「Re:vale」の歴史
始まったRe:valeの5周年ライブでは、IDOLiSH7とTRIGGERが前座として出演することが決まっていました。
2期のアニメは後半から主にこの練習風景が描写されることが多かったため、この場が集大成という空気感が我々の元にもしっかりと伝わってきました。ところで八乙女チームはなんでその方向性になったのかな?
元々は中座予定だった彼らのパフォーマンスは、本人たちの強い希望で前座に回ることに。
その理由は彼らが全員で用意していたサプライズ演目にありました。なんと今回開始10分足らずで3つものサプライズ!できた後輩たちだ。
彼らが用意していた内容は、Re:valeが5年間でパフォーマンスしてきた楽曲たちをメドレーカバーするというもの。全員で彼らの軌跡を歌い上げることで、その後に控えるRe:valeへ最高のバトンを渡そうと試みたのです。
「僕たちの歌には、5年間の思い出が詰まってる」
それは歌声を失った百に対する激励の歌唱でした。
ステージに立ち、Re:valeへのリスペクトを全身で表現する後輩のアイドルたち。彼らが見て知って、憧れてきたRe:valeは、全て千と百の中に存在しているものです。
その背景には万という知られざる過去が存在していたのかもしれないけれど、そのせいで彼らが目標としてきた存在が陰ってしまうわけではないのです。
Re:valeの2人は知る由もないことですが、このライブに向けて合同練習を重ねてきたことでアイナナとTRIGGERにも様々な変化が起きていて。その中には、合同練習がなければ取り返しのつかないことになっていたようなケースも存在しています。間接的にRe:valeは、直近にあった彼らのピンチさえも救っていると言えるでしょう。
「全部、僕たちの軌跡だ」
「そうだね。千の隣りで歌ってきた思い出…」
輝かしい栄光を手にしながらも、決して威張らず驕り昂らず。常に優しく自分たちを導いてくれた理想の先輩たち。その軌跡は確かに後進の者に根付いています。
そしてそれを知るのはアイドルたちだけではありません。
ここに集うファンたちはもちろんのこと、1曲1曲を愛してくれている世間の人たちも同様にRe:valeに勇気づけられています。
アイナナとTRIGGERが彼らに届けるパフォーマンスには、Re:valeの2人に改めて自分たちのしてきたことの意味を実感させるものとなりました。
「Re:valeはずっと、僕と百でやってきた。
君が僕のパートナーだよ」
これが、百が声を取り戻すのに必要な最後の鍵。誰かに言わされるのではなく、引き出されたものでもなく。自分の本当の気持ちを自分の言葉で表現して、百の心に届けようとしたパートナーからのメッセージです。
下手な装飾や作り上げられた定型句など必要ない。ありきたりな言葉であるほどに、その真意はしっかりと相手に伝わるもの。受け取った全ての想いを胸に秘め、Re:valeは今、復活のステージに上がります。
「――5年間!俺、頑張ったよ!」
「これからも、もっともっと頑張って行くよ!」
「俺、"Re:vale"大好き!
これまでもこれからも、最高のRe:valeを皆に届けます!」
「5年分の感謝を込めて…」
「「Re:valeで"DIs One"」」
Re:valeのライブを終えた3組のアイドルたちは、何故か小鳥遊事務所で打ち上げ二次会に興じることに。密!いや二次会とは言え他になかったのか場所が。おい社長、サイン欲しさにアンタが呼んだのか?(※公私ともにアイドルに人生を捧げているという点で好感度は高い)
このシーン、苦難続きだったアニメ2期でようやく辿り着いた100%純粋に晴れやかなシーンとしてもホッとするものがありますが、やはり「IDOLiSH7が懐石弁当に辿り着いた」というのが、色んな意味で感慨深いものがありますね。
まだデビューもしていなかった頃、期待を込められることしかできなかった彼らが、今ではトップアイドル2組と肩を並べて打ち上げをするまでに至ったわけです。紆余曲折ありながらも、着実に前進してきた結果はここに結実しています。正に「今食わずしていつ食う」と言ったところでしょう。
何の憂いもなく、今この場の"幸せ"を分かち合ってバカ騒ぎできるアイドルたちの姿。不穏なことや痛烈な展開が各話に1回は起きていた『アイナナ Second』において、本当に何話ぶりに見た光景か分かりません。もしかして1期のラスト以来なのかもしれない?そんな馬鹿な?
