ダイスキリフレイン
「みんな準備はいいですか? せーの!」
「ダイスキ!」
一条シンの「ダイスキリフレイン」は彼の優しさと温かさがいっぱいに詰まった一曲。吹っ切れた笑顔で皆への"愛"を、等身大の言葉で届けてくれました。
非常に穏やかで主張の小さい音使いのメロディを支えるようにクラップ音が響き渡るのが特徴的で、楽曲からも"皆で創るショー"であることが伝わってきます。
最初のキャラソンである「Sweet Sweet Sweet」から地続きになっているように感じられる歌詞に、明らかに大きな自信を得た堂々とした歌唱。精一杯でどこか粗削りな歌声が魅力的だったシンから大きく進化した、人の心に届けることを意識した歌声も相まって、彼の成長を余すことなく体感することができます。
そして何より凄かったのがダンスの圧倒的なキレの良さ。曲調以上に激しく細かいところにまでこだわった振り付けは、誰よりも難易度の高いダンスを踊っているようにも見えました。
『スッスッス』の劇中で「シンとルヰの実力は互角」と仲間達が檄を飛ばすシーンがありました。僕は最初このことについてPKCの結果を参照し、大きな違和感を覚えたことを記憶しています。過去の成績を考えれば、あそこまで仲間達が堂々と構えられる状況とは決して言えなかったはずです。
ですがこのプリズムショーを見て、一条シン個人が多くの研鑽を積んでレベルアップしたこと、スタァとして今まで以上に絶大な信頼を得る存在になっていたことが一目で分かりました。だからあの時彼らはあんなにも余裕を持つことができたのでしょう。
そんな彼らはあの時、そのシンのショーを楽しみにしていたのだと思います。そしてそれが行われなかったことに心を痛めたに違いありません。
だからこそ皆は何としてでもシンをこのステージまで導いてあげたいと思った。誰よりもシンのショーを見たいと思っていたのはきっと、エーデルローズの仲間達。
Can you catch me?
\Yes Yes I can!/
Can you hug me?
\Yes Yes I can!/
その期待に応えるように全ての想いは彼のプリズムショーに乗って、我々の心に届きます。「大好き」の言葉に彩られた、一条シンの全力の想いを持って。
大好き!大好き!大好き!say!
くり返し伝えたいよ
"愛してる"ではなく"大好き"で。
一条シンができる最高の想いを届ける言葉は、それしかない。どちらが上とか下とかではなく、一条シンにはこの言葉が最適で、その言葉だからこそ伝わるものがある。それこそが何よりも尊い煌めきになります。
想いを歌に乗せて、一条シンが飛ぶ渾身のプリズムジャンプ。
「シン・無限ハグ――」
それは彼の初めて飛んだジャンプにして、今や彼の代名詞でもあるシン・無限ハグ。でも今回はそれだけではありません。
「――Together!」
そう、ハグは1人でするものではない。
2人で愛を確かめ合うものだから、彼はそれを送るだけでなく、共に分かち合うことを望んだ。その時間を共有して、同じ"大好き"を感じることを求めた。
だとすれば我々もその想いに応えなければなりません。
\シン・無限ハグ Together!/
無限ハグは元来「多数の者を愛するが故に1人の者を愛することができない孤独なプリズムジャンプ」とされてきました。複数の者に想いを向けることはできても、その全てから平等に愛を返されることはないということでしょう。
そんな中で一条シンは"その全てを受け止めること"を選びました。それが実際に可能なことなのかは分かりません。
でも彼はその気持ちをプリズムジャンプに仕上げたのです。可能とか不可能とかは関係ない。そうしたいと思ったからこそ、彼はただそれに向かって空を舞う。プリズムジャンプは心の飛躍!
全ての観客から無限ハグを返された一条シンは煌めきのオーバードーズを起こしたのか、そこでショーは一時中断。暗転して静かになった先は、最初を思わせるあの場所です。
「…ごめんなさい」
8人目の君の空
暗闇の中で行われるシンの告白。
今までのシンの境遇を考えると、"必ずしも良いことが起きるとは限らない"。
「僕は今日、皆さんに煌めきを届けるつもりでショーをしているけど…」
その可能性が心の片隅に残ってしまうからこそ、この時間を固唾を飲んで見守ってしまうところがありました。シンはきっと良い言葉を届けてくれると確信しているけれど、それを彼の口から聞くまでは安心することはできない。
「逆に皆さんから、沢山の煌めきを貰ってしまいました」
照れ顔でそう漏らすいつも通りのシンの姿に、皆が「だよねだよねそうだよね!」という安堵や嬉しさが入り混じった気持ちになったはず。そしてそんなシンの姿から僕達は、より一層大きな煌めきを受け取ることができたのです。
「ラストはみんなで元気に歌ってね!」
SePTENTRIONを含めて皆で踊るラスサビから受ける多幸感はまた格別で。紛れもなく「身も心も全てを一条シンに捧げそうになる」プリズムショーがここに体現されました。
大好き!大好き!
無限にループのダイスキリフレイン!
