ショーをしなくなった理由の考察
彼の真相が明らかになったことでいよいよストーリーはオンタイムへ。冷静に考えるとここまで書かせてもらっても『スッスッス』の如月ルヰの話は全くと言って良いほどしていないわけで、実質「これまでの如月ルヰ(答え合わせ)」という感じ。ようやくここからが本題…でしょうか。
PKC以降、表舞台に立てなくなったルヰ。
これはプリズムショーができなくなったわけではない(※PKCではシンの封印を解いてからショーをしている)と思うので、考えられる可能性としてはフェザーを失った使者が人前でショーを続けてしまうことで「世界から煌めきが奪われてしまう状況」を避けようとしていた、という感じでしょうか。
『RL』ではジュネについて「使者がその世界のトップに君臨し続けてしまうと煌めきが失われる」といった説明が為されており、この点ルヰは速水ヒロが王者になったことで最悪の事態を回避しています。ありがとうヒロ。それでもできるだけ身を潜めておくに越したことはないという判断…とか。ジュネの情報を持っている前提であれば辻褄は合いますが、憶測の域を出ませんね。
(追記)
ピアスを引きちぎったルヰは現在、『RL』のジュネと同じ翼=ナイトドリームフェザーを使用し、プリズムショーをしています。『RL』にて「ナイトドリームフェザーは命を削る翼」と表現されており、同時に世界のプリズムの煌めきにも悪影響を齎すとされています。
ジュネ同様、ルヰはプリズムショーを続けることで身体にダメージが入り最後には消えてしまう運命にありました。これがシンやシャインとの関係性(封印)を継続するのに問題があると判断し、できる限りプリズムショーをしないように努めていたのかもしれません。
(ここまで)
仁はルヰを溺愛していることもあり、ルヰができないと言えば最大限彼の意向を汲んだはず。彼が表舞台に立たない選択を取るのはさほど難しいことではありません。でもルヰは便宜上チャンプ=トップを決めるPRISM.1への出場を受け入れているのも事実。冷静に考えれば最も避けるべき舞台です。
このことから仁が絶対にしてほしいと思っていることについては、彼の意向を優先しているようにも見えます。仁は自身を認めない者への嫌悪感が人一倍強い人間のはずなので、ルヰは結局「深いところで仁の気持ちをしっかり捉えている唯一の人間」なのかもしれませんね。
シャインとシン りんねとルヰ
大会までの(結果的に)フリーな時期を利用し、ルヰは自分のどうしてもしたかったことを叶えるためシンに連絡を取ります。頑張れジョージ、お前はできる奴だって俺は信じてるぞ。「少しは歌の練習でもしておけ」って言われる辺り期待されてるぞ。
『キンプラ』では手紙が来ていましたが『スッスッス』ではスマホでやり取りをしているので、この間にシンとルヰの個人的な関係も深まっているようです。それを皆に隠しているのか(同属性の)レオに隠しているのかはよく分かりませんでした。そもそもシンは、約束を忘れていたようにも見えています。酷いぞ。
シン達のシーン、カケルだけがレオの恋心(?)に感付いた上でおちょくってるように見えていて、やはり知識として愛を知った男なんだなと。7話でもレオの在り様を真先に肯定したり、多様性を理解した立ち回りが随所に見受けられるのは良いですね。
2人が訪れたプリズムランドはいわゆるDなやつをモチーフにした施設で、『プリティーシリーズ』関連作を見ているほどその施設やBGMに施された遊び心が分かるようになっています。AD/DMF/プリパラの序盤まで見ていると9割くらい分かると思います(経験談)流石にただのオマージュだと思う…ラビチついに喋ったな…。
プリズムランドの存在は3話で言及されていましたね。
『スッスッス』は何気ない会話や背景の中で小さく情報を開示して印象付けしておくことで「唐突な存在や演出をなるべく出さない」構成術が本当に的確に使われていて、これは1クール通して受け手の頭を混乱させずに情報を押し込めている大きな理由の1つです。本当に上手ですごい。
「ずっとずーっと昔から、一緒にシンと来たかったんだ!」
昔っていつだろう…。
ここまで来ると発言の全てが気になってしまいますが、ルヰは屈託のない笑みと声で、シンを少し戸惑わせるくらいの喜びを露わにします。
