合理的な判断として伏見に話しました。
そしてその弁はTrickstarが自らSS出場権を返還したことで正当性を失ってしまい、結果として英智の中には「無意味に桃李を傷付けてしまった」という罪悪感だけが残ったと僕は思っています。
姫宮桃李の見る理想の形
企画書の練り上げには、姫宮の側近である伏見も関わっていました。
憶測ですが英智と伏見のやり取りを見るに、内容の割に企画書の完成度がやけに高かったのでしょう。そのことから、伏見が姫宮の想いを成立させる案を考える手助けをしたことを英智が察したと考えられます。
英智の考え方をよく知る伏見からすれば、その企画書は考えるまでもなく英智に唾棄される内容であることが分かっていたはず。それでも、彼の制止を聞かず企画書作りに熱中する姫宮を止めることが彼にはできませんでした。
思うに、姫宮が伏見の話を一切聞かずに「黙れ」と遮ったことから、姫宮自身もその企画書が英智に受け入れられないかもしれない可能性を考慮していたと思います。その頭が無ければ、一応伏見の提案にも耳を傾けてから否定したはずです。
その姿から「それでもやりたいんだ」という強い意志を感じたことで、伏見は企画書作りに加担する形で彼をサポートするしかなかったのでしょう。何より、その姫宮の姿を応援したいと思ってしまったに違いありません。
その結果、姫宮の想いが反映された上で理路整然とした内容の企画書が英智に突き付けられてしまった。
「桃李にとってfineは、かつて夢ノ咲学院を改革した英雄なんだ」
生徒会の独裁を敷き学院の自由度を大きく引き下げたことから、現在では否定的に捉えられがちだった英智の革命。その英智を今でも"英雄"と思い、輝ける存在として君臨させるのが姫宮桃李の理想です。
「fineは気高く聖なる光を放つんだ、ってね」
けれどそれは今の夢ノ咲には求められていない考えで。そればかりを突き詰めると、最後には彼の独善的な発想であると捉えられかねない内容の企画書が出来上がってしまう。
でもきっと姫宮にとっては光り輝くfineの威光を知らしめる舞台として、最も輝きに満ち溢れるイベント――クリスマスのスターライトフェスティバルは譲れない存在だったと考えます。
毎年来るクリスマスも、彼らにとっては一生に一度しかないクリスマス。だから全身全霊をかけて、そこでfineが輝くイベントを姫宮はどうしても用意したかった。
それを最も受け入れてほしかった英智に完膚なきまでに否定されしまっただけでも、彼は計り知れないショックを受けたことでしょう。
そんな失意の中で、姫宮は英智が発案したスターライトフェスティバルのステージに上がることになったのです。
fine
全ての演目が終了し、予選一位通過はTrickstar。
名実共に、彼らが今の夢ノ咲学院の代表であることが証明されました!
「英智様…あれ…」
参加した全てのユニットが集い彼らを祝福する中に取り入れられた演出。その1つに姫宮の企画書の内容を思わせるものが含まれていたようです。
「うん…ささやかなクリスマスプレゼントだ」
企画書を否定し姫宮を傷付けてしまった"お詫び"として、彼の企画書の一部を演目内に取り入れるように英智が取り計らったと解釈できました。
「企画書の件では私情を挟んでしまった」
ここで英智が吐露する本音。「私情を挟んだ」という生徒会長たる彼のイメージから大きく離れた発言が、今回の一件の全てを包んでくれたように思いました。彼は生徒会長として企画書を否定したのではなく、天祥院英智として企画書を否定してしまったことが分かったからです。
「隠していた自分の後ろ暗い部分に触れられた気がして、反発してしまったんだ」
桃李にとって自分は"光"。
あまりにも大きく強い聖なる存在。
でも本当の自分はそうじゃない。
数々人を貶めて、傷付けて、直接的にしろ間接的にしろ様々な人を利用して、誰からも褒められない方法で革命を成し遂げた。英智はその過去の自分自身のことをきっと好いていないし、今でも許されない罪を犯してここまで来てしまったと考えていると思います。
だからそんな「完全なる光である」「正義の存在である」という強すぎる想いを英智は受け入れられない。
負の自分を覆い隠して、外面だけ正義を気取ったあの頃の自分を見せつけられているようで。自分の裏に潜む邪悪を感じ取らされてしまうようで。自分を慕ってくれる姫宮桃李の光さえ、利用してしまうのではないかと恐ろしくなる。
目を背けている自分から逃げるために英智は一人の少年として、姫宮の企画書を否定した。否定しなければならなかった。それだけが憔悴していたあの時の彼をギリギリで踏み止まらせる方法だったから。
僕は一連の流れをそう解釈しました。
そしてそれを、英智が自分の口から姫宮に聞かせることにどれほど大きな意味があることでしょう。聞かされた姫宮にとっても、他人に話せた英智にとっても、大きな転換点になったと感じます。
"光"
「…知ってるよ」
