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『キンプリ』に始まり男性アイドルアニメもそれなりに押さえてきた筆者。その蓄積を元にして、こちらもチェックして行こうと思います。
『アイ★チュウ』は名前は知っている作品ではありますが、内容やキャラのことは一切分かっていない状態です。
過去の作品も「ミリしら」感想で書いてきましたが、蓋を開けてみるとどこかで表題キャラくらいは見たことがあったということはありました。今回は本当に見ず知らずの作品となっています。
ですが過去の作品も同様に「ミリしら」の状態から視聴を始め、感想文でファンの方々にご好評を頂いてきました。『アイ★チュウ』もそうなってくれたら嬉しいなと思い、筆を執っています。
まずは第1話から見えた全体像を中心に紐解いて参ります。原作ファンの方々は、生暖かい目でお付き合いくださいませ。それではどうぞ。
アイドルを目指す少年たち
「俺はまだアイドルじゃない。
アイドルの卵。アイドルの途中。
俺は…俺たちは――」
この台詞から始まった『アイ★チュウ』は、アイドルになるために走り出した少年たちを追いかけて行く物語となるようです。
アイドルものと言うと、基本的にはトップアイドルを目指して邁進して行くキャラたちを追いかける作品が多い印象。駆け出しから始まっても、その先の大成功が約束されているものだと思います。
一方でこの『アイ★チュウ』を取り巻く空気は他と一線を画していて。あくまでこれから見届けるのは、彼らが「アイドルになって行く過程」になるのではないかと感じています。
全体的に最初から凄まじく光り輝いているキャラが少なく、個性的ではあっても"アイドル"と言うにはいささか噛み合わない面子が揃っているという感じ。どうしてアイドルを目指しているのかどころか、本当にアイドルになりたいのかもパッと見では分からない少年ばかりです。
言うなれば、アイドルという目標までの距離がかなり遠いところに設定されているイメージなのです。それは物理的な設定や事情の話ではなく、受け手が感覚的に「この子たちがトップアイドルとして輝いている姿を想像できない」と思うように創られているといったところでしょうか。
アイドルを目指していながらも、どこかアイドルとは違った方向を向いている。だからこそ、彼らがどうしてアイチュウになったのか、その細やかな感情の機微や動機を感じ取る面白さがありますね。
大胆さやインパクトがあるタイプの作品ではない分、自分なりに「何を感じ取ろうとするか」が大事になりそう。自分の中でしっかりと見るべきターゲットを決めて、そこを自分から掘り下げて味わい尽くすような楽しみ方を意識して行くと良いのかなと思っています。
CDを3,000枚売るということ
彼らが本作にて最初に校長から出された課題。それは「CDを3ヶ月で3,000枚売り切ること」という極めて現実味のある内容でした。
いや、今の状態から彼らがCDを3,000枚売ることも相当な難題ではあるのですが、他作品と比較すると階段を1段ずつ登るようなロースタートだと言えるでしょう。
それ故に彼らの人間味を身近に感じることができるのがポイントです。現実感のある数字は、それだけで他作品とは違ったキャラの魅力を引き出してくれています。
「俺たちの音楽はいずれ世界に轟く。
CD3,000枚なんて通過点でしかない。そうだろう皆?」
例えば「I♥B」というユニットのリーダーらしいノアくんのこの台詞。とても優雅にカッコイイことを言ってくれましたが、実際本当に通過点でしかないというのが笑いを誘う。セオリー通りならこれは、「ドームツアー成功なんて…」くらいのスケールで言ってほしい雰囲気です。
こんなに堂々たる振る舞いをしているのに、彼も所詮はCD3,000枚売るのに試行錯誤しなければならない立場であるということ。これが『アイ★チュウ』の持つオリジナリティなのかなと思います。
