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【歴史】『KING OF PRISM』が 『ONE PIECE』に無発声応援上映を繋げるまで【キンプリ】

引用元:『KING OF PRISM』キービジュアル

『KING OF PRISM』シリーズ、主要な作品展開が終了してから早2年半。狂気の界隈も現在は落ち着きを取り戻し、穏やかな日常が続いている状況。

コラボや派生展開に目を配りながら、いつか来るかもしれない新作を静かに待つ日々。そんな『キンプリ』ファンは、ある1つのツイートによってにわかに活気を取り戻しました。

起点となったのは言わずと知れた大作映画『ONE PIECE FILM RED』。
当作の"無発声応援上映"の実施が決定し、それに伴い原作者の尾田栄一郎先生が発表したコメントの内容でした。

明言はされていないものの該当作品がほぼ見当たらないことから、一部メディアを巻き込んで「尾田っちがキンプリを見ていた!」と界隈は大盛り上がり。瞬く間にお祭りムードと相成りました。

『KING OF PRISM』のことをよく知らない…という方には、別途初めての方向けの記事が作成されています。こちらをご覧になり、理解を深めて頂けると幸いです。

『KING OF PRISM』をまだ観ていない方へ! 50回通った漢の丸分かり解説!

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そしてこの記事でスポットを当てたいのは作品の内容ではなく、「無発声応援上映」という文化の存在についてです。

声を出して応援することを主とするはずの応援上映を、発声せず動きとアイテムのみで楽しむ。コロナ禍に適応し、ニューノーマルに合わせた形に変化した現代の応援上映。

実はこの無発声応援上映が実施されるようになった背景にもまた、『KING OF PRISM』の存在があったのです。

この記事では『ONE PIECE FILM RED』に『KING OF PRISM』が無発声応援上映を届けるまでの歴史、その出来事についてまとめて行こうと思います。よろしければ最後までお付き合いくださいませ。

ご注意

この記事は1人の作品ファンが自分の目で見てきた内容を事実とし考察・明文化したものです。

記事中の情報は全て主観的情報であり、内容の正確性を担保するものではありません。1つのエンタメとしてお楽しみください。

コロナ禍での応援上映

『KING OF PRISM』(通称:『キンプリ』)は応援上映という文化その物の火付け役であり、その知名度以上に新しい文化の発展に寄与した功績を持つ作品です。当時まだ子供向けだった「おうえん上映」を"恒常の"上映回として取り入れ、その後多くの作品でイベント実施される素地を作り上げました。

ところがメジャーな遊びへと昇華しつつあった応援上映にも、等しくコロナ禍という悲劇が訪れます。着実に知名度を上げていた新しいエンタメ文化もまた、発展の道を閉ざされることになりました。

これはこと『キンプリ』という作品にとっては、作品の存続が不可能になるかもしれないレベルの大問題でした。

『キンプリ』は応援上映を中心に展開することで、「1人の人に何度も来てもらう」スタイルで作品を存続させてきています。つまり応援上映ができなくなることは、作品の大きな収益減を失うということ。作品展開自体に支障が生じるのは自明だと言えました。

しかし『キンプリ』の製作・広報陣は、そこで諦めて歩みを止めることをしませんでした。このコロナ禍においても、既存作を利用して様々な試みを実施します。

その中の1つにあったのが「ZOOM応援上映」という、オンラインで映像共有を行っての応援上映でした。

『キンプリ』は一時期は毎月このZOOM応援上映を実施しており、本気で公式の執り行うイベントにしていました。現在ではYouTube等で同時視聴という文化が広まったため驚きは薄いかもしれませんが、開始当時はかなり攻めた企画だったと思います。

これはこれで「家にいながら応援上映ができる」「全国の誰とでも声を出して応援上映ができる」「外では難しい動きや格好ができる」という長所があり、作品ファンからは一定の支持を受けていた印象です。

コロナ禍において、作品の公式自体が「応援上映」を貫こうとしたこと。これは作品ファンの士気を下げず、作品を忘れられないようにする大きな役割を果たしたと思っています。

そしてそこから連なる形で存在していたファンの動き。それこそが無発声応援上映の開催、継続でした。

手話で応援を始めたファン

コロナ禍に突入した2020年初頭、『キンプリ』は最新作であった『KING OF PRISM ALL STARS プリズムショー ベストテン』が封切りされたばかりで、イベント制限が始まった2月末にも多くの劇場が上映を実施していました。

イベント制限が存在する中でも、当時の映画館は娯楽として比較的容認されている空気がありました。鑑賞中は声を出すことがなく、原則換気システムが整っているからという理由だったと記憶しています。

とは言っても、当然声を出して応援上映を行うことまでは許されません。ですが『キンプリ』の上映は継続しており、その多くが応援上映と銘打って劇場を開いていました。声は出せずとも、キンブレ(光る棒)を振ること等で応援することはできるからです。

そうして足繁く通うしぶとい(※あえてこの表現)『キンプリ』ファンたちは、コロナ禍だからこそあり得た1つの奇跡を生み出しました。

それは「手話を使えば声を出さずに言葉で応援ができる」という"気付き"でした。当時劇場に通っていたファンは皆で応援に使える手話を覚えて共有し、劇場で活用していたそうです。意味が分からない。