何と言うか、大人組も酒を飲むと褒め合ったり楽しそうにはしゃぎ回ったり、他人に迷惑をかける酔い方をしないのが良いですよね。酒の飲み方、酔い方には人柄がかなり現れますから、彼らが根っからのエンターテイナーであることがよく分かります。
「万、連絡先教えてよ」
「良いけど、なんで?」
なんでってことはないだろ。
良いけど(即答)ってのも変だし。良いのかよ。色々と気を遣え気を。万理さん恐ろしい子。
「5年間同じアルバム眺めてた僕に酷いこと言うなよぉ!」
でも2人でやってた頃の千は常時こんなだったかもしれないし、それだと若干塩めに対応した方が扱いやすかったと見ることもできます。万理がどうこうではなく、そういう関係性の築き方をしとていた2人と見ても味わい深い。Re:valeは偶然が重なって3人揃った時に、より面白い姿を見せてくれそうです。
そんなRe:valeの元に置かれていたのは、ゼロからのメッセージと思われる1通の手紙でした。
誰が置いて行ったのかも分からず、誰でも作れるようなメッセージカード。故にその不自然さから、ゼロ本人が現れて置いて行ったと解釈されたのでしょう。
実際、Re:valeがそれを本当にゼロのものだと思っていたのかは、彼らの表情からは読み取れませんでした。ですが、どちらにしても試練を乗り越えてゼロの曲をカバーできたことに彼らは満足できている。そのような雰囲気を感じ取ることができました。
誰がどのような目的でどのようにしてそれを置いたのかは分かりません。だからこそ、本当にゼロが置いたものだと考えるのも一興です。
そしてもう1つ。後述する偽ゼロ絡みの問題を、何とかここで終結させたいと考える者がいた。その彼による心遣いだった可能性も、否定できないものだと思っています。
九条鷹匡の歪み
Re:valeがゼロのカバーソングを熱唱している最中。裏で巻き起こった、もう1つの出来事がありました。
会場に現れた偽ゼロの追走劇。こちらもアイドルたちの活躍によって現地での悪だくみが遂行されることはなく、世間を騒がせた一連の騒動も一応は決着という形に収まりました。
その正体は、終盤のシーンからやはり九条鷹匡その人で確定。そして天はそのことを知った上で彼を庇っていたことも明かされました。あと僕が2話くらい前から書いていた予想が全然大ハズレであることも分かりました。当たる方がおかしいからね。恥ずかしくも何ともありません。あとで消します(※ちゃんと残ります)
残念ながら今回は偽ゼロを確保するには至りませんでしたが、問題は逃げられたのではなく「九条天が逃がした」ことでしょう。
リストバンドから電気を消した腕は天であることが示唆されている他、「駐車場の方に逃げた」と言っているのも嘘である可能性が高いと思います(位置取り的に偽ゼロは三月の後ろの扉を通って行ったはず)これらから、天は九条を意識的に逃がしたと考えて良いはずです。
天は九条がどのような経緯で偽ゼロとして活動していたのか、よく分かっているようでした。さらに言えば、その裏には九条の強すぎるゼロへの想いが隠れていることも理解しています。
前回での会話の中で語られた通り、九条鷹匡は「ゼロに裏切られた」と思っており、それが転じてゼロを超えるアイドルを生み出す執着へと繋がっているとのことでした。
しかし実際はそうではありませんでした。九条はただ純粋にゼロが自分から離れて行ってしまったことを気に病んでいる。ずっと自分のそばでゼロに活動を続けてほしかったと思っていて、それが翻ってゼロへの敵意となってしまっているだけだったのです。
だから天はこう思っている。
彼はゼロを超えるアイドルを生み出したいのではなく、ゼロに還ってきてほしいのだと。
それが敵わないから、ゼロ以上のアイドルを生み出すことでその穴を埋めようとしているだけなのだと。
それは九条鷹匡自身も気付いていない真実なのかもしれません。九条がどこかで「ゼロを超えるアイドルを生み出せば、この妄執から逃れられる」と思っていて、そのために天を育てているとしたら。その瞬間が訪れた時に、九条はどんな想いを抱くのでしょうか。
