『バビロニア』も3話でございます。
メソポタミアの地に降り立ち、エルキドゥの謀略、マーリンとの出会いを経験し、この特異点ですべきことも見えてきた藤丸とマシュ。
導かれるままにウルク王 ギルガメッシュとの謁見を果たす彼らを待ち受けていたのは、他でもない王からの試練でした。
アニメの3話と言えば、その作品の一定の方向性が定まってくる数字。今回はアクションに設定にキャラクターの感情にと、盛り沢山で忙しい一話だったと思います。
その分、しっかり漏らさず見て行きたい1回です。
頭から順番に紐解きます。是非ともお付き合い下さい。
目次
無限の財を使いこなす王
開幕から始まるギルガメッシュとの戦闘。
スタートダッシュにして今回の見せ場。
アナも加わり2対1での戦いとなりますが、遠近関係なく異空間から複数の財を召喚し使いこなすギルガメッシュに対し、近距離戦闘しか選択できない2人では、分が悪いどころの話ではありません。
地の利や武器を上手に利用したトリッキーな波状攻撃を仕掛けても、結局は至近距離で殴らなければならないことに変わりはない。360度を確実に防御できるギルガメッシュの能力の前には、小手先の戦術は通用しなかった。
「…詰まらん」
2人の攻撃は難なくいなされ、マシュの尻のノルマ(週1回以上はあるな…)は回収したものの、一撃の攻撃も見舞うことができないまま、王は玉座へと再び腰を下ろします。
宣言通りここまで「玉座を少し汚す」だけ。最小限の攻撃と防御で、カルデアの力を見極めます。
…アナが戦闘に参加したということは、マーリンが加勢する選択もあったのでは?いやどうせあのロクデナシは「怪我したら痛いだろう?」くらい言う。「マーリンは死んでください」
自分を満足させることができなかった藤丸達に対し、ギルガメッシュは大きく落胆。多忙な王にとっては、求める力量に達していない相手との対話は無意味。話を聞くことも拒否し、不機嫌そうに藤丸達を邪険にあしらいます。
「俺は全てを為し得るが故に、全てを知り得ると心得よ」
ギルガメッシュ王は"全ての未来を見通す千里眼"の持ち主。この時代この世界に、異邦の民であるカルデアからの来訪者が訪れることも当然知っていたのです。
その配下にある"現在を見通す千里眼"の持ち主であるマーリンが連れてきた彼らが、間違いなくそれに該当することも分かっている。だからこそ、その彼らが自分を興じさせる戦闘を為せなかったことには、不快感を隠せなかったのでしょう。
「だ、だったら尚のこと聞いて下さい!」
それでも藤丸は彼に食い下がります。
この世界で目的を果たすためには、人間を統べる最高権力者にして全てを見通す彼の助力が必要不可欠。何としてでも話を聞いて、理解してもらわなければなりません。
「この時代の聖杯を回収しなければ、人理が崩壊します!」
世界を救うために時代を超えて旅をするカルデアのマスター達。世界存亡の危機は誰にとっても等しく重大なことであり、その解決は最優先事項のはず。今の彼らにはそれを訴えてギルガメッシュ王に分かってもらう以外の選択肢はありませんでした。
しかし…
「一刻も早く――」
その藤丸の言葉を弄ぶように王は自分の財の中から聖杯を取り出し、藤丸達の前に晒して見せたのです。全てを為し得るが故に、全てを知り得る王として。
王、腹筋大激痛
「どうした? 聖杯とやらを探している、という話だったが?」
この世の財は全て我の物。
それがギルガメッシュ王が掲げる矜持にして覇道。全ての英雄の原典とも言われる彼は、その単純明快な一言に極大な意志を込めることさえできる。
聖杯とて所詮は"財"の1つに過ぎない。ならば王の手中に収まっていて当然であり、わざわざ捜し歩く必要などない。他人が求めるものなど全て自ずと集まってくるからこその王である。その表情と態度から、彼の在り方と言いたいことの全てが伝わってくるようです。
そして人理修復を目的とする藤丸達にとって、その聖杯は絶対に無くてはならないもの、手に入れなければならないものです。それが今目の前の…少なくとも人間の味方であるウルク王の手に握られています。
最後の特異点、最後の聖杯。それを譲ってさえもらえれば、人理の修復は一気に現実味を帯びてくる。"欲しい"なんて感情では言い表せない渇望が、藤丸の胸中には眠っているに違いありません。まずは一言、交渉に打って出たいと思って当たり前です。
「そ、その…」
「間違っても、その聖杯を譲渡してほしい等とほざくなよ?」
