『キンプリSSS』全話感想を書いた僕が『キンプリ』にドハマりした理由(経緯編)
『キンプリSSS』全話感想を書いた僕が『キンプリ』にドハマりした理由(内容編)
『キンプリSSS』全話感想を書いた男の『KING OF PRISM』シリーズ思い出語り。2記事に渡って初作『キンプリ』にハマった理由をお届けしました。
3記事目となるこの記事からは、2017年に公開された続編『キンプラ』こと『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』についてです。
絶望的状況から大復活を遂げ、初作を上回る予算で製作が敢行された『キンプラ』を僕がどう見て、何を感じ取ったのかを語って参ります。
『キンプラ』最初の記事となるこの記事では、『キンプリ』から『キンプラ』までの間の思い出を、僕の最推しである速水ヒロの存在に絡めて語って参ります。僕の速水ヒロ観も多分に含まれた内容となります。
作品はもちろんのこと、速水ヒロというキャラの魅力が伝わるような文章にまとめられるよう努めます。よろしければ最後までお楽しみ下さい。
目次
見たいものが多すぎた続編
映画館で10回ほど『キンプリ』を鑑賞。
『レインボーライブ』を2周し、完全に出来上がっていたタイミングで僕は、続編である『キンプラ』の製作告知を聞くことになりました。
あれほど爆発的に盛り上がったのだから「当然あるだろう」と思ってはいたものの、実際に「あの物語の続きが見られる」と決まった時の喜びは格別で。今でもそのことは覚えています。
しかし、いざ決まるとなると少し贅沢な困り事を抱えてしまう自分がいたのも事実でした。
当時を共に過ごした人達には分かってもらえると思うのですが『キンプリ』の続編では、とにかく見たいものが多すぎた。
『キンプリ』の登場人物だけでも「速水ヒロとpride、オバレのその後」「ストリート系の決着」「一条シンと如月ルヰの物語」「新入生組の活躍」「聖と仁の確執」等々…挙げ出せばキリがないレベル。
加えて『RL』を完走した当時となっては、彼女達の2年後の姿や活躍も可能であれば見てみたいと思わずにはいられない。
副題の「-PRIDE the HERO-」を見れば間違いなくヒロの話であることは分かるものの、だとしたらカヅキとアレクはどうなる?作品上の主人公であるシン君の立場、新キャラ達の出番は?そもそも本当にヒロがプリズムキングになるのだろうか?と疑問は尽きない始末。
一作目と同じく60分程度の尺だとしたら、この際限ない情報から何を選び抜き、どう描くというのか…。はっきり言って想像もつきませんでした。
でも、そんな中で僕が個人的にどうしても何よりも優先して見たいと思ったもの。
それは「速水ヒロが自分の力でキングになる姿」その1つでした。
『RL』を完走してからというもの、僕はすっかり速水ヒロの魅力に取り憑かれてしまっていたのです。
速水ヒロの描いた物語
僕は重度のストーリー脳なので、男女問わずキャラを見た目や要素で好きになることがあまりありません。物語の中でキャラがどう活躍したかによって、最終的にいわゆる"推し"が決まっているという趣向です。
その観点で『キンプリ』を初めて見た時のヒロの印象は「不幸な過去を持つ人」程度で、正直言って登場人物の中でも取り分け記憶に残っていない人物の一人でした。
後述しますが、実際『キンプリ』における速水ヒロは驚くほど何もしていないので、初見でこの感想になるのは当然ではあります。
しかし『RL』を見ればその印象は一変。
女児向けアニメでありながら「実はお前が主人公の物語なのでは?」と言いたくなるほど、色々な意味で濃密な活躍を彼は見せてくれました。
どう濃密なのかは語るに及ばずですが、まだご存じない方は是非見て確かめてほしいですね。恐らくどこかの側面では確実に、全人類の想像を超える動きを彼は見せてくれるはずです。
速水ヒロは様々な障害や自分の置かれた環境、自身の弱さを乗り越え、時に人を傷付け周りに迷惑をかけまくりながらも、人としてもアイドルとしても成長を遂げ、コウジとの和解を果たします。