恐らく現実は天がそうなっても九条の心の穴は埋まることはない。彼の心の穴は、ゼロが還ってくることでしか埋められない。どうやら天はそのことに薄々気が付いてしまっています。
「無意識でゼロになるほど、ゼロを求めてる」
天は彼を指してそう口にしました。
それは普通に考えたらあり得ない話ですが、ここまでの九条鷹匡を見ていればそれほどまでに異常な劣情を抱えた人物だというのも理解できなくはありません。
そしてゼロの曲をカバーする者が現れること=ゼロを過去にするということです。
それが自分の手中に収まらなかったRe:valeの千と、その相方の二流アイドルによって為されるとしたら。九条が怒りと執念から正気を失って暴走すること自体は頷けます。その姿を長期に渡って見せつけられれば、天とてその影響を心に受けてしまうでしょう。
自分が彼の要求を満たした先に、彼の幸福があるとは限らない。それを感じながら彼のために歩く九条天の心中に渦巻く感情は、果たしてどのような形をしているのか。それは今の段階では到底想像もつかないものです。
兄弟として アイドルとして
揺れ動く九条天の心に突き刺さるものは、それだけではありません。
「――うるさいな!
天にいはもう家族じゃないんだから!」
偽ゼロを追いかける過程で、陸から言われたこの言葉。これが天の心を九条を逃がすことへと動かしたのだと解釈しています。
陸の言う通り、これは元はと言えば天が自分から言い出したこと。一刻の猶予もない状況での発言だったとは言え、流れを考えても陸の弁の方に正当性があります。
恐らく天は「昔の家族」と「今の家族」を分けて考えているのだと思いますが、言われた側がその割り切りを解釈するのは大変に難しいことです。特に九条天のような若くして物言いの厳しいタイプは、意外と自分にそれが向けられることに耐性がなかったりするものです。
ですから、今回の一件は天にとって自分の発言を省みる大きなキッカケになる可能性があります。同時に「今の自分の家族が誰なのか」を感覚的に理解させられる瞬間にもなったことでしょう。
偽ゼロはアイナナやRe:valeだけでなく、TRIGGERにも間接的な害をもたらした存在です。正義に則るならば、いかなる理由があれ捕縛を最優先しなければならない相手だと言えます。
しかし天はそれが分かっていながらも、彼を逃がすことに協力してしまいました。これは、それだけ天が今の父親のことを家族として大切に思っていることの裏返しだと考えます。
そして九条天は、有事が起こった際には公的な被害よりも家族の身を守ることを優先する少年だったこともここで分かるのです。それだけ今の彼は、家族を失うことに対して敏感になっているのかもしれません。
陸から「家族ではない」と突き放されたことで、"九条"という家柄への執着が強くなり。その感情が、彼自身がどこか自分の中で曖昧にしていた部分を変化させるに至りました。
それでも、だとしても彼は偽ゼロを逃がすべきではありませんでした。完璧を目指して行動する九条天が"情"だけを理由に行動したこと。これはきっと、彼自身の心に大きな禍根を残す結果に繋がっているのではないかと思います。
九条鷹匡の思いを汲んで、彼の想いを叶えるために必死に頑張ってきた九条天。その行いが実は無意味だったかもしれないと悟ったことは、彼のアイドルとしての振る舞いにも影響を与えてしまうのでしょうか。
彼の心の中には、まだまだ不安定な気持ちが渦巻いている。そう思えてならないのです。
「DiSCOVER THE FUTURE」
理のレッスンを続けるために日本を離れた九条。
経緯はよく分かりませんが、天は独り日本に残されることになりました。
それを少し寂しそうな顔で見送る天の姿からは、今の家族を大切に想っていることが伺えます。
「天にい!」
そんな彼の元に現れたのは、自分を「もう家族じゃない」と言い切った1人の少年です。
「天にいに言われたこと、何回も考えたけど
俺はアイドルを辞めないよ」
口では天を突き離しておきながら、やっぱり「天にい」呼びがやめられない。いつまでも兄のことが大好きで、いつまでも目標にしている健気な弟。その七瀬陸の存在が、この時の九条天の心をどれだけ軽くしてくれていることでしょう。