その行動を当然予期しているギルガメッシュ王。「我の宝を貴様達にくれてやる道理はない」と一喝します。王が王故に手に入れたものは全て、自身と民のために使われるべき物です。無償で異邦の者に渡すほど、彼は大らかでも愚かでもありません。彼は暴君が故に英雄であるのですから。
「…じゃあ――」
ですが藤丸とて、もうただの一般人ではない。数々の英雄や王と接したことで、彼の言いたいこと、求めていることに何となく想像がついたのでしょう。聖杯が欲しくば相応の対価を支払え。そう感じ取った藤丸は、彼が最も求めているであろうものを条件として提示します。
「三女神同盟を倒すのと引き換えではどうですか!?」
聖杯を狙い、ウルクを攻め落とそうとする人間の敵、三女神同盟。藤丸達にとっても人理修復の大きな障害となる相手です。その三女神同盟の打倒の"報酬"として聖杯を受け取る。それが彼の考えた理想でした。
「――――フッ」
藤丸の決死の覚悟と提案を確かに聞き届けたギルガメッシュ。彼がそれを受けて藤丸達に出した答えは…
「ワハハハハハハハハハハハハハハハ―――――!!!」
爆笑。
そう、この王様結構よく笑う。機嫌が良い時は特に。酔狂なものを見ると腹を抱えて大爆笑。怒る時はとことん怒り、笑う時はとことん笑う。ウルク王は気分屋で扱いが難しい。それが分かっている祭祀長のシドゥリは、決して動じることもありません。
「いや今のは中々だった。あとで王宮誌につけておこう。"王、腹筋大激痛"と」
まぁ「箸が転がるだけでも面白い年頃」なので仕方がない。箸という概念と日本の現代文化を理解しているのは多分千里眼の力なのだろう。
手遊び程度に相手をしてやった自分に傷をつけるどころか、1つの攻撃すら当てることもできなかった程度の実力で、三女神を打倒するというその不遜さと弁えなさに、ギルガメッシュは全てを通り越して笑ったのだと思います。
しかしそれが無謀かどうかとはまた関係なく「ウルクを守るのは自分であり、カルデアの力を借りることはない」と、彼は王として藤丸の提案を切り捨てます。
最早カルデアに他に交渉の手段はない。
息詰まるギルガメッシュとのやり取りは、新たなる招かれざる客(?)によって中断されることとなりました。
現地神イシュタルの暴走
伝令の報告にあった"イシュタル"の名。
その名を聞き呆れ果てるギルガメッシュ王。
そのやり取りをどういう耳で聞いていたのかいざ知らず、天井を突き破って豪快に舞い降りるのは1話で登場したあのトンデモ女。
彼女こそが女神イシュタル。
豊穣と愛、戦闘の女神にしてウルクの守り神として崇拝される存在。
…のはずが、ギルガメッシュには煙たがられ(過去に色々あった)ジグラットを破壊して好き放題に振舞う無法者。打倒すべき三女神の一柱にも数えられ、何かと曰くつきの女神。ウルクに無くてはならない存在にして、無い方が楽な存在。それが彼女。困った女だ。
1話で面識のある藤丸達を無視し、ギルガメッシュにだけ話をしようところを逆に言葉巧みに弄されて、慌てふためく間抜けっぷりを披露。
「私のものじゃなくなったんだから、ウルクなんて別に気遣ってなんかいないんだけどね!」
最早古典的と言っても良い、こんなツンデレ台詞を聞ける機会も少なくなった。そのせいもあり、何だかやらかしてしまった感に包まれるジグラット。
その空気感と何だか思い通りにならないことを口走ってしまった違和感で勝手に激昂。勝手に暴れ回ることを選んだ駄女神イシュタル。もう全てがダメ。
「もうどうでも良いわ! 何もかも木端微塵に…してあげる!」
というわけで唐突なバトルスタート。
この場で不必要な戦闘ではあるものの、彼女が三女神同盟に数えられている以上は、どこかで話を付けなければなりません。結果、藤丸達はギルガメッシュ王を護り、イシュタルと戦うことを選びます。
華奢な身体からは想像できない攻撃力の肉弾戦と、強力な魔術による遠距離攻撃。スピード感では今までのサーヴァントを上回る圧倒的な動きです。
それでいて決して一本調子ではない。
相手の攻撃を受け流し、逆手に取って利用するなど臨機応変な戦闘スタイルも披露。流石は戦闘(主に好戦)を司る女神。台詞では拾われていませんが、彼女が実力、精神共に戦闘狂であることはしっかり分かるバトルシーンだったと言えるでしょう。
「自分から前に出てくるなんて、マスター失格ね」
どこかで聞いたことあるような台詞を口にしながら、アナを護り前に出た藤丸ごと2人を撃ち抜こうとしたイシュタル。
しかしそこで、何かに気付いて攻撃の手を収めるのです。
「そういうこと…因果な話になってきたわね…」
それはどうやらアナに秘密があるようで…?
