ありがとうあんさんぶるスターズ
初めての方、はじめまして。
その他の方、お久しぶりです。
TVアニメ『あんスタ』のミリしら感想を書いていたはつです。
そちらについては下記のまとめ記事をご覧ください。
キンプリオタクの『あんスタ』ミリしら感想 全話まとめ 総計20万文字以上!アニメから始まる可能性の光
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これらの記事を執筆し終えた上で、「是非アプリ版の感想も書いてほしい」という声を幾つも頂きました。ですので2020年より水面下で準備を進め、アップデート直前キャンペーンで無料公開されたシナリオを(とりあえずオート放置で)全解放しました!
今後、こちらの感想を中心に、少しずつアプリ版についての記事を書いて行こうと思います。改めてよろしくお願い致します!
記念すべきアプリ版最初の記事は、やはり「メインストーリー 一部」から。アニメでも複数話を使って描かれたシナリオですが、原作を読むとまた違った味わいがありました。
そちらの方をしたためて参ります。
お付き合いくださいませ。
目次
原作記事執筆にあたって
まず最初に、今後の記事執筆における前提を提示しておきます。
今後の原作関連の記事はアニメから『あんスタ』を知った者として、アニメ全話の知識と所感を踏まえた上での感想となります。
アニメで放送されたエピソードの原作版については「アニメと比較してどうか」という切り口を多用する他、この原作をもって何故アニメがあの構成になったのかも改めて紐解いて行こうと思います。
ですので、記事内に「原作の感想でありながらアニメの話をしている」部分も登場します。その点はご留意の上、読み進めて頂けると幸いです。
またこれらの感想は、アニメと原作の当該エピソード同士のみの比較ではなく、アニメ全話で得た情報を踏まえた上でどう見えているかを書いていきます。
これはメインストーリーを読んでいる段階で既に、原作だと序盤で登場している設定が、アニメでは後半で回収されていた…というヶ所が複数見受けられたためです。
アニメ化に際する大幅な台詞のカットを受けて「これで本当に正しく伝わるのか?」と思った方は多いと思いますので、ここは概ね想像通りだった。これはアニメからは分からなかった。など、できるだけ明け透けに書いて行きます(もちろんアニメに肯定的なスタンスは維持します)
ですが、個人的にはアニメは全話を通して原作との大きな齟齬を生んでいなければ問題はないと考えています。よってアニメ全話を踏まえた原作の感想を書く予定です。
アニメを見た方はもちろん、アニメを見ていない原作ファンの方にも「アニメはそんな感じだったのか」と思ってもらえるような内容にできればと思っています。よろしくお願いします。
それでは始めて行きましょう!
アニメより陰鬱な世界観
今回の記事はTrickstarが紅月を倒して英智に出会うところ(一部四章の途中)までを参照して記事を書いて行きます。
原作的には中途半端ですが、アニメではここが序盤の大きな区切りとなっていたのでそちらのイメージを尊重しました。まずこの区切りが原作では章の区切りではなかった…というのが、この記事で書く最初の驚きでしょうか。
「一部」のストーリーは、濃厚な物語を展開することよりも「この作品はこの空気感でこういったキャラが活躍します」といった全体像の提示を最優先課題として執筆されているように感じました。これはアニメ視聴時の印象と大きく変わっていないと思います。
物語的な動きは必要な部分のみで、キャラクターの会話や独特な台詞回しを見せることが主題。多くのシナリオはスラスラと読み進めて行ける感じですね。
演出面も(アプリ開始直後のものなので)控えめでBGMの変更も最小限。映像的な情報はかなり少なく、その代わりに台詞量が膨大。改めて、この作品の映像化は難儀なことだっただろうと思わされました。
僕の場合、アニメの情報が脳内で会話を補完してくれているのでほとんどのシーンを追憶できます。しかしアニメ放送前にファンやスタッフが頭の中に思い浮かべていた映像は、本当に十人十色だったのではないでしょうか。
小説などの文章作品では、地の文による語りで一定まで共通の認識を見出せるものですが、アプリ作品はそれがありません。イメージの疎通だけでも相当な苦労だったと思います。
痛烈な台詞の応酬 その映像化の是非
そんな中で、この作品に据えられた何となく陰鬱とした空気感。それは原作でもアニメでも変わりません。
原作ではその暗さを台詞で表現しようとしているので、とにかく登場キャラの台詞が攻撃的でギスギスしているのが最大の特徴。
アニメでは「仲良しだが発展途上」というイメージが強かったTrickstarでさえ、とにかくなんかギスギスしている。紅月も思っていたより牽制し合っている。朔間はすごい悪口を言われている。全体的に仲が良くない。