その紆余曲折あった過程を思えば、彼の物語はあの『RL』全51話を持って、大団円を迎えたと取ることもできます。
ですが完結から3年が経過した2016年、『KING OF PRISM』の蓋は開かれ、彼らの物語は新たなスタートを切りました。
だとしたならば、ヒロには是非その先を超えて行ってほしい。最高の到達点を僕らに見せてほしい。『キンプリ』から彼を知った僕は、心からそう思っていました。
何故なら速水ヒロというキャラクターは、『RL』では解決し切れなかった大きな人間的問題を抱えていたからです。
低すぎる自己評価
「俺は自分の力では何もできない」
速水ヒロは心からそう思っている。
『RL』と『キンプリ』を経た僕は、彼のその不当に低すぎる自己評価が何よりも気になっていました。
「自分がアイドルでいられるのは、ファンがいてくれるから」
「自分がアイドルでいられるのは、コウジの歌があるから」
「自分がアイドルでいられるのは、法月主宰が裏で手を引いているから」
彼はその自分の功績を「自分の才能によるものである」と思ったことが、一瞬たりともないように見えていました。
誰かが持ち上げてくれるから、何もない自分がアイドルでいられると信じ切っているようです。現に「コウジには圧倒的な音楽の才能が、カヅキには類い稀なダンスの才能があるのに、自分には突出したスキルがない」と思っていることを(全裸で)匂わせる会話が『RL』には登場します。
だから彼は、未熟で独りよがりだった頃には誰の期待にも応えることができない「絶対アイドル愛・N・G」を飛びました。
そして物語後半で全てを乗り越えた先では、ファンの期待を全て乗せた「スターライトエクスプレス」を飛びました。
2年後となる『キンプリ』ではさらに成長し、その期待への返礼となる「無限ハグ with LOVE」を飛びました。
期待に応えることさえできなかった彼が、『RL』では全ての人の期待に応え、それにお返しまでできるようになった。
その全てが彼の成長であり、到達点です。
ですが、彼にはここまで来ても未だにずっと適えられていないその先がありました。
自分から動くことがない少年
実は速水ヒロは「自分から何かを届けること」に一切挑戦していないのです。
誰かが求めてくれるから、それに応えたい。
誰かが必要としてくれるから、自分は行動する。
そういった他人の気持ちを常に優先して動いているきらいがあり、その行動理念の根底として「自分には何もない」という根本的な自信のなさがあるように思います。
『RL』の行動も「ファンに望まれているからステージに立つ」「法月主宰の期待に応えるため絶対アイドルを目指す」「べるを守りたい」「母親が自分のところに帰って来られるように」というように、行動の先には常に他人の姿があり、「自分がしたいからする」というものが一切ありません。
もちろん欲求らしい欲求は存在するし、それが見える場面もあるのですが、それが行動にまで現れることはありませんでした。ヒロにとってそれは優先すべきものではなかったようです。
補足ですが、唯一ヒロは『RL』でコウジ絡みについてだけは、常に自分の感情と欲望を優先して行動しているように見えます。
ですが、その欲求のベースにはコウジの裏切り(と思っている)に対する怨恨と「コウジの歌を世に広めるため」というコウジへの善良な気持ちが混ざり合ったことで生まれた歪みが位置しているため、ヒロがコウジという人間に動かされたのは確実です。それについて単純に「自分の感情のみを優先して行動した」と言い切るのには疑問が残ります。
極めつけは『キンプリ』にて。
コウジが渡米を決めた後のことについて、聖に問われた時の
「もちろん、プリズムキングを目指します。"氷室主宰の悲願"ですから」
という回答。
PKCに挑む理由すらも「聖がそれを望んでいるから」であり、自分自身の欲求や前向きな気持ちによるものではありませんでした。
