MEZZO"の関係性
Re:valeの画策(?)により、アイナナ、TRIGGER、Re:valeによる合同ライブの開催が決定。
陸と天の関係性がこじれた昨日の今日と考えると、最高の機会にして最悪の巡り合わせという感じ。この内容に紐付く形で、各ユニット間及び、内部の関係性を辿っていく話になったのが6話前半です。
何だかんだ言って仲良しそうなTRIGGERや、ほぼ初めてとなったTRIGGERとRe:valeの直接のやり取りなど、関係性における見所もかなり多い一話でした。
そんな中で久々にフィーチャーされたMEZZO"の2人の溝は、特にチェックしておく必要があるでしょう。話の中で「実はそんなに相性が良いわけではない」ことは示唆されていたものの、2人だけのシーンはアイナナ結成以降ではかなり少なかった印象です。
謎ぴったんこ○ンカン(冠番組)で見られる2人は、ビジネスパートナーとしての相性はすこぶる良いという印象。こういったついつい突っ込みたくなるデコボコ感こそ、バラエティ番組の視聴層にはウケるというものです。
ですが「律儀にやりたい」壮五と「自由にやりたい」環では、人間的な相性が良いわけではないのはまた事実。特に壮五は「結果として上手く行っているから良いものの、本来はちゃんとやるべきだ」と強く思っているように感じられます。
しかし実際には段取り通りにやれば良いわけではありません。与えられたことをちゃんとやるだけで良ければ、テレビマンはアイドルを起用する必要などないのです。演者は創り手の想像を超える必要があり、その点では環の破天荒さは彼らの大事な持ち味となっています。
もちろん壮五が段取りを守ろうとするからこそ、環の自由さが良い意味で機能するのです。壮五が環を律しようとすることを諦めてしまったら、彼らは人前に立つ者としてのバランスを失うでしょう。
誰しもそれぞれの生き方や美学があり、そうでない者は否定して自分に寄せたくなってしまうもの。けれど実は、それぞれが異なったものを持っているからこそ、2人ともが輝けるというパターンは少なくないのが現実です。
今の彼らはまだ、その役割分担をもって「成功」とする価値観を持ち合わせていません。そこに気付ける経験を得た時、いがみ合いながらも「これで良い」と思えるようになるはずです。
そこに至るまでの過程が、本当に厳しく難しいのが世の常なのですが…。彼らがそこに向かうとしたら、その間にある物語はまた痛烈極まりないものである可能性が高いと感じています。
今回、壮五が出会ってしまった環の妹であろう少女(一瞬、あのヤバいファンまさかの再登場か!?と思った)が残したもの。大きな誤解の火種になりそうな予感がしていて、既に感覚がヒリヒリとしています。
2人の仲のわだかまりを大きくしようと動いている(?)Re:vale 千の動きも気がかりで。彼らを取り巻く人間関係は、まだまだ混迷を極めて行きそうです。
「声」
バラエティ番組で個人として才能を開花させた和泉三月。
実力も体格も一歩及ばずな上、弟加入のお情け(※本人の中の認識)でアイナナに加入した彼も、他のメンバーよりも自分が輝ける居場所を手に入れて。よりアイドルとして優れた存在に昇華しました。
自信は誰よりも人を強くカッコよく見せる、武器であり鎧です。成功を掴めない者は自信を持てぬままドンドンと寂れて行き、成功を掴んだ者はより大きな自信をつけて世に羽ばたいていく。そんなジレンマから脱却する足掛かりを、三月は自分の努力で掴んだのでした。それは並大抵の人間にできることではありません。
しかしその輝きは、それを許容できない者にとってはただただ眩しいだけのものになる。強い光は他の輝きを邪魔し、それ以外のものを埋没させてしまう存在と化すことに繋がっているのです。
当然、そんなことを言う人間は圧倒的少数派です。美しい輝きを受け入れられず身勝手に否定する、その受け手の感性にこそ問題があると言って良い。
「――でもさ、三月邪魔じゃない?」
ですがそれを知ってしまった当人にとっては、どうしても自分が悪いことになってしまう。何故なら見ようによってはそれは事実で、それもまた真っ当な1つの感想に過ぎないからです。
「分かる~。和泉兄は良いから、
陸くんを映してほしいよね~」
「人気ないくせにw
もっと空気読んでほしいよw」
大多数の人が彼を認めていても、そうではない人と出会ってしまったら最後。1の否定は100の肯定を上回って、決して心に消えない傷を残すのです。三月のように元々自分に自信が持てなかったタイプの人間は、なおのこと取り返しのつかないダメージを受けてしまうでしょう。
「…誰にも見つかりたくない」
自分が良かれと思ってやっていたことで、周りに迷惑をかけていた。グループのファンを困らせていた。自分が満足しているだけだった。
彼にとっての一番は、IDOLiSH7に貢献すること。バラエティで頑張っていた目的も、元を辿ればそこに行き着くはずです。自分のおかげで冠番組が取れたと皆に言われて、より気を引き締めて事に臨むようになっていたでしょう。
「芸能人だからじゃない…」
だから役に立っていると思い込んでいた。冠番組で一生懸命やることが、何より一番、仲間のためになると思っていた。
「――嗤われたくない」
でもそれは間違いだった。自分は「できる」と思い込んで、皆を勝手に仕切っていただけの、ただの勘違い野郎だ。周りにお世辞を言われて調子に乗っていた、恥ずかしい奴だ。
きっと、"みんな"がそう思ってる。
そんな自分を恥じて、絶望して。和泉三月は前よりもずっと深い闇の中へと自分を沈めて行ってしまいます。
「…言えるようになったんじゃないのかよ」
それは確かに存在する1つの「声」。決して大きくないちっぽけな「声」。けれど実際に目の当たりにしてしまった、和泉三月にとってはもう変えられない「現実」。
「俺がIDOLiSH7の和泉三月だって…
言えるようになったんじゃないのかよ…」
崩れ落ちた先で、彼はどのような未来を見るのでしょうか。今までと同じようにバラエティ番組で活躍することは、できるのでしょうか。
――パーフェクトな奴等が7人じゃなく、
7人でパーフェクトになろうぜ!