思えば僕もまた、4年前に一条シンくんを通してプリズムショーを知った1人の人間でした。どこまで行っても彼の原点は僕達の原点でもある。『KING OF PRISM』はそういう作品としてあの時に始まり、我々の目に留まりました。もっと前からプリズムショーを知っていた方々も、全く新しい『キンプリ』の煌めきにまた魅了されたことと思います。
君と一緒になってこの作品と共に歩み、ずっと応援し続てきたわけだから。エーデルローズの仲間達と同じくらい、僕達も一条シンのプリズムショーが見たかった。あの時のショーがただただ悪いものだったとは思わない。でも、一条シンのショーが見られなかったことはやっぱり悲しかった。
8人目の君の空
そんな彼が全身全霊の煌めきを持って、我々を"8人目"として迎え入れてくれる。それがどれだけの意味を持っているか、それはきっと彼にさえ分からない。我々にしか理解できない感情でしょう。
ありがとう一条シンくん。
君に出会えて本当に良かった。僕達にプリズムショーを教えてくれて、本当にありがとう。
そう心の底から感じさせてくれるプリズムショーでした。
「最後も一緒に! せーの!」
「ダイスキ!」
一条シンの光る瞳
ショーの途中で一条シンの目が赤く光ったことについて、所見を述べてほしいというリクエストがあったためこちらに併記します。
僕は正直、最初はあまり深く考えませんでした。
封印されているとは言えシンの中にシャインはいるわけだから、煌めきに反応することくらいはあるのだろうと解釈しました。
ですが今回で「完全にシャインが封印されているのにシンがショーをできている=その煌めきは完全にシン由来のものである」となるはずだったのに、シャインを思わせる描写が入ったことで「結局シンのショーは全てシャイン由来の煌めきによるものである」可能性が残ってしまったということですね。
これは11話の感想で僕が記載した内容にも重なりますので、あれからアップデートされた情報を含めた現在の僕の考えを書いておこうと思います。
何故"赤い方"なのか
この点についてまず参照しておかなければならないのが、公式設定資料集の監督Q&Aで語られている「あの11話のジャンプもシャインの力ではなくシンの力で飛んでいるかもしれない。それはわからない」という回答です。シンのジャンプの力の所在については「"わからない"が正解」とされています。
これを加味して僕が気にしているのが、シャイン憑依時に光る彼の瞳が"赤い方"だということです。
そもそもあの手の身体乗っ取りが行われる作品で瞳が光る場合、憑依者の意識が色濃く出ている方が鉄則です。ですので、普通に考えればシャインの場合は金色の瞳が光るはずです。
しかしシンとシャインでは互いの一致している要素である赤い瞳が輝きます。これは最初に見た時から、個人的にずっと引っかかっていた点です。
そこから『ベストテン』での演出と監督の発言を踏まえて考察するならば、シンとシャインの煌めきには何かしらの相関関係があり、赤い瞳を通じて互いに力を引き出し合える関係にある…と帰結することができます。
シャインが封印されたことでシンがジャンプを飛べなくなったのも、シャインとシンの煌めきが完全に結び付いてしまっている(片方が失われるともう片方も引き出せなくなる)と解釈できますし、逆に現在シンがショーを行えるのはナナイロノチカイがシン主導の封印であるため、実質的にシャインを掌握していると見ても良さそうです。
かつては人を感動させるショーができていたはずのシャインが、何もできなかったはずの封印期間に脅威的な力を有したのも、2人の煌めきが乗算されておかしくなった結果であるとすれば辻褄も合います。
対してシンはまだ自分の身に宿るシャインの存在を認知していないため、シャインと紐付いた自分の力を扱うことはできても、意識的に彼の力を引き出すことはできないのだと思います。
11話のジャンプがシンとシャインの煌めきが混同された状態で行われているなら「わからない」が確かに"正解"になりますし、僕は現在ではこのように考えています。
ちなみに監督Q&Aにて、シャインの宿主にシンが選ばれたのは「たまたま」だと断言されているので、シン個人の煌めきや適性が異常に高いものかなどは不明なままです。
これは「だから平凡」というわけでなく「たまたま凄かった」可能性も残る回答です。現にシャインはシンの身体に執着があるようなので、シン自身に特別なものが宿っている可能性は高いでしょう。その辺りが紐解かれる日が待ち遠しい限りです。
この項の全ての記載が個人的な考察であり、憶測の域を出ません。画面上で展開された内容だけで読み取ったと言うには無理があります。参考程度にお使い下さいませ。
8人目が生み出した物語
『ベストテン』は、皆が作り上げたランキングなのに、その中に1つのストーリーが出来上がっている。
舞台挨拶でキャストの方々このように発言していましたが、本当にその通りだと思います。
オープニングに相応しいユウのプリズムショーがSePTENTRIONを完成させ、観客のテンションを爆上げします。
その後にタイガ→シン(シャイン)→ユキノジョウ。前半を彩ったソロショーは、比較的に見てビジュアル重視の"カッコイイ"プリズムショー。彼らのソロショーを勢いで一気に楽しむことができました。