「まだまだ未熟だけど、全力で頑張って、
天にいの認めるアイドルになってみせる!」
それでも言ったことは無かったことにはならず、言われたことも同様に無かったことにはならない。以前よりも少しばかり、天の心には陸との距離感が生まれているような気がします。厳しいことを言ってばかりだった天が、優しそうな顔を向けるのが逆に痛々しく映るからです。
それを「天にいは怒ってない」と解釈して、無邪気にキラキラとした目を向けてしまう。この弟も、どうしようもなく根がまっすぐで光に満ちていて。どこまで行っても彼らが血の繋がった兄弟であることを感じさせてくれるのです。
「俺が約束を守れるアイドルになれたと思ったら、
チケットを買って俺に会いに来て!」
誰が本当の家族であるか。誰のどの気持ちを汲んであげるべきなのか。複数の家族を持つ天にとって、簡単に割り切れる問題ではありません。同様の経験でもない限り、その選択を心から理解してくれる人に出会うこともきっとないでしょう。
その九条天の気持ちを知りもせず、七瀬陸はアイドルとしての純粋な気持ちを一生懸命に伝えてくる。きっとそれは、九条天という人間にとって大きな救いとなるものです。
「必ず、天にいを俺のファンにしてみせるから!」
兄弟であれ、アイドルであれ、彼の持つ敬意と情愛の気持ちが変わることはない。
共に認め合い、励まし合い、助け合い。時には共に傷付け合いもする。天の前に堂々と立っているのは、そんな何者にも替え難い、唯一無二の大切な存在です。
ゼロアリーナのこけら落とし公演を巡る大きな大きな物語。
自室で言われるがままだった七瀬陸は、一回りも二回りも成長して。人知れず消沈する九条天の心に手を差し伸べました。
彼ら兄弟の未来は、まだまだこれから見つけに行くべき物語。1つの終わりは1つの始まり。「DiSCOVER THE FUTURE」。新たな物語が描かれるその日に想いを馳せながら、今はこの安寧を享受して前へ進みます。
おわりに
というわけで『アイドリッシュセブン Second BEAT!』の感想もこれにて全話終了となります。前半は2話で1記事でしたが、何とか最後まで書き切ることができました。お読み頂いた皆様ありがとうございました。
そしてラストですぐに発表された3期製作発表。
僕も新参者として非常に嬉しいですね。この物語をアニメで追いかけることができるのが決まったわけですから。
個人的にこの最終回の展開は「九条天の心をめちゃくちゃに引っかき回して終わった」という印象が強かったため、3期への引きが新キャラによる九条天への宣戦布告だったのはかなり腑に落ちました。今回はそれも踏まえて、「先の展開をアニメで見られる」ことを意識した感想を書かせて頂きました。
九条天をはじめとしたTRIGGERの面々は、持っている要素の濃さの割りに掘り下げがまだまだ行われていないのも事実。ここから彼らのさらなる輝きが見られるとすれば嬉しい限りです。
そしてアイナナにおいても大和の身辺情報や、今回はなし崩し的に乗り越えただけ(解決はしていない)のMEZZO"の関係性や過去など、まだまだ見てみたい内容はたくさんあります。
2期でも「書き切ってくれた!」と感じているわけではないので、また新しい物語で彼らに出会えるのが楽しみです。
途中からの執筆ということで『アイナナ』の感想を書くかどうかは本当に悩みましたが、蓋を開けてみたら本当に見て良かったと思えました。それもこれも執筆要望を一昨年から送ってくれた方々のおかげですね。ストーリー重視で他の作品とも違った書き方になり、良い勉強にもなりました。
どのような形になるかはまだ分からないものの、また3期で皆様にお会いできたら嬉しいです。ひとまずはこれで『アイドリッシュセブン』の感想を締めさせて頂きます。
また別の作品及び、『アイナナ』関連の記事でお会いできましたら幸いです。またいつの日か。本当にありがとうございました!
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