"はた"迷惑な女神
「何と? 尻尾を巻いて逃げるのか?」
「私はいつもの散歩で立ち寄っただけ。じゃあね、裸のウルク王」
攻撃を中断して以降、イシュタルは何かを悟ったように多くを語らず、ギルガメッシュの挑発にも乗りません。
「それとシドゥリ、ギルガメッシュが死んだら、ウルクを助けてあげないこともないから」
再び天舟に乗りその場を後にするのでした。
「白旗を用意しときなさい!」
「白旗…? 何のことでしょうか?」
「白旗を振る」と言えば「降参」を意味する。
日本人であれば誰でも知っているであろう常識的慣用句とも言えますが、ウルクの民であるシドゥリはその意味を理解できません。
ではその言葉を何故イシュタルが知っているのか。
それはこの特異点で女神たる彼女が、地上に顕現している方法に理由があるのですが。それはアニメでもどこかで語られるはず…?
「全く、"はた"迷惑な女よ」
何故か"はた"を被せる親父ギャグをかましてくるよく分からないお年頃の王。
ですがその気の乱れも一瞬のこと。イシュタルの闖入があり、ジグラットが損壊し、割と大がかりな戦闘に発展したものの、彼にとってはその全てが"些末なこと"に過ぎない。あまりに自然に仕事を再開するところから王の度量が感じられます。
「うーん仕方ない。とりあえず今夜の宿を探しに行こう」
おいロクデナシ、さっきからテメェは何をしてたんだ。
日を跨げば気が変わって話を聞いてくれるかもというマーリンの安易な考えをも、ギルガメッシュは地獄耳で一蹴。これ以上付き合う気はないと切り捨てます。
しかし…
「下働きって…」
どうしても自分の役に立ちたいなら…と、何だかんだ言って手を…いや小指程度は差し伸べてくれる王なのでした。
慈悲深き(?)ウルク王の言伝
祭祀長シドゥリから王に認められるためには、実績を積むべきだと伝えられた藤丸達。
彼女はギルガメッシュから「彼らの面倒を見るように」言付かっているよう。仕事の斡旋から拠点の準備まで、生活の全てを彼女が手配してくれることに。
彼女曰く「王がここまですることは滅多にない」とのこと。ここで藤丸達は初めて、ギルガメッシュ王が(こんな調子でも)好意的に接してくれていることを理解するのでした。
拠点ではマシュのシールドを利用することで、カルデアとの魔術的回線を繋ぎます。全ての特異点でのこの拠点作成を行わないと藤丸達は存在証明を保てず、特異点での行動に支障が出たり場合によっては取り返しのつかない事態を招く、という設定です。
カルデアにいるダヴィンチとロマニと報告を行っていると後ろに現れたのは、明らかにウルク市民ではない装束の2人組です。
束の間の休息
彼らはギルガメッシュに呼ばれたサーヴァントでした。
牛若丸と武蔵坊弁慶。
日本では圧倒的知名度を誇る悲運の英雄が、揃ってウルクの地に招かれていました。この作品の牛若丸は女性だったということになっています。
もう1人はスパルタクス王。
紀元前古代ギリシアの英雄。圧倒的兵力差を抱えた戦いを善戦で進行させ、今なお当地には銅像などが残る大英雄です。その功績と手腕を買われてか、1話で絶対魔獣戦線の指揮を任されているシーンがありました。
そしてマーリンもまたギルガメッシュ王に呼ばれたサーヴァントの1人。強力な召喚者というのは、ウルク王のことだったのです。
そんな心強い仲間達の存在を知り、彼らサーヴァントと共に束の間の休息を過ごす藤丸達。
「甘いものは苦手です」と大人ぶり言いながら、その欲求を押さえ切れないアナちゃんは可愛い。バターケーキの追撃は、彼女の意志をあえなく崩壊させた。レオニダスには二度と酒を与えるな。マーリンはコロそう。
その夜、マーリンとシドゥリと対話することで、エルキドゥが"既に死んでいる存在"なことを再確認し、現在存在する"エルキドゥではない何か"への警戒を再強化します。
唯一の友を騙る存在に、果たして王は何を想うのか。
それはアニメのどこかで紡がれることでしょう。
疲弊する藤丸 慮るアナ
翌日から藤丸達を待ち受けていたのはウルクの街での仕事回り。
魔獣退治や戦闘への参加ではなく、困っている人を助けて回る慈善事業。つまりまぁおつかいイベント。数をこなさないと先に進めないぞ。これぞTHEジャパニーズRPG!OYAKUSOKU!