そしてRa*bitsの苦難などアニメでも印象的だった悲劇的なシーンでは、これでもかというほどに痛烈な台詞の応酬。文章だけでも心を引っかき回す台詞回しの妙がてんこ盛りで、一度見ているのに心がキュッとされる感覚に襲われました。
アニメ視聴中に「アニメは薄味」とよく聞きましたが、確かにこれらの台詞群に慣れているとアニメはそう見えるだろうというのが率直な感想です。
この手の作品は初期のキャラの関係性がぎこちないほど、それを乗り越えた先で得られるカタルシスが大きいもの。それが『あんスタ』の根源的な魅力だとすれば、台詞のカットや描写のマイルド化に否定的な意見が出るのにも納得できます。
ですが映像で表情と動き、そこに音声がついた上でのやり取りとなると、文章で読むよりも遥かに痛烈な形に映ります。結果としてそのような台詞をそのまま映像化することは、多くの人に"嫌な感じ"や"意味不明さ"だけを残すリスクを孕みます。
『あんスタ』のような作品は、長い目で見てもらうことが前提の面白さです。対して深夜アニメはいわゆる1話切りする人が多い文化。そういった観点から「誤解だけを残して切られるかもしれない創り」を避け、できるだけ良いところを見てもらえる作品になるよう舵を切るのも、賛否はあれど正しい選択だったと言えると思います。
キャラクターについての誤解はない
アニメ版と比較すると、想像以上にギスギスしていて堅苦しい言い回しが多い原作版。四字熟語とことわざ・慣用句の登場率が高い。氷鷹北斗「唯々諾々」好きすぎ問題。
そういった台詞回しなどの質感にはアニメとの差を感じはしますが、キャラクターについての認識の齟齬はほぼありませんでした。
これはメインストーリーで登場した多くの設定や関係性は、アニメ全話の中でしっかりと拾われていたからです。メインストーリー部分のエピソードだけを切り抜いて比較すると取り零しはあるでしょうが、アニメを全話見れば誤解がないような創りになっていた…と考えることができるでしょう。
一番大きなものだと「遊木真が情報収集能力に長ける」という設定は、アニメだけだとサマーライブ付近で本格的に開花したように見えていましたが、実際は最序盤で提示される基本設定でした。
これには驚きはしたものの、情報戦が真の得意分野であることはアニメ本編を見ていれば分かることです。進行上の齟齬ではあれどキャラクターの誤解ではないので、読み進める上で特に問題はありませんでした。
このような「おぉ、これはアプリだとメインストーリーで分かっていることだったのか」というようなものはあっても、「えぇ!?そんなのアニメからは分からなかったけど!」という悪い振り回され方はされておらず。
メインストーリーは全ての基軸となるシナリオ。アニメがその取り零しがないように通してまとめられていたのは確かなようです。
その中であえてアニメと原作の齟齬を指摘するなら、最序盤はスバルと真が想像よりアホコンビで、真がかなり無理して明るく振る舞っているように見えるという部分かなと。
アニメの真は最初から気弱そうな部分が強調されていたと思いますが、原作序盤の彼はそれを躍起になって覆い隠そうとしているようにも見えました。
ボロが出るので結果は変わらないものの、その前段階1つあると一歩深みが増すというのは事実かも。アニメは分かりやすさを取ったのかもしれませんね。
アニメ新規は原作の台詞をどう思うか
また多くの人が気にしているであろう「アニメから入ると、原作のドギツい物言い・行動に面喰うのでは?」という部分。
姫宮がスタンガンを振り回すなかなかの蛮族だったり「想像以上だな」と思わされるところはありはしますが、言ってしまえばこれは特定のキャラだけではなく全体がそうなので、特段気になりません(姫宮が本当は良い子なことはアニメで理解しています)
1が10になったとしても、全員が一律に10までパワーアップしていれば結果的には「1」のまま。キャラクターの持っている本質的な要素については、アニメで語られた範囲の情報のみで咀嚼できます。
だから全体を見て「なるほど、原作はこういう感じなんだ」と思いこそすれ、キャラについて自分の認識が間違っていたようだという読みは今のところしていません。
もちろん、蓮巳が朔間のことを「朔間さん」と呼んでいること、真緒が初期の頃はTrickstarと生徒会の間で想像よりも迷走していること(その心理描写)など、一部語られていなかった関係性などは新発見として捉えています。
アニメは語り切れないところはそもそも触れない、中途半端に匂わせないという取捨選択の元で構成されていたので、朔間と蓮巳のようなゼロだと思ってたところにいきなり切り込まれると楽しいですね(特に蓮巳はアニメで関係性の描写がほとんど行われていない)
思うに『あんスタ』のアニメを見て原作に手を出そうとする人は、あのどことない陰鬱な空気感を気に入った人がほとんどだと思います。なので、それが強調されている分には問題ないはず。