ルヰくんの新曲に乗せて展開されるあまりにも幸せな映像の数々。『キンプリ』はそもそもデートムービーだったな、という過去の監督の暗黒発言を思い出させてくれる一幕でした。序盤のダーク&ミステリアスな展開に当てられていた我々を浄化してくれます。余計揺さぶられたとも言えます。
憶測ですが、演出はただのオマージュであっても「様々な世界の煌めきが結集した施設」というのは、プリズムの使者的には本当に楽園のような場所なのかも…と思ったりしました。だからルヰの「シンと一緒に来たかった」という言葉には、「シャインをここに連れてきたかった」という気持ちも込められていたのかもしれません。
「ねぇ、シンはプリズムショー好き?」
「もちろん」
「……!」
自分が教えたプリズムショーを"シン"が好きでいてくれる。
そのことを密かに、でも強い嬉しさを滲ませた笑顔で見つめるルヰくんが非常に可愛らしい1シーン。
「プリズムショーは心の煌めき」
「「プリズムジャンプは心の飛躍」」
「!!」
その後にシンが山田さんが教わったとして口にした言葉は、シャインが口にしていたものと全く同じ。それもそのはず、その言葉は山田さんがシャインと同一人物とされる響ワタルから教わったものだからです。
この時、唐突にシンとシャインの面影が重なって、思わず戸惑ってしまうルヰの姿は印象的でした。この反応に秘められたルヰの心情は、後半のプリズムショーの中で表現されています。
男性プリズムスタァ 如月ルヰ
丸1日プリズムランドを堪能した2人には、別れの時が訪れます。何だかんだまだ高校生。朝帰りはダメ、ゼッタイ。条例は守ろう。
別れ際にルヰの気持ちを察したシンは、プリズムランドで手に入れたペアチャムのぬいぐるみをルヰにプレゼントします。察しの良い男はモテる。シンは大人の階段を1つ登った。このぬいぐるみもどこかで何かの鍵になったりするのでしょうか。
シンの帰りを待っていたのは、それっぽい理由をつけて彼女面するレオくんです。彼のこういう、いじらしい一面が見れたのは良かったですね。
「クンクン…」
「…何してるの?」
「女の子の臭いがしないかチェックしてるんです」
ヤベー奴か???
でもこれも実は大事な情報だと思っています。レオは結局、シンから女の子の臭いを見つけられなかったわけですから(別に嗅覚が鋭いキャラだったわけではないが…)
それはつまり、ルヰは「りんね」をベースにした使者ではあるけれど、あくまで「如月ルヰ」という1人の"男性"プリズムスタァとしてこの世界に在るということ。彼はりんねとしてシャインと出会ったのではなく、如月ルヰとして一条シンと出会い、時間を共にしていたということ。
それがどのような意味を持つのか。
答えはルヰのプリズムショーの中で語られます。
今ある本当の気持ちを表現したショー
舞台はPRISM.1。
タイガの減点処分により逆転に成功したシュワルツローズの勝利の鍵を握るルヰのプリズムショーがスタート。
「あの衣装は…」
ルヰが身に纏っていたのは、シンとプリズムランドでデートした時の服装そのままでした。
「プリズムの煌めきを……"あなた"に!」
ファンシーな衣装に身を包み、まるで夢の国のBGMのようなイントロでスタートする楽曲。今までのイメージから大きくかけ離れた可愛らしさ全開のプリズムショーでした。
演出、ダンス、所作、音楽、歌。
その全てがシンとのあの日を想起させるものになっていて、彼にとってあの1日がどれだけ大きな意味を持っていたのかが分かります。ただ楽しそうにプリズムショーをするルヰの姿は、『キンプラ』のあの悲しさに満ち溢れたショーの時とはまるで別人のようです。
そんな光り輝くショーに乗せて彼は独白を始めます。
「初めは気が付かなかった…」
「あなたの中にいる"彼"の面影ばかりを追いかけていた」
「でも…今ははっきりと分かる」
使者として世界に舞い降りた時はシンのことをシャインの宿主としか見ていなかった。別に外側は誰でも良くて、中身にシャインが存在していることが重要だった。
しかし、その気持ちはだんだんと変化して行きます。
徐々に覚醒していくシャインの姿を見守りながら、ルヰは一条シンという人間にも触れることになる。「りんね」はシャインが好きだったけれど、「ルヰ」はだんだんとシンのことが好きになっていったのです。
それはシンとシャインが完全なる別人であることを表しています。