元々『キンプリ』ファンは応援上映で「節度を守りながら新しく・面白いことをする」研究に余念がない馬鹿ばかりだったので、そこに行き着くのは当然の摂理と言えたのかもしれません。とにかく『キンプリ』は、コロナ禍でも応援上映を続けることに成功したのです。

声を出せずとも、工夫次第で応援上映を行うことはできる。

今できる最良の選択を取ることはできる。その事実は、作品に関わる多くの人々を元気づけたに違いありません。

その結果として生まれた動きが、前述した公式発のZOOM応援上映のコンスタントな実施であった。またその公式の諦めない姿勢が、作品ファンに無発声応援上映の継続を促したのではないかと思っています。

『キンプリ』は原初からファンと製作陣の交流によって発展してきたジャンルでしたが、このコロナ禍においてもそれは変わらなかった。そうだと言えるのではないでしょうか。

無発声応援の業界理解度を向上した

『キンプリ』ファンが応援上映を諦めなかったことは、後の作品展開にも大きな影響を与えました。

コロナ禍の影響で新作が生まれず客足も遠のいていた映画業界は、窮地から脱する策として「過去の名作映画を再上映する」という方法に打って出ます。その一環としてなんと(世間的には)マイナー映画なはずの『キンプリ』関連作を流す映画館が一定数存在したのです。

集客見込みがある映画を流すことが最重要となる窮状において、無発声応援上映が成立していた『キンプリ』には十分な可能性がありました。そしてその目論見通りに『キンプリ』は成果を上げたようで、未だに『キンプリ』関連作はどこかの映画館で上映され続けています。すげーぜ。

この期間で『キンプリ』ファンは無発声応援上映の"存在価値"を大いに広め、応援上映の歴史に新たな文化的価値を刻み込んでくれました。

その功績が評価されてか、無発声応援上映は更なる進化を遂げて行きます。それは音の出るアイテム(クラッカー)などの持ち込み制限の緩和です。

コロナ禍以前の応援上映は「音の出るもの」と「後方の鑑賞を妨げる恐れのあるもの(危険なもの)」の持ち込みは禁止されており、発声と光る棒のみを主な武器として戦うコンテンツでした(※例外はあります)

『キンプリ』は無発声応援上映においてこれらの制限を一部緩和し、鑑賞者が声に頼らず感情を発散する方法の拡充を試みています。

これらは全ての作品で行われているわけではありません(※応援上映に慣れた者でないと節度を守るのが難しいため)が、無発声応援上映の限界を追求するその姿勢が、業界の無発声応援上映への理解度・許容値を高めた可能性は否めないでしょう。

実際にその後「無発声応援上映」は多くの映画作品でイベントとして実施されるようになり、それは現在においても継続中。ついには『ONE PIECE FILM RED』がイベント実施を決め、件の尾田先生のコメント発表に繋がっていきました。

尾田先生がそういった『キンプリ』の功績を意識してコメントを書いた…とは流石に思えませんが、巡り巡ってこの数年で『KING OF PRISM』の育んだ無発声応援上映は、「大きな盛り上がり」という正しい形で作品に返ってきてくれました。

エンタメが封印され、応援上映が壊滅したあの2020年。それでも「応援」を諦めなかった人たちの煌めき。その一部始終を界隈の内側から覗いていた1人の人間として、こんなに嬉しいことはない。僕にとって2022年9月13日は、そんな思いを感じずにはいられない最高の1日となりました。

おわりに

以上が『KING OF PRISM』が『ONE PIECE FILM RED』に無発声応援上映を繋げるまでの歴史です。

もちろん無発声応援上映は『キンプリ』の力のみで盛り上がったわけではないと思います。

多くの要因がある中で『キンプリ』とそのファンが、陰ながら積み上げてきたものの存在。それをこの記事で見知って頂けましたら幸いです。

正直なところ、僕はZOOM応援上映にも無発声応援上映にも一度も参加しておらず、そのファンの熱量を密かに見守ってきた1人の男性に過ぎませんでした。

僕より作品に膨大な時間とお金をかけている『キンプリ』ファンは本当に大勢います。そしてその人たちのおかげで、公式サイドが動きを止めずにいてくれるのは紛れもない事実です。

その「今でも作品を支え続けることを選んでいる人たち」を間近で見てきた上での今回の一件でした。

彼女たちの努力とのその煌めきは、もっと白日の下で評価されるべき。そう思い自分にできることとして、この記事をしたためさせてもらいました。

まさかその功労の見返りが、あの『ワンピース』のあの尾田っちからの匂わせコメント、それに伴ったお祭り騒ぎという形で結実するとは思いもしませんでしたが(笑)面白いコンテンツを推していると、面白いことに出会えるもんだと再認識です。「FILM RED」…なる早ハピなるで見に行かなきゃな…。

願わくばそう遠くない未来で『KING OF PRISM』の新作が見られることを祈って、この記事を終わりにしたいと思います。幾らでも待てるとは言え、やはり22世紀は遠すぎるよなぁ。待っています。待ちましょう。みんなで、待ちましょう。

  • この記事を書いた人

はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。二次元イケメンを好み、男性が活躍する作品を楽しむことが多い。言語化・解説の分かりやすさが評価を受け、現在はYouTubeをメインに様々な活動を行っている。

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