アニメ→原作で「思ってたのと違う」となる方がレアケースだと考えて良いと僕は思っています。
「一部」の目的
そういうわけなので、「一部」前半部についてはアニメで書いた感想とあまり変わっておらず、アニメで見た内容を(上の項で軽く触れているもの以外は)おさらいしているという感覚で読んでいます。
後半は「メインストーリー 一部」の創りとそのアニメ化についてもう少し踏み込んで行きます。原作勢の方、アニメの話ばかりですみません。
原作のメインストーリーは以前1クール目考察の記事でも予想したように、長編アプリのプロローグとも言えるオーソドックスな内容のものでした。
改めて特筆すべきは「物語よりもキャラクターを見せることの重要度が高い」ということです。
キャラクターの会話を見せたり設定の説明・関係性の説明が入ったりと、物語の進行に大きく関わらない台詞が圧倒的に多く、あくまでキャラと世界観を提示する目的で書かれていることが分かります。
言ってしまえば物語としてはちょっと冗長な創りですが、それによって間口を広く取ることができる。色んなキャラや世界観に興味を持つキッカケがこの「一部」には散りばめられています。
その引っ掛かりが後のイベントストーリーの盛り上がりに繋がっていく…ということを期待して展開が始まっているように思います。
ですから、この「一部」は"純粋なストーリー"として見るか"キャラ(が描くストーリー)"として見るかで評価が大きく分かれると思います。前者で見るとオーソドックスの域を出ませんが、後者で見ると今後に期待できる内容という感じになりそうです。
そして『あんスタ』のファンは、この「一部」を後者で捉えて好意的に受け止めた人達が多いからこそ盛り上がっているはずです。
アニメ化に当たるストーリーの仕上げ方
だからこそ、この「一部」のアニメ化には難しさがあると考えられます。
アニメは限られた話数で展開する映像作品として、やはり筋を通したストーリー作品として仕上げる必要があります。前述した"純粋なストーリー"としての仕上げ方がアニメには求められるのです。結果、キャラのやり取りは進行を脱線させないレベルに絞り込んで採用しなければなりません。
ところが「一部」の醍醐味はキャラ同士の掛け合いにある。さらにそれを好んだ人が『あんスタ』をプレイしていると仮定すれば、ストーリー重視の台詞の削ぎ落としは、作品の根本的な魅力を削ぐ行為とも言えます。
アニメ的なまとまりを優先すると、原作の良さが削られてしまう。その中でいかにバランスの良い映像を創るか…という絶対に答えの出ない命題の中で、この「一部」のアニメ化は進んだと思います。
もちろん、世の中にはキャラクター同士の小気味良い掛け合いを眺めて1クールが終わるような作品もあり、『あんスタ』もそれを目指す選択肢はあったでしょう。
でもその選択をしなかった。
できるだけ原作のエピソードをたくさんアニメ化し、全キャラを出し、2クールでできる範囲で彼らの生き様をしっかりと描き切る。そして「より多くのものをアニメ化する」に当たり、中途半端にキャラに悪印象を与えそうな(回収し切れない)台詞やシーンをカットして、全キャラの最も根本的な魅力のみをアニメ化する。
それが『あんスタ』の目指したアニメ化であり、実際に創られたアニメです。
良い悪いの話ではなく、そちらを選んだ結果というところ。ですので「一部」のキャラの掛け合いに大きな魅力を見出した人達が、高速で1本のストーリーにまとめ上げた1クール目を見て疑問を持ってしまうのも無理がないことと解釈します。
しかし僕のようにしっかり2クール付いてきて、今こうして記事を書いている人間もいるわけですから。一定以上に満足している原作ファンももちろん沢山いると考えれば、アニメにはアニメの良さがあったのは間違いありません。それを踏まえた記事を今後も書いて行ければと思います。
おわりに
「一部」の前半部分はアニメとの比較を中心に書きました。アプリの導入のエピソードなので、改めてアニメとアプリの橋渡しの文章をという感じでしょうか。
この「一部」はアニメでも複数話かけて筋は丁寧に描かれていますし、取り零しはその後のエピソードで拾われている関係で、改めて内容に触れたいところがあまりありませんでした。
今後はアニメ化していないエピソードにも触れて行きますし、カットの多かったイベントシナリオなどはその部分を中心に触れて行きたいです。
いよいよ新展開『あんさんぶるスターズ!!』のスタートですね。僕も実質『ズ!!』からの新参者として、端っこの方で楽しませてもらえればと思います。そしてこれから盛り上がる界隈に一華くらい添えられたら嬉しいです。
僕の記事も楽しんで頂ければ幸いです。
改めまして皆様、よろしくお願い致します。
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