ある程度体力の融通が効くサーヴァントである他の面々の中で、ただの人間でしかない藤丸は日ごとに体力を消耗し、明らかに疲弊して行きます。
その上今の彼はマシュのマスターでもある。
サーヴァントを有するマスターは、サーヴァントの魔力消費の一部を分担しなければならず、それは肉体的疲労に繋がって行きます。藤丸は、通常よりも更に疲れやすい状況下で、慣れない仕事に従事しなければならなかったのです。
アナはその事実を知らなかったため、藤丸の話に驚くことになります。彼女は藤丸達と行動を共にしている中で、唯一特異点の聖杯によって呼び出されたサーヴァント。事情が大きく異なっているのです。
何故だかサーヴァントとしての機能的な記憶も持たず、ただ「魔獣を殺さなければならない」という漠然とした使命感から、魔獣を餌に現界を維持し続けていた。そこでマーリンと出会い、藤丸達と出会うことで彼女の運命は大きく動き始めました。
今のままでは行動にも支障が出て、魔力の維持にもリスクがある。アナは非常に危うい状況にあると言えます。そしてその彼女を放っておけないのが主人公、藤丸立香です。
「じゃあ自分と契約すれば…」
「結構です」
自分と契約してサーヴァントになれば、少なくともアナは安定する。その方が良いのではないかと考えた藤丸を、アナは一考さえせずに拒絶します。
「人間達がどうなろうと、私には関わりのないことですから」
藤丸達の目的は自分の目的とは関係ない。その結果に興味もなければ、契約してまで付いていく理由はない。
お得意のつっけんどんな態度と発言。
しかしその行動が彼女が本音を隠すために取っていることは、今までの展開からも容易に想像が可能です。
きっとあんな話を聞いてしまった以上、「藤丸に負担をかけたくない」という気持ちも彼女の中には眠っていた。そう思わずにはいられない1シーンです。
アナの想い
仕事をしている藤丸とマシュの前に、今起きたとしか思えない態度のマーリンが出現。こいつはこの3話で何か1つでも重要なことをしたか?どうせレオニダスに酒を与えたのもこいつ。
マーリンの電報はシドゥリより。仕事詰めの毎日だった彼らに、ここに来て初めての休日が与えられました。ルンルンマーリン。お前はどうせ毎日休んでたみたいなものだろうに。「"休んでいるようなもの"と"休み"は全然違うじゃないか」とか言いそう。うるせぇ。
「あぁ良い機会なんだから、マシュをデートに誘ったらどうだい?♪」
余計なことしか言わないロクデナシ。
その弁に、明らかにドギマギするお2人さん。ラッキースケベに動じない男もデートには動じる。たわけ、性欲ではなく博愛で女性を見たい年頃もあろう。
「この服も…」と言うおマシュさん、服の話はしていない。そもそもそれは服というべきか微妙なラインでもある。大丈夫、君は可愛いから自信を持とう。2019年オタクが考える理想の後輩キャラ第一位(多分)!