その英智の心中を聞いた姫宮は、たった一言その言葉だけで返します。
その表情を見るに、姫宮はきっと天祥院英智の光だけを見ているだけではないのでしょう。彼は英智が犯してきた闇の部分についても理解しているし、それを英智がどう思っているかにも頭を回している。
それらを全て「知っている」けれど、それでも英智様は自分にとって英雄なんだと、彼は思っている。そこまで含めてなお天祥院英智に光を見ているのが姫宮桃李だったのだと思います。
「まだまだ英智様と肩を並べるには未熟だけど…」
敬愛する英智の本当の気持ちを直接聞いた上で、姫宮は英智を否定しません。英智がそんなことを考えてしまうのだったら、まだまだ自分の努力不足。英智を安心させられるくらい高みを目指すことに、まっすぐな熱意を燃やしている。
「いつか英智様を支えられるくらい、強くなるから!」
最後には彼を逆にサポートできる存在に、天祥院英智にとって無くてはならない存在になってみせる。そんな屈託のない決意に、姫宮の心は満ち溢れていました。
夢の先へ
「あぁ…息が…楽だ…」
Trickstarの元に駆け寄り、いつものテンションで毒を吐いているであろう姫宮を見守りながら、英智は心の中で独り耽ります。
「いつか…こんなことを夢見た気がする」
去年のクリスマス。
病室で独り寂しく過ごした英智が見た幻想。
それは最も想いを向ける相手と共に病室から外の世界へと羽ばたいて、光に満ち溢れた美しい世界を眺めること。その先にある、まだ見ぬ大きな光を目指して前へ前へと進んで行くこと。
その幻想の存在だけを信じて、彼は夢ノ咲の肯定として君臨し続けることを選びました。
では、今の彼はどうでしょう。
あの時想いをぶつけた日々樹渉は自分の傍にいてくれる。目の前にはアイドル達の煌めきに包まれていて、まだ見ぬ"光"だった存在も、実はすぐ傍にいてくれていた。漠然としたイメージではなく、全てが確実な現実となって、英智のことを包んでくれています。
そして彼が発案したこの「スタフェス」は、動乱の最中でバラバラになりかけたKnights、革命の犠牲となり砕けたValkyrie、生徒会の圧政に苦しんだRa*bits。
奇しくも英智が取り零してしまった者達が再び結び付き成長し、一同に集う場所として体現されました。
その一端を支えてくれていたのが、英智の光たる姫宮桃李の企画書で。fineに光を見た姫宮の気持ちが、新たな煌めきと"光"を生み出した。彼の行動が無ければ、このスタフェスは今の形に落ち着かなかったのかもしれません。
このエピソードがfineで始まりfineで終わったことには意味があったし、総じて全体を英智(fine)が包む形で一話として成立する構成に仕上がっていたと思います。
夢ノ咲学院がフィーチャーされる最後のエピソードは、このアニメ中で語るべきことを総ざらいしたストーリー。聖夜を彩るスターライトフェスティバルは、大団円で幕を閉じました。
「行っておいで、僕らの代表…」
「君達に願いを託そう」
おわりに
恐らく学院の物語としては最終話に当たる話だろうと考え、全て全力で書きました。いやー楽しかったー!
この「スタフェス」はアニメ初見としては非常に評価が高いです。と言うのも、今回の話で拾われたエピソードは、全てアニメの中で押さえておいてほしいものばかりだったからです。
Knightsのその後、Valkyrieの歪み、fineの関係性など、どれも欠かしたら「結局あれどういうことだった?まぁ原作やれってことなんだろうけど」という一抹のモヤッと感が残ってしまうようなものばかり。
アニメでは語られていないことは沢山あると思うのですが、今回の話はアニメで語られたのに拾われていなかったことばかりで構成されていたのがポイント。
だから見終わった後の充実感が凄い。
伏線をでき得る限り拾い集めた上で、語り切れない部分で謎を残して原作や他の媒体への興味関心を植え付ける。アニメはアニメできっちり完結させたい意図が見える実に心地良い終幕でした。
残り2話はTrickstar VS Edenのお話になると思っていますが、この話に何の気兼ねもなく集中して臨めるほどにしっかり終わらせてくれました。このアニメを信じて見てきて良かったと心から思えた一回です。
その分一部のキャラ推しの人達には受け入れ難い描写もあったようで、その点について僕のできることとして見せ場の多かった全てのユニットについて、しっかりと描写する選択を取りました。
正確かどうかは毎度のことながら分かりませんが、200%膨らませて書きました。そして20,000字超えはこのブログで最長かつ唯一の記事です。おめでとうございます。褒めて!
さぁ残り2話。
Trickstarの戦いを、晴れやかな気持ちで見届けさせて頂きましょう。最後までお付き合いよろしくお願い致します!
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