ただし、まだ入学したばかりでアイチュウを"楽しむ"ことが一番であるとは言え、自分の子どもを崖の上から突き落とすような仕打ちを受けているのは確かです。荒唐無稽な目標ではないだけで、死に物狂いで努力しないと掴み取れない数字には違いないでしょう。
そんな未来を悲観的に見て自棄になってしまってもおかしくない状況下でも、これだけ明るく元気に振る舞えるキャラクターたちばかりと言うのは先行きが明るいように感じます。
「I♥B」はリーダーに焚き付けられる形で前向きさを取り戻し、「ArS」に至っては課題そっちのけで芸術活動を優先してしまう次第。双子である「Twinkle Bell」は、深く考えずに楽観的な態度を取っています。
楽しいばかりがアイドルではないけれど、"楽しい"がなければアイドルにはきっとなれない。そんな光を感じながらも、目の前に立ちはだかる高い壁とそれに伴う退学の恐怖感。
その双方に板挟みになる彼らが、果たしてどのような選択をして行くのか。それを陰ながら見守って行ければと思っています。
「F∞F」異なる3人を結び付けるもの
第1話にてスポットライトが当たったのは、本作のセンターユニットポジションの「F∞F(ファイアーフェニックス)」です。勢いでつけられたような名前に笑ってしまった。
THE元気系アイドルの愛童星夜を中心に、可愛い系の湊奏多と大人びた魅力を持つ御剣晃のトリオユニット。特性に統一感はなく、それぞれが異なった個性を持つ3人によって結成されています。
夢に突っ走るフレッシュな星夜とは対照的に、奏多と晃の2人は元芸能界出身というステータスを持つ逸材でした。ポテンシャルは相応に高いと言えますが、アイドルとしてそれが活かせるかどうかはまた別の問題です。子役として演じる技術・モデルとして自分を美しく見せる技術と、アイドルとして振る舞う技術は似て非なるものだからです。
その点で言うと、2人はまだまだ人前で自分自身をさらけ出すのが得意ではない様子。完全な素人のはずの聖夜の方が、全力で自分をアピールすることには長けているのが現状です。
人は背負うものがあればそれを守ろうと努力しますし、一度自分でついたイメージを取り払うにも抵抗を持つものです。開幕で行っていた路上ライブのような「一般人に醜態を晒す」とも言える活動は、経験があるからこそ後ろ向きになってしまうところがあるでしょう。
そして何より、彼ら自身が何やら人前に立つことにコンプレックスを抱えた身であることも伺えました。それぞれの分野で名声を得ていたはずの奏多と晃は、過去に何かの原因で挫折してドロップアウトしてしまったようです。
そのせいで2人は、どこか人生における現実を見てしまっているのだと思います。アイチュウという夢を追いかける輝かしい場所に身を置きながら、自分たちに夢を見れていないという決定的な欠陥が今の彼らにはありました。
ただ、それでも彼らはアイチュウとしてエトワール・ヴィオスクール(名前が難しい)に入学したのです。芸能活動に何か遺恨を残しながらも、人前に立つ何かを目指そうとする意志を持っている。それが他の人たちが持っていない、奏多と晃の輝きの源流です。
失敗する恐さを知っている者は、どうしても初めの一歩を踏み出すのに勇気が必要です。ですがそれを果たした先では、過去の失敗はより良い心を形成する財産へと昇華します。どこかで殻を破ることができれば、その経験はより強い力となって彼らの身に宿るはずです。
けれどそれは、独りで抱え続けている限りはきっと乗り越えられないトラウマで。どうして良いか分からないまま、気持ちの整理が完全につかないままにアイチュウになった。そんな気配も彼らは感じ取れています。
恐らく行動することに前向きというわけではなかった。それでも行動したいと思う自分に従った。矛盾する心を持ったまま、今の2人は何とかアイドルを目指す者として歩み出したのでしょう。