シンもシャインも「多くの人を惹きつける魅力がある」ことは共通しており、シンのそれがシャイン由来のものである可能性も否定できませんでした。でもシンがシャインと同じ魅力を持っているのであれば、ルヰは変わらずシャインのことを追いかけ続けていたはずです。
ルヰがシンを求めるようになったということは、彼にシャインとは別の魅力があったと言っていい。1000年単位の時間を積み重ねてきた「りんね」とは別の「如月ルヰ」を作り上げるほどの魅力が。
『キンプリ』でペンダントを渡した時、ルヰはシンと「シャイン」と「りんね」ではなく「シャインの宿主」と「1人の男の子」として会話をしたはずです。だから声のトーンも表情も基本的には男の子。ペンダントを渡して走り去る時だけが恋する乙女でした。
それが『キンプラ』で「僕とプリズムショーをしない?」と言った時は、前作に比べて遥かに距離が近く可愛らしい声になっていました。僕はずっとこれに関して「なんかキャラ変わってないか?」と思うほど気になっていたのですが、その理由は本作で明かされました。伏線だったと気付いた時は本当に驚きました。
それは覚醒しかけているシャインとまたショーができるという思いもあったかもしれませんが、それだけだったら「りんね」はきっと「私と踊らない?」と言った時と同じ顔をしていたと思います。状況を考えればそうなるのが自然です。
でもルヰは本当に楽しそうにシンとショーをして、あの行動に至った。だから彼は、あの時点で既にシンへの恋心の方が大きくなりかけていたと僕は捉えています。でもPKCの時点ではそれを自覚するには至っておらず、それを確認するためにプリズムランドへとシンを誘ったのだろうと。自分の想いの果てを確認するために。
「好きよシン…あなたのことが」
「私は、"あなた"のことを永遠に守りたい」
「シン…愛してる」
この一連の台詞は、ジュネが聖に愛を伝えようと飛んだ時のオマージュ。あのジュネの台詞は特別なことを言っていないのにすごく印象に残っているフレーズだったので、監督がこういった形で合わせてきてくれたのはとても嬉しかったです。
そしてルヰは「好きだよ」と言わずに「好きよ」と言いました。
これは「如月ルヰ」としてだけでなく内包した「りんね」を含む、彼個人の全ての価値観が揃った瞬間を表現していた台詞だったと考えられます。
このショーをすることによって、如月ルヰは一条シンへの想いを100%自覚し、体現することに成功したのだと思います。
一人称視点で誰かと戯れるという今までにないプリズムジャンプ「宿命 夜明けのLOVE again」を見せてくれました。その先にいる人間はシャインから完全にシンへと変化していったりしたのでしょうか。
――しかし、それこそが真のトリガー。
「りんね」含むルヰの注意が完全にシャインからシンに移行したことで「りんね」の施していた封印の力が弱まってしまったのでしょう。「りんね」の持つシャイン個人への想いが彼を縛り付ける強い枷になっており、それが「ルヰ」のショーによる心境変化で弱体化、目覚めつつあったシャインの力がその拘束力を超えてしまったと言ったところでしょうか。
ルヰのショーに割って入る形で悪魔が復活します。
SHINE
「まさか君に裏切られるとはね」
『RL』でのジュネと荊りんねのやり取りを彷彿とさせる謎空間に復活したシャインはルヰを剥がされたりんねと共に現れます。シャインはそこで封印されてからの自分の状況を告白、そしてそこから導き出された今の価値観を彼女に伝えます。
「M型の人間っていうのは本当に利己的だね。本質的に他人を愛する者など1人もいない」
昔と全く変わらないどころか、より悪い方向へ確信を拡げていたシャインを見たりんねは三度彼を封印することを考えます。
「――もう少し眠ってて!」
「…F型の気まぐれにもほとほと手を焼くけどね」
その攻撃を受け止めながらシャインは余裕の笑みでりんねに事実を突きつけます。
「君は僕を殺すことはできない。何故なら――」
中身の自分が死んだら、宿主たる一条シンは覚醒して以降の記憶を全て失うから。
「大丈夫、僕が皆を幸せにするよ」
それはシンとルヰの関係性を壊すだけでなく、シンと他の仲間達との思い出も壊すことになる。衝撃の事実を突きつけられたりんねが手を緩めた隙をついて、シャインはりんねに反撃を行いました。
「――"愛してる"」
彼の言う「愛」とは何なんだろうか。
フェザーを砕かれ一時的に煌めきを失ったりんねは、ルヰとしてもそのままショーを中断されてジャンプは失敗扱い。意識を失い空中から落下してしまいます。