速水ヒロはどこまで突き詰めても、行動や解釈の中心に自分自身を置くことができない人間だったのです。
速水ヒロと「pride」と神浜コウジ
この自己評価が低いという事実が『RL』にて執拗にコウジの歌に固執したことにリンクします。
彼が自身で「誰かに作られた偽物」と評したアイドル活動の中で、唯一自分の意志で選び、その存在にこだわったのが神浜コウジとその歌でした。
つまり彼にとってコウジの歌は「自身を"速水ヒロ"に留めておいてくれるもの」であり、その全てがアイデンティティその物と言って差し支えない存在になっていたと考えます。だからどんな手を使ってでもコウジの歌でデビューしようとしたし、コウジの歌以外をリリースしようとはしなかった。
このような観点から僕は、ヒロは根源的にはコウジにこだわったのではなく、コウジの歌にこだわったのだと思っています。それが結果的にコウジという個人への執着にも繋がることになった。
これはもちろん「実はコウジ個人のことは何とも思っていない」というような話ではありません。あくまで、最も根源的なメンタリティの話です。仮にヒロが実在する人物だったとしたら、彼自身も自覚がないようなレベルの土台について語っています。
ですから、コウジ個人への執着やアイドル活動にかける想い、その他の人間への優しさなど含む、速水ヒロという人間を構成する表層的要素の全ては、等しく本物であると思います。ここは誤解なきよう受け取って頂けますと幸いです。
コウジという人間が先かコウジの歌が先か。
その解釈は様々あると思いますが、そもそもコウジに声をかけた理由が「彼の作曲した歌をたまたま目にしたから」だったことを踏まえても、歌先行だったとするのが自然だろうと僕は読み解きました。
だから彼はコウジが渡米してしまうことにはギリギリ耐えられた。その心根は悲しみに満ちているとしても、自分のそばには「コウジの創ったpride」がいてくれたから。
コウジがいなくなっても、彼の魂と歌は共にある。
それだけを心の支えにして、彼はPKCに挑むつもりでした。
「prideが使えない!? 一体どういうことですか!?」
ですがそれが叶わないことは、予告の時点で既に確定しています。
彼は唯一の心の支えであるprideも他人に奪われ、コウジを失い、心の拠り所になっていたOver The Rainbowも活動休止、カヅキもエーデルローズを脱退。速水ヒロは大会を前にして横に並ぶものを全て失ってしまうことが、続編への前提情報として公開されていました。
「もうコウジの歌を歌うことは、出来ないのか…?」
続編を迎える前から、彼が絶望的に窮地に立たされることはほぼ確定的と言ってよく、続編で"prideを奪われた速水ヒロ"がどれほど悲惨な目に遭うのか想像するのが恐ろしいほどでした。
特にヒロに対し大きな思い入れがなかった頃、僕は「prideが奪われる」ということを、作品にとって「ストーリー上の重大な問題」としか捉えていませんでした。
しかし深めれば深めるほどそれが「速水ヒロにとっては存在を揺るがしかねない危機的大事件」であることが分かるようになりました。
その丹念に感情の機微が練り込まれた底知れない物語性を知れば知るほど、僕はどんどん『キンプリ』にのめり込んで行くことになったのです。
"他人の前で最高に輝く才能"の持ち主
しかしながら『RL』を見て、彼の成長を通して見てきた僕らは知っていました。
「速水ヒロの才能、スタァ性は比類なきものである」と。
彼自身にとってそれは誇るものではなかったのかもしれませんが、彼はどんな技術や才能とも違う"他人の前で最高に輝く才能"を持っている。
それは作り上げられたものでも、誰かに持ち上げられたものでも、依存したものでもない。彼個人が持ち、努力で育んできた、誰にも負けないエンターテイナーとして一流になり得る可能性です。
僕はヒロにそれを知ってほしかった。
今までヒロが積み重ねて、泥臭く前を向いて勤しんで来たことが、価値ある尊いものだという自覚を持ってほしかったのです。