そんな彼らを待っていたのは、その心を引っ張り上げようとする新しい仲間の姿でした。行動の先には必ず新しい出会いがある。それが良いものにできるかどうかは、彼らの心持ちに懸かっています。
自分の弱さを知る者たち
スクールに入学して2人とユニットを組むことになった愛童星夜は、ただただ憧れだけでアイドルを目指し始めた"光"の体現者そのものでした。
彼らの過去を知っているわけではなく、それを変に勘繰ろうとすることもない。ただ自分の中にある気持ちだけを信じて、その明るさに周りを巻き込んで行く。目の前にあるものに一生懸命になって、全てを受け入れようとする屈託のない魅力を表現してくれています。
それでいて決して独り善がりというわけではなく。自分の仲間となった2人のことをたった1週間でよく観察して、仲間たちが本当に望むものを届けようとする優しさも持っているのです。
自分だけが前を向いていれば良い。そんなことは微塵も思わずに、共に歩む仲間たちと一緒に前を向いて活動して行きたいと考える。そんな100%の熱意を感じさせてくれる振る舞いからは、とても心地良い清々しさを感じさせてくれました。
反面、気持ちだけで動いている彼は、決して歌も踊りも優秀というわけではありません。圧倒的なカリスマや才能を持っているようには見えておらず、どちらかと言えば"普通"側にくくられる少年なのではないでしょうか。
そして彼はそんな自分に自覚的であるし、自分がアイドルになることは難しいとどこかで感じているように思います。前向きさの中に、どこか自分への諦観のようなものがある。自分の実力を客観視できるのは才能ですが、その過程で自身の限界を自分で自分に突き付けてしまう残酷さも孕んでいます。
にも関わらず、星夜は自分の"なりたい"という気持ちにまっすぐ突き進める強さを持っていました。自分が実力不足であることを自覚しながら、それでも自分の"なりたい"を信じて前を向ける。それが愛童星夜の持っている強さでしょう。
ただまっすぐで無鉄砲な少年なだけだったら、現実を見て知って経験している奏多と晃の気持ちを解きほぐすことはできなかったのかもしれません。自分の弱みを理解しながらも、それを押して輝こうとする星夜だから彼らの心に歌を届けられた。僕はそう思っています。
人間性もスタイルも全く違い、相性も決して良いとは言えない。そんなチグハグに見える彼らは、どこかで心に共通点を持つ3人で。彼だから見せられる断定できない輝きを見せてくれる気がします。
表面的な分かりやすさだけがアイドルの魅力ではありません。深いところで結び付いた異なる者たちの化学反応は、時として他を上回る強く大きな炎を燃やすこともあります。
1人では為し得ることのできない結果も、3人でなら導き出せる。
まだまだ出会ったばかりのF∞Fはこれから交流を積み重ねて、より強く大きく燃え上がることでしょう。彼らのこれからの活躍に期待しています。
おわりに
見て参りましたTVアニメ『アイ★チュウ』第1話。
彼らの始まりの始まりとも言うべき一幕を追いかける物語。このアニメがどこまでを描くものなのかは分かりませんが、それぞれのユニットが抱えるものや目指している場所が見られるのを楽しみにしています。
それなりにアイドルものの感想を書いてきたところもあり、他作品とは違った魅力というのを見つけ出すのが1つの楽しみになってきました。似ているようで異なっているところがあるからこそ、「この作品が好き」というファンがついてきてくれるものですからね。
派手さ重視ではなく、丹念に下から順番にアイドル像を創り上げていく感覚。
それを『アイ★チュウ』を通して感じて行ければと思います。見進める過程でもっと違うものが見つかればそれはそれですね。また記事にできたら嬉しいですね。
都合により2話以降の感想を絶対書けるわけではありませんが、執筆希望の方は記事のシェアやTwitterや質問箱へのメッセージをよろしくお願い致します。あなたの一声で執筆が続けられるかもしれません。
それでは超感想エンタミアのはつでした。またお会い致しましょう。