そんな2人の心の動きを知ってか知らずか、割り込んできたのはアナちゃんでした。これはファインプレーと言うべきか。きっと君が来なければこの第3話はこのまま終わっていただろうと考えられる。
「お2人は今日手が空いているのですね。それでしたら、私が仕事を依頼します」
そう言って彼女は2人に貯蓄した銀を手渡そうとするのです。
人間達と自分は関係ないと言いながら、ちゃんと人の営みのルールを守って彼らに依頼しようとする。根が良い子すぎるアナ。それを見た、2人はもちろんその依頼を快諾し、彼女が指し示した場所へと歩みを進めます。
「戦闘になりますので、よろしくお願いします」
「え?」
「戦闘…?」
藤丸の意志がもたらすもの
3人が辿り着いた先は、ウルクの地下に張り巡らせた地下通路。
そこに棲みついた悪霊を討伐するというのが、アナが彼らに協力を依頼した内容でした。
ウルクに蔓延している死の病。
体力の落ちた者から人々を衰弱させ、死に至らしめる病気の原因がその地下通路の霊にあると感付いたのです。
彼女がそれに気付くことができたのは、花屋の上にそれが集まっていたからでした。
よく行く花屋だったのか、何かの時に良くしてくれた花屋だったのか、はたまた何の関係もない人々だったのか。アニメからでは分かりません。ですがどうであれアナが、関係がないと断じたはずの人間達を助けるために、率先して誰にも気付かない善行に勤しんだということは変わりません。
「アナさんは優しいですね」
「…違います」
マシュの言葉に反射的にそうではないと言い返すアナ。彼女はそういった感傷的な自分を否定して、何かの目的の為に動こうとしているように感じられます。
「私は――」
何かを口にしようとした時、ただ純粋に自分を見守ってくれる藤丸の顔を見て、再び口を閉ざしてしまうアナ。そして逆に彼に問うのです。
何故、異邦者である貴方が、必要以上にこの時代の人間に関わろうとするのかと。それは目的とは何の関係もない行為ではないのかと。
「…この世界に来てから、ご飯を食べる時や仕事をした時、ふと思ったんだ」
それに藤丸は何の迷いもなく答えます。
「あぁ…俺達と同じで変わらない。この世界で生きている人がいるんだな、って」
どんな時、どんな場所でも、どんな相手とだって心を通わせる。無駄だとか意味がないとか考えない。彼はその精神だけで多くの人とサーヴァントの心を掴み、行動を共にし、多くの冒険を乗り越えた。
「だったら、やっぱり頑張らないとなって思えて…」
凡人が故に、凡人だからこそ、彼は常に一生懸命に目の前のことに挑み続ける。
ただ前を向いて、事象1つ1つに貴賤を設けず実直に歩みを進める。それが彼なりの世界を背負う覚悟なのだと思います。
そしてあらゆることを乗り越えてきて尚そう言える藤丸立香の強さは、アナの心にもきっと"意志"を届けることができたはず。
「…私は人間が嫌いです」
自分と人間は関係ない。今は利害の一致があるだけ。
でも目の前に困っている人がいるなら、助けたいと思った。
そこに理由なんてなく、ただやりたいと思ったから自分は動いて、実行しただけ。だから、それは自分のためでしかないもので「優しさ」とかとは縁遠いものなんだ。
「でもそういう考えは…嫌いではありません」
そうやって自分の行いを"善"から遠ざけたアナは、同じ思想で"善"に寄り添った藤丸の発言と態度に、少し心を救われたのかもしれません。
彼女の意志と目的が分かるのはまだまだ先のお話。でも今の彼女は、藤丸達といることがきっと心地良いと思っている。ならば、今はきっとそれで良いはずです。
おわりに
王との謁見を済ませ、ウルクでの拠点を築いて仲間も集まり、いよいよ大いなる目的に向かってお話がスタートした第3話。
なるべく丁寧な内容になるよう、頭から順に執筆しました。楽しんで頂けていたら幸いに思います。
前半は戦いに次ぐ戦い。
物理的・精神的共に緊迫感溢れる展開が続きました。
そして後半は束の間の平和と流れる日常。
だからこそ感じられるキャラクター達の感情の機微がフィーチャーされた味わい深い1回に。マーリンは死んでください。
ED後に挿入された、おどろおどろしい空間でのエルキドゥ(仮)と"母上"の活動が、今後の物語にどのような影響を及ぼしていくのか。今後とも楽しんで行きましょう。
お読み頂きありがとうございました。
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