決して他人に褒められた過程でなかったとしても、当事者間でそれを解決して勝ち取った成果は、誰のものでもない彼のものです。
そう心から思える機会を自身で掴んでほしかったし、そうしてきた自分を認めてあげてほしいと思っていました。
そしてそれを持って「自分の意志で誰かに届けるプリズムショー」を僕達に魅せてほしいと、そう心から願っていました。
「勝者であり勇者」その理想を目指すべき男
――『キンプリ』の速水ヒロは腑抜けている。
僕は『RL』を見た後に『キンプリ』を見直して、そう彼を評価しました。
Over The Rainbowというグループで他人に寄りかかってショーをして、幸せな時間をただ漫然と謳歌している。自分から何かをするわけでもなく、コウジやカヅキに依存して甘んじている。「これで良いんだ」と納得している。
最後にはどんな時でもプロ意識を失わなかった速水ヒロが、ステージの上で泣いている。
大勢の観客よりも個人の感情を優先して行動する速水ヒロがそこにはいました。我々が望むものとは違う方向性を示して。
いや俺が見たい速水ヒロはそんな奴じゃない。
お前はもっと輝けるはずだし、輝かなければいけない。
そこまで来て初めて、コウジと決別したあの日からプリズムスタァとして培ってきたものが報われるんじゃないか。キングの器を持つ男が、その程度のレベルで終わらないでほしい。
それが僕の持つ彼への本心でした。
これは受け手としてのエゴに他ならないのは分かっていますが、『キンプリ』はリアルではなくアニメです。ならばこそ、彼にはキャラクターとしての理想をこの『KING OF PRISM』で突き詰めてほしいと思いました。
どんな苦難が待ち受けていても、それを乗り越えた先にある、僕らには決して辿り着けないような理想を彼には掴みとってほしい。それをもって僕の中の『キンプリ』、そして速水ヒロというキャラクターは完成を迎えられる気がしていました。
続編ではどんな物語がどのような割合でフィーチャーされるのか全く分からないけれど、とにかくこの速水ヒロが「勝者ではなく勇者」にあらず「勝者であり勇者」になる物語が存在する世界であってほしいと心から願い、僕は『キンプラ』の上映開始を待ちました。
その鑑賞1回目は、なんと当選した試写会にて。
本公開の2週間前 愛知県のミッドランドスクエアシネマで迎えることになります。
それから10数回に渡り毎回映画館で号泣する男になるとは、この時はまだ知る由もありませんでした。サンキュー&グッバイ青春フォーエバー。
おわりに
ひとまずここまで。
『キンプラ』を迎える前の僕の気持ちを書かせて頂きました。
速水ヒロについては「彼個人の持つ要素だけで論文が書けるのではないか」というほど好きなキャラになりましたが、今回はその中で最も多くの方に伝えておきたい部分を掻い摘んで執筆しました。
「お前『キンプラ』の内容を知っているからこんなことが書けるのではないか?」と思われても仕方がない内容だと思われますが、この記事は2017年の僕が『キンプラ』公開前に残していた「速水ヒロへの愛を語った怪文書」の内容を基に執筆しています。なんでそんなものが残っていたのか自分でもよく分かりません。
ですので、たまたま僕の解釈の多くが『キンプラ』で描かれた内容に適合したというのが正しかったはずです。内容を暗記するレベルで観まくっているので最早「絶対」とは言い切れないのが歯痒いですが…。
さぁ、次回ではいよいよこの考えを持ったまま映画館にドキドキしながら足を運んだ僕が、『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』をどう見てどう楽しんだかを記事に致します。
大好きな作品です。
しっかり書き込みますので、またしばらくお待ち頂けると嬉しいです。
お読み頂きありがとうございました。
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