動き出す心
紡の行動によって少しだけ前を向けたIDOLiSH7。その場だけ見れば「一時の盛り上がり」で済まされてしまうかもしれない出来事は、7人の間に新たな交流を生み出します。
中心に1つのピースがはめられることで、バラバラに組み上げられた全てのパズルが繋がっていくこともあるものです。そんな彼らの新しい一歩にも、今回は少しずつ寄り添って行きましょう。
大和の計らい 三月の決意
大和と三月は夜の公園で2人、話す時間を設けていました。
7話にて誰よりも的確に三月の心情を把握していた大和。同じ立場から三月の苦悩を理解する、彼にしか言えないことがあります。思い悩み立ち止まる人に対して、「そっとしておこう」が常に正解とは限りません。最後に乗り越えるのは自分自身でも、過程には道筋を指し示す誰かが必要だと思います。
ナギに本音を吐露して少し気持ちが楽になっていたところに、マネージャーからの全肯定。その流れを経て本当の自分を取り戻しつつあったからこそ、三月は大和の冷静なアドバイスを受け入れることができるようになったのでしょう。
どれかが欠けていても、順番を間違えていても正しい形には収まらなかったはず。多くの想いは実を結び、ギリギリのところで三月を再び奮い立たせました。
「まだ…まだ俺はやれるから」
大和から受け取った"ほどほど"を胸に秘め、これからまた"一生懸命"に。
辛く苦しい経験は、乗り越えることさえできれば何よりも大きな財産になります。アイドル 和泉三月が真に輝くのはここから。今までを上回る獅子奮迅の活躍に期待しています。
一織の判断 陸の想い ナギの思いやり
一織は陸との間にできてしまった溝を何とか埋めようと、彼の気持ちに寄り添って行動しようと努力していました。
しかし彼は元々そういうことが得意ではありません。そうしたいと思っていても、そうすべきではないのではないかという気持ちが邪魔をする。リスク回避を優先してベターな選択をしてしまい、その場におけるベストな選択が取れないのが彼の弱点でした。
その一織を諫めることなく、彼の気持ちに寄り添って本心の後押しをするナギ。一織も陸も、決していがみ合っているわけではないのが分かっているから。ナギは2人の気持ちがしっかりと正しく交わるように、導き諭す役割に徹してくれたのです。
そして溝を埋めたいと思っていたのは当然、一織だけではありません。
「センター"替わってくれた"お礼、何が良い…?」
99%そうではないと思っていても、1%「嫌われているかもしれない」という可能性があるだけで相手とのコミュニケーションを避けてしまう。人間関係とは往々にしてそういうものです。
そんな時に相手から歩み寄ってくれることに、考えすぎてしまう彼がどれだけ救われたことでしょうか。
今はまだその一歩を踏み出し切れたわけではありません。けれどこの経験が今後、和泉一織に踏み出す勇気を与えてくれるはず。
自分の淹れた紅茶に目を向けて彼が思うのは、その気持ちが正しいものだったことへの安堵でしょうか。それとも"無駄に"頭を悩ませていた自分への憐憫でしょうか。
それぞれ違った良さを持つ2人のセンター。
ここから気持ちを新たに、力を合わせてIDOLiSH7のより良い形を実現してくれることを願います。
環の気付き 壮五の優しさ
MEZZO"の環と壮五は、改めて自分たちのことを2人で話す時間を。
環が語る最近の心境は、壮五に新しい気付きを与えました。環がずっと何を言っても聞いてくれなかったのは、彼自身が「どうせ誰も自分のことなんて気にしていないから」と受け入れてしまっていることにあったと、ここで初めて理解したのです。
周りに目をかけられることが当たり前だった壮五は、環の置かれている境遇に思いを馳せることができなかったのでしょう。言われたことはやるのが当然で、感情を押し殺して応えるのが義務。それはとても面倒なことではあるけれど、周りに助けてもらうにはそれが必要なことであると、壮五は自分の人生全てからそれを学んで生きてきました。
でも環は違いました。彼は逆に「誰も見ていないから何をしてても一緒」「誰も助けてくれないから自分で何とかするしかない」という、極狭い世界で自分を判断してしまう生き方をしてしまっていたのです。
先日、大和が環に言った言葉は(嘘ではあったものの)、環にとって「誰かが自分を見てくれている」感覚を初めて持った瞬間だったのかもしれません。だから壮五のために頑張ろうと努力し始めたのだと思います。
最初はたった1人のパートナーのため。その先で多くの人が彼の頑張りを認めてくれるようになり、環は今まで味わったことのない「繋がっている感覚」を理解するようになりました。それが紡の言葉と繋がって、壮五に話してみることに繋がりました。