冒頭で陸に言った三月の言葉が、終盤の彼へと帰ってきます。独りで乗り越えるには大きすぎる壁も、仲間と一緒なら乗り越えられる。それができる仲間たちに囲まれた彼の目指す先を、見守って行きたいと思います。
代わりがいるのも、いないのも
家で養生する七瀬陸の元に入ってきたのは、SNSに送られてくるファンからのリプライ通知です。
「もうセンターにもどってこないでください」
彼の元に集まっていたのは、彼を良く思わないアイナナファンからの心ない言葉の数々でした。
そのほとんどが露骨な一織推し。または捨て垢と思われる無アイコンで意味のないIDのアカウント。安全圏から彼を叩くことだけを目的とする、卑劣極まりない悪意の塊です。
4話にて百が指摘したアイドルを苦しめる「好き」の感情。それが3話で一織がしていた心配と重なって、1つの悲劇が巻き起こりました。
現実ではよくある話、多くの人が意識しない些末な話です。けれどその先では、その「声」1つ1つに確実に苦しめられている人がいる。それがしっかりと伝わってくる容赦のない展開に息を飲みました。
IDOLiSH7は7人で1つのアイドル。グループではなく、大好きな人1人を追いかけるファンも多いであろう人数です。そして大好きな人の活躍を邪魔する者は、たとえメンバーであっても嫌いになれる。そういう価値観の人も必ず存在しているものです。
「駄目だ…動揺するな…俺の身体…」
好きを相手に活動する以上、嫌いを受け止める覚悟も必要。自分に向けられる感情を否定することは、彼らに許されることではありません。でも、そんな正論、分かっていたところで受け止められる人などいるはずがないのです。
「一織がせっかくセンター替わってくれてるんだから…ちゃんとお礼するんだから…」
陸は「自分のために、一織が仕方なくセンターになってくれた」と今でも思っているはずです。体調さえ戻ればまた普通に元に戻れると、純粋無垢に思っていたのかもしれません。
でも実際は、それを喜ぶ人もいる。自分のことを邪魔だと思う人もいる。
その現実を目の当たりにして、陸は今後の進退をより複雑に意識しなければならなくなったことでしょう。
2期に入ってから、陸は毎週のように心を打ち砕かれている印象で。1つ1つの困難がそれを乗り越えるだけでも大変なものばかりで、陸はそれを同時に処理することを強いられてしまっています。ボロボロになった精神は、もう原型を留められないほどに変形してしまっているとさえ思えます。
「天にい…苦しいよ…」
どうしようもない状況下。折れそうな心と身体を必死で繋ぎ止めながら、彼が思い出すのは敬愛する兄のことでした。
自分を否定した兄。家族を捨てて出て行った兄。それでも、彼にとっては最高の目標で、何かあった時に助けてくれる、たった1人の兄。
「代わりがいないのも、代わりがいるのも、苦しい…」
受け入れられなかった兄の言葉から、その1つを絞り出して。わけも分からないまま自分の気持ちを口にする。それが今の七瀬陸にできる、精一杯の抵抗でした。
今となっては、兄も、IDOLiSH7も、自分の身体も、自身の心を助けてくれることはない。自分の中にある幻想に縋ることだけが唯一の逃げ道。
何をしたって辛い。どこにいても苦しい。でも、アイドルだけは辞めたくない。
そんな苦境に立たされた陸のことを救ってくれるのは果たして誰なのか。彼はどうやってここから這い上がって行こうというのか。物語の先にある、彼の成長と成功を感じ取れることに期待しています。
おわりに
重いんだよ展開が。
2話同時に記事にすべき内容ではなかった(1週間ぶり二度目)
正直本当に1話ずつ書こうか悩みましたが、何となくこれ以降はもっと2話同時に書くのが厳しい回が続くだろうと思い、意を決してこの2話で追いつくことにしました。
ようやく本放送に追いついてホッと一息。2話同時だとコミカル部分などに言及することが難しかったのですが、7話以降はそういった部分にも触れて行ってあげたいです。
1期もなかなか現実感があって手厳しい物語だった『アイナナ』。2期はもう最初から地獄地獄地獄からの地獄という感じで、地獄好きとしては見ていて大変に気分が良いです(?)とても楽しんで見ています。
1期で積み上げたものを活かした物語として大変に魅力的で、2期は本当に終盤に得られるカタルシスが大きなものになりそうでワクワクしています。
それでは次回からは1話ずつしっかりとオンタイムでの執筆です。皆さんと一緒に楽しませてもらえればと思っています。今後ともこの『HatsuLog』とワタクシはつの感想記事をよろしくお願い致します。それでは。
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