アニメ 単話感想

『キンプリSSS』3話感想 タイガの成長 魅せろ"皆のための"プリズムショー!

2019年3月7日

仁科カヅキという存在

「あんたは俺が知ってるカヅキさんじゃねええええええ!!!!」

カヅキ先輩との過去が明らかになるにつれて、初作でタイガが怒っていた理由もだんだんと説得力を帯びてきます。

とりあえず僕の感想としては「そりゃ怒りもするわ」でした。
年月が人を変えるとは言え、久々に会った憧れの人、ストリートの申し子があんな風になっていたら、幻滅どころではないというものである。カヅキさんに見てほしくて一生懸命ストリート系プリズムスタァを目指して頑張ってきたのに…。俺ならプリズムショーを辞める。

そもそも仁科カヅキ、お前「胸キュン体験」跳べたのか。

歴代『プリティーリズムシリーズ』における「胸キュン体験」は、実は多くの人が跳べる汎用プリズムジャンプです。『レインボーライブ』ではいとちゃんしか跳びませんが、固有技ではないのです。条件は「恋する乙女であること」だと思います(明言されているかは不明)少なくともそういう場面で皆跳んでました。

つまり仁科カヅキは少なくとも誰かに恋をしているのであって、あの2人からラブレターを渡された時点で何かしらの胸のトキメキを感じているということに他ならず、個人的には「は?お前いい加減にしろ」という気持ちが頂点に達した瞬間でした。あまりに驚いた。

観客から「見ちゃ駄目…!」「?」といった反応をされていることから、この際のカヅキのアカデミー系ジャンプの完成度はお世辞にも高いとは言えず、まだまだ中途半端なものであることを表していたのかもしれません(さほど観客が湧いていたわけでもなかった)

オバレになった彼が持つ「どのようなショーをしていくべきなのか」という悩みは『キンプリ』の1つのテーマになっていましたし、この時点では明確ではないものが多かったと考えるのが自然です。

あのシーン、地味にオバレが「小さい箱」の後にドサ回りめいたライブも経験していたことが分かるようにもなっており、シリーズ的にはかなり重要度が高い形になっていました。

オバレはあんな「小さい箱」を超満員にできるアーティストなのに、よりこじんまりとした野外でライブ&握手会が行えるということは、仁科カヅキ個人の人気はあの時点ではさほどではなかったのかも…?こういうところで情報を叩きつけてくるから、劇場での体感時間が6時間くらいになってしまうのです。

憧れを超えた先の更なる憧れ

「ストリート系…やめたんスか?」

下から火を焚いている実家の五右衛門風呂で、仲間達と共に入浴を楽しんでいたタイガはカヅキとの思い出を語り始めます。家族に言われるがままにエーデルローズに入学した彼は、変わり果てたカヅキに向かって軽蔑の感情をぶつけます。

しかしカヅキはそれにうろたえることすらなく、毅然と答えるのです。

「俺は1人でも多くの人にプリズムショーの素晴らしさを知ってもらいたいだけだ」
「…………」

「そのおかげで、こうしてまたお前と巡り会えただろ!
「!!!!!」

仁科カヅキそういうところだぞ。

困難を乗り越えて再会したカヅキ先輩は、プリズムショーこそ軟派になってしまったものの、昔と変わらずやっぱりカッコ良かった。一発ぶん殴って帰ろうと思ったのに、この人とまた一緒にプリズムショーができると思ったら、やっぱり嬉しくなってしまった。

それもそのはず。
この時のカヅキは、タイガと同じような考えを持っていた自分自身と決別し、仲間達と共に1つ前に進んだ価値観でプリズムショーをする更にカッコイイ人間になっていたのですから。

自分たちが良いと思うだけのショーではなく、他人を楽しませるためのショーをする。その大切さを『RL』の速水ヒロの生き様から学んだカヅキは、ストリート系の新たな可能性をアカデミー系との融合に見出していたのです。