真逆だと諦めていた壮五も、環のその気付きによって共に気付かされ。彼に真にかけるべき言葉を理解し、改めて彼と向き合います。
「君を見てるよ」
今まで口酸っぱく言ってきた小言を言い換えただけ。
それでも、言い方1つ。それが変わるだけで、壮五が本当に伝えたかった気持ちは正しく環の心に響き渡って行く。
「君の気持ちを分かってる人はたくさんいる。
ちゃんと君は、見守られてるよ」
自分がしてきたこと、周りがしてくれていること。その全てが、四葉環という人間を慮っていることに他ならない。君は自分が思っている以上に愛されているし、皆が君の行動に注目している。
その中で自分は他の誰よりも四葉環の声を細かく聞き取って、救い上げてみせる。共に歩む者として、その感情を決して無下にしない。その想いを、優しく丁寧に環の中に届けて行きます。
「俺は、壮ちゃんに何すればいい?」
そしてその行いには、必ず同じかそれ以上の想いが返ってくるものです。彼もまた周りへの気持ちと想いでアイドルを続けている、心優しい少年に変わりはないのですから。
紡の笑顔
小鳥遊紡は、深夜まで書類作成の業務に勤しみます。
大きなサポートを終えたとて雑務が急に消えてなくなるわけではなく。彼らが活躍すればするほどに、彼女の仕事量も比例して増えて行く。それら全てを彼女が陰でこなしているから、彼らはアイドル活動に専念することができるのです。
皆が皆自分のことでいっぱいいっぱいで、なかなかその存在に気を回せない現状。紡は助けてとも言わず、一心不乱に目の前の仕事に臨んでいます。
「いつも遅くまでありがとう」
環はそんな凛とした彼女に、まっすぐな声をかけて行きます。
それが当たり前で彼女に求められる仕事なのだとしても、ふとした時に向けられる感謝と労いの言葉は何よりも大きな力になる。それはどんな立場であっても同じでしょう。
「マネージャーが俺たちのために頑張ってくれてんの、いつも見てっから」
アイドルが頑張っているように、マネージャーも誰にも言えない悩みと負担を抱えているかもしれない。いない者として扱われる、努力に目を向けてもらえないことに、憔悴することだってあるかもしれない。
「これからも!見てくから!」
それがどれだけ辛く苦しいことか知っている。
そして、そんな時に手を差し伸べてもらえることがどれだけ大きな"光"に繋がるかも、今の四葉環は分かるようになりました。
「ありがとう。ご苦労様です!」
誰よりも軽く自分の気持ちを口にできる彼の、強い実感と成長を伴った重く強い決意の言葉。これを機に、彼の芸能生活はきっと全く違ったものへと昇華して行くことでしょう。ただの異端児ではなく、個性をコントロールできる1人の逸材として、輝きを放ってくれるはずです。
「...はい!」
自分の行動は巡り巡って、最後には自分に返ってくる。仲間に届けた想いは、同じ仲間からの想いとして彼女の元に還元されました。彼女もまた、IDOLiSH7と共に在る存在に違いないのですから。
IDOLiSH7はこれからも7人+1人で新しい時代を築いて行く。これはそのために描かれた大事な1ページ。
この苦難を全員で乗り越えて、輝かしい栄光の舞台を目指します。
おわりに
7話までの地獄を1つの行動によって変化させるという、熱量溢れる進行が魅力的だった第8話。実質3分だった。
積み重ねたものを丁寧に1つずつ解決して行くのも良いものですが、やはり1つの大きなキッカケで全てが同時に動いていく力強さは格別の味。『アイナナ』の方向性を改めて感じ取れた気がします。
それに伴い、今回は読みやすさより熱量を優先したスタイルで記事を書いてみました。原作ファンの方が読んでも、色々なものが感じ取れる内容になっていましたら嬉しいです。
ですが紡の行動は立ち止まっていた者たちに「新たな第一歩」を促したに過ぎません。ここからどう動き、どう解決して行くかは彼ら1人1人の行動と努力に委ねられています。マネージャーは0から1を作り出す存在であり、1を大きくするのはアイドルの役割です。
諸々の問題は解決の糸口を掴みつつあるものの、完全に克服するには経験と時間を要します。その間に新たな問題が噴出してもおかしくないですし、まだまだ安心して見られるようになったとは言えません。
終盤で垣間見えた九条鷹匡の狂気。それに否定も肯定もしない天と、彼らと共に暮らしている理という少女。折り返しを済ませ、まだまだ波乱の展開で楽しませてくれそうな『アイナナ』第2期。次回から気持ちを新たに見届けようと思います。
それではまた次回の記事で。盛り上がってきた!
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