休憩を挟んだ後はレオ→カヅキ→ミナトと、中盤で大きく感情を揺さぶられる"エモい"ショーが続き細やかな気持ちを引き出されます。彼らのストーリーを思い出しながら感傷的になったところで、再び訪れるのが例の語学講座です。
唐突に青森の方言(※タイガ達は津軽弁話者とのこと)をフィーチャーするという狂気に触れて一笑いした後には、新規映像となるシンのプリズムショーが幕を明けます。このショーには、ここまで追いかけてきた多くの人が涙を流したことでしょう。
中盤から後半にかけての感情の揺れ動き、泣いて笑ってまた泣いて。短い時間で急速な感情のコントロールを迫られるこの感覚は、正しく『KING OF PRISM』の真骨頂。
立て続けに始まるベスト3。
皆大好き、最も何も考えず感じるままに盛り上がれるカケルのプリズムショーで、ぐちゃぐちゃになった感情を解放して一心不乱に応援をキメる。ご唱和ください。「天然ガスが出たァー!!」
会場の熱気がフルボルテージになったところで訪れる、珠玉のユニットソング「ナナイロノチカイ! -Brilliant oath-」。
物語中ではストーリー進行の都合でショーが途中で分断されてしまいましたが、本作で流れるのはそれを華麗に繋ぎ合わせた"完全版"。見れば見るほど「途切れないバージョンが見たいなぁ」と思わされた彼らの誓いが、本作にて待望の完成を迎えました。
今回のランキングでは奇しくもSePTENTRION全員のソロショーがランクインしており、2位で「ナナイロノチカイ」を見るお膳立てはあまりにも完璧。改めてこの曲の素晴らしさを体感することとなりました。
そしてベスト1。
THE KING OF PRISMの栄冠を手に入れたのはもちろん、我らが速水ヒロの「pride -KING OF PRISM ver.-」!おめでとう!
素晴らしいショーで魅せてくれた後輩達だけれど、まだまだこの場所を譲るわけには行かない。皆の心を最も輝かせることができるのは俺だ!そう言いたげに披露されるヒロのプリズムショーは、PKCで見た時はまた違った感動を齎してくれました。
見ようによっては予定調和。安定の1位とも言えます。誰もがこの結果に収まるだろうと感じてはいたでしょう。でも、これだけ完璧な流れで盛り上がったその上にやっぱり速水ヒロがいた。
全員のショーが順位を付けられない"勇者"であったのは当然。それを心から再確認した上で、決めなければならなかった"勝者"の座に現プリズムキングの彼が就く。
これぞ現在の『KING OF PRISM』のあるべき姿なのではないでしょうか。
もちろん、今回惜しくもランクインできなかったオバレのユニットショーやシュワルツローズの面々も等しく勇者なのは言うまでもなく。週替わりルートでは「彼らが決して劣っていたわけではない」と誇示するような編集が徹底されていました。
ブルーレイが発売した暁には、全てのキャラのプリズムショーが平等に見られる作品になるはずです。物凄く全てのファンに配慮が行き届いた『ベストテン』であったと思います。
この作品を応援して盛り上げてきた"8人目のスタァ"だからこそ、この場に体現できた物語がある。
誰かの意志ではなく皆の意志が折り重なって生まれた1つの奇跡。
それがこの『KING OF PRISM ALL STARS プリズムショー☆ベストテン』という作品なのでしょう。
おわりに
『ベストテン』は間違いなく1つの区切りとして製作された映画だと思います。今後も近いうちに新作が創られるのであれば、こういった映画はそれらを終えた後に創られるはずです。
次の予定がまだ無いからこそ、まずここまでを総括した作品を。その想いが形になったかのように、この映画はここまでの軌跡を皆で確認できる場所になりました。
しかしながら、この映画を観た大多数の人に募った感情は「終わったー…」ではなく「やっぱりまだまだ続きを魅せてくれなければ困る」という製作陣への強迫めいた要求ばかりでしょう。
確かに現時点で『キンプリ』は大きな区切りを迎え、一編通りの結末を迎えたのは事実です。でもまだまだ見たいものが沢山ありますし、そのための伏線も投げられています。
今後とも作品が続いて行けばこの結果を更新するような、ヒロから王座を奪い取るようなプリズムショーを見ることができるかもしれません。それをさらに超えるプリズムショーを、キングの名の元に披露するヒロがいるのかもしれません。
終盤で披露された7人の仕事への妄想も実現される未来があるかもしれないし、できれば全部見てみたい見せてくれと叫び声を上げたくもなる精神状態です。
『ベストテン』はそれらへの期待を高めるだけ高めまくって幕を引きました。終わりとして最高の映画でしたが、同時に新たな始まりに盛大に着火して去っていったと言って過言ではありません。
「生まれ変わっても22世紀でハグしよう!」
する。するけど、可能なら生まれ変わる前に21世紀でもっとハグしたい。その日が来ることを切に、切に願っています。
頼むぞ菱田ァ!!!
お読み頂きありがとうございました。新作の感想でまたお会い致しましょう。