「ッ! ルヰーッ!!」
それをいち早く察して飛び込ぶ法月仁の姿がありました。これは7連続ジャンプに失敗したジュネを聖が受け止めた時と重なります。その前にべるをCOOさんが受け止めたこともあるため、これで三強のダイビングキャッチが全員揃ったことにもなります。
今作の仁はルヰを通して過去のトラウマを見ることが多く、本当に彼といて幸せなのか疑問に思うことも多くありましたが、あくまでもルヰ個人のことを心から想っていることがこの演出から伝わってきて心打たれました。当時の聖も、色々と不器用でジュネに自分の本当の気持ちを伝えられない男だったことを思うと余計に…。
この10話のシナリオは仁が半ば蚊帳の外のような存在であることが強調されてしまった形だったので「それでも仁はルヰを本当に大切に想っている」と思える形に収めてくれたのは、仁にとっても救いになったと思われます。
何だかんだ裏事情はありつつも、大会上はルヰが単純に失敗してしまう大番狂わせ。得点もハーフスコアを割り、一気にシュワルツローズが不利目を引くことに。これには真田常務も思わず「ヤッベェ~…!」と似合わないことを口走ってしまう始末。
あとはシンがいつも通りのショーをすれば、エーデルローズが確実に逆転できる!一転して大きな余裕を得たエデロ生達にも余裕の表情が浮かびます。
しかしシンはいつも通りのシンではなかった。それについて仲間達も不審にも思いつつも、不安がることはしません。まさかシンが別人格に身体を奪われているなんて想像もつくはずがないのですから。
一条シンの身体は、シンではなく復活したシャインとしてPRISM.1のステージへと足を運びます。
――横顔に見とれる瞬間がある
見てる君どんな顔してるの?
おわりに
四章が始まる前「シャインはどの程度絡むのかな?」「りんねは出るのかな?」「ジュネに台詞はあるのかな?」などと悠長な想像をして劇場に向かった自分の想像を粉々に粉砕するかのように、それ中心の話を展開されて真顔になりました。「やっぱりりんね出てきたね~」とかノンキな感想が言えるアニメじゃなかった。
今までも『RL』を見ていた方が楽しめる話は幾つもありましたが、『RL』を見ていないと理解できない話はなかったはずです。一応重要な部分は台詞に落とし込まれていますが、2秒で終わる重要な台詞が多すぎるので無理でしょう。10話以降はそういう意味でもかなりヤバいですね。そもそも『RL』を見ていれば理解できる話でもない。
とにかく色々なことが起こりすぎたせいで、作品の感想が三章までとは全く違ったものになってしまっており、当然ながら設定関連の紐解きをしている人が多く、キャラの話をしている人が著しく少なくなってしまいました。急に違う作品になったかのようなバグり方でした。皆シャインに飲まれてる…。
このブログでは「あくまで担当キャラをフィーチャーした感想を書く」「細かい設定の考察や周辺キャラの動きなどは主題を乱さない範囲で」と決めてここまでやってきたので、四章以降もそのテイストを維持しようと思い一生懸命考えました。
特にルヰくん個人への感想は本当に数が少なく、意地でも彼の心情を掘り下げた記事を書いてやろうと思い、りんねだった時代からルヰに至るまでの感情の動きを細かく分析して文章に起こしました。結果的にストーリーを最初から順番に紐解いて行くという形になっていますが、楽しんで頂けていたら嬉しいです。
正直なところ世界観考察などはあまり得意ではなく、Twitterを回遊してもらった方が抜群に面白いものが転がりまくっているので、あまり書く必要はないかな、と。今回ジュネや響ワタルにノータッチなのはそのためです。僕には僕の書ける記事を書いてみようと思います。
僕個人の考察や憶測はできるだけ排除して、映像の範囲で感じることができるルヰの心の動きを重点的に利用した記事になっています。しかし、それでもこの四章については個人的な解釈を根拠にした内容が他の章より多くなると思われます。何卒ご容赦頂きたく思います。でないと頭が割れそうだ助けてくれ。
いよいよあと2話を残すのみとなりました。最後までめげずに書き切りますので、どうかお待ち下さいませ。お読み頂きありがとうございました。
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