その真意はタイガに伝わらなくても、一皮剥けたカヅキの姿は「記憶に残っていた憧れよりも上だった」に違いありません。

その魅力はプリズムショーの範囲に留まらず――

「これが…俺の憧れぇ……」

心中お察しします。

「それからシンが来て色々あって…」と言ったように、ストリート系一筋だった彼の心を動かしたのもまた、ローズパーティーで一条シンが齎したあの感動だったようです。人を感動させることの大切さにあの時初めて気付けたのかもしれません。

そしてシンのショー以来、彼の中にあった「何となく見えていた自分にとって必要なこと」を明確に突き付けてきたのは『キンプラ』で魅せたカヅキのショーでした。

「全てのプリズムショーは、FREEDOMである!」

数字で表せないストリート系でありながら、観客を最大限湧かせたあのプリズムショーは改めて彼の目指すべきものを決定付けました。

何も知らなかった自分はあんな風にならねぇと息巻いていたものの、結局カヅキ先輩の進んできた道は正しいものだったと思い知らされた。自分はその同じ道を後ろから歩いているだけだった。自分が否定していたものは、きっとカヅキ先輩も自分と同じように否定して、それをまた乗り越えて、いつも自分の前を歩いているんだろう。憧れの先には、もっと大きな憧れが待っていたのです。

そんな思いを真正直に吐露する成長したタイガ君の姿には、全国の紳士淑女が胸打たれたことでしょう。作画が抜群に綺麗だった。

それを踏まえてPKCのアレクとの決闘を見るとまた泣けてきてしまうよなぁ。

今のタイガが彩る皆のためのプリズムショー

シュワルツローズの嫌がらせにより、開催危機に立たされた青森のねぶた祭り。こんなのシュワルツの威信を貶めまくる大惨事じゃないのかという突っ込みもそこそこに、前に出るのは俺達の仁科カヅキ!

「ちょっと待って下さい!ここは俺の地元…俺に任せて下さい!」

そんな時にカヅキを遮り声を上げたのはタイガでした。地元の人が悲しむ顔を見て居ても立っても居られなくなったタイガは、自らショーをすることを選び、望んだのです。

PKCを全力で終えて成長し、より広い世界が見えるようになった香賀美タイガ。彼が自分のためではなく皆のために行う初めてのプリズムショー。

全人類衝撃の衣装を身に纏い今、祭りが始まります!
(あれもレオ君がデザインしてるのかな…)

「祭りなら…俺の中にある!」

広大な大空をバックに朗らかな笑顔で踊り歌うタイガの姿は、家族や地元への愛を感じさせてくれるものでした。どことなく「FREEDOM」っぽさを感じる軽快の曲調のマイソング「Fly in the sky」に乗せる歌詞は、カヅキ先輩への最大限の想い。改めて思うけどお前本当にカヅキ先輩好きすぎだろ。

前半ではレビテーションを使わずに浮遊円盤を出現させ空を飛ぶ!カヅキ先輩リスペクト!というかあれは一体何なんだ!?

前作からここぞという場面では固有演出になっていたスプラッシュ系ジャンプもタイガは「バーニングスプラッシュ」あくまでもカヅキとストリート系をリスペクトした形で、もはや逆に特別感が出てくる演出です。

この「バーニングスプラッシュ」ですが、演出よりもボイスの再生が一瞬早く、発動がズレているように感じられるのが個人的に気になっています。

直前の超速走り込みも含め熱量のあるショーを見せてくれたタイガですが、転じて曲やリズムに乗ることよりも自身の気持ちから来る勢いを重視しすぎているきらいがあると思います。

「気持ちが逸ってしまい、行動のコントロールが不完全である」というのが今作の彼に与えられた課題であるようなシーンが他にも存在するため、こういったショー演出は意図的に練り上げられたものかもしれません(実際タイガのショーのスコアは3連続を跳んだ割りにかなり低め)

すかさず2連続!
バトル以外で初めてのショーのため、連続ジャンプの掛け声も初!やっぱりこれがなくっちゃと思わされるお約束演出です!

「お前ら!気合い入れて行くぞ!」

『キンプラ』では爆撃を跳ね返すために使用されたウチワ系ジャンプ(?)も、今回は攻撃ではなくタイガの好きなお祭り演出として使用。「仲間」をモチーフにし、皆で盛り上げることを考えた今のタイガらしいジャンプだったと思います。ラッセーラ!ラッセーラ!

このジャンプの真の目的は、祭りで利用する山車を召喚し、皆の笑顔を取り戻すこと!プリズムショーなら山車だって作れる!!これが「真夏の夜のねぶたドリーム」!!

プリズムショーで会場を再建したカヅキのように、悲しみに暮れる人々に笑顔を与えるため、彼は精一杯うちわを振るい声を上げます!ラッセラッセラッセーラ!!

このジャンプを2連続目に持ってきたということは、PKCの時点ではきっとこのジャンプ(に類する何か)を切り札に跳ぶつもりで練習していたんだろうと思われます。背負うものが違った彼が跳ぶはずだったジャンプはどんなものだったんでしょうね。

3連続いや「もういっちょ!」は「祭りだ!わっしょい! フォーチュンボーイに花束を」これは初作の劇場先付映像で跳ぶと言っていたプリズムジャンプ。本当に跳びました

「まだまだサービスしてやるぜ!」

うちわを真紅の花束に持ち替えて、今までとは一転アカデミー系を思わせる演出に!衣装に似つかわしくない美しい花束を抱えてタイガは走る!

数多の鳥居を潜り、高速で駆け抜けた先にある門を潜る!自分を見てくれている沢山の人達に向かって彼は飛び込みます!

「今日は俺の地元の祭りに来てくれてありがとう!」

「みんな…大好き!」

あまりのことに「!!!??!!!!?????!!!!??!!!」となってしまった方が大半だったのではないかと思いますが、僕はショーの爆音だったのを良いことに抑えきれず「FOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」と言ってしまいました。そこかしこから似たような色んな声が上がっていた記憶があります(※最速上映会です)

この今までのタイガでは決して跳べるはずのないプリズムジャンプもまた、1つ先にいるカヅキ先輩へのリスペクトを感じるものでした。プリズムジャンプは心の飛躍。タイガが大きく成長した証も、しっかりプリズムショーで明確化してくれました。『キンプリ』らしい素晴らしい演出でした。

「フォーチュンボーイ」はプリズムラッシュライブでも実装されているジャンプですが、くしゃみみたいな意味の分からないイラストだったことで若干批判を浴びていたような覚えがあります。あれキス顔だったらしい。衝撃の真実。そうやって見るとエモ…エモ…(※画像は見ましたがプレイは最初の頃しかしてません)

その強すぎる憧れから「変わってしまったカヅキ」に否定的だったタイガは、今度はその自分自身と決別。確かな成長をプリズムショーの中で体現してくれました。同じ場所を見据えた仁科カヅキと香賀美タイガの物語は、まだまだ続きます。

『RL』らしさを全面に出しつつも『キンプリ』を貫いた構成

最後に話の構成について少し。

第3話は全体通して凄まじい既視感に襲われた方も多いはず。

そう、これもう『実質レインボーライブ』言うか『レインボーライブその物』だわ。という感じ。

話の展開、語り口、コメディ感の出し方、「おーお前ら!元気か?」というテンションで妙な被り物をして現れる仁科カヅキ、全てが『RL』に存在した雰囲気をそのまま維持していたと思います。幼少期が作画されたこと影響もあったと思いますが、作画の質もどことなく原作らしさが強い回でしたし、実質というより最早その物。

個人的に3話は本当に構成が優れた1回だったと思っています。これだけ『RL』の雰囲気に寄せながらも、ちゃんと『KING OF PRISM』を貫いてくれたからです。

『RL』を完走している人達は正直女の子達の活躍も見たいと思っているはずですが、あまり彼女達を出しすぎるとやはり『キンプリ』では無くなってしまうし、そうなってはほしくないという気持ちがありました。

しかも僕は男なこともあり、女性がその辺りについてどう思っているかを実感を持って把握できない立場です。このバランスについての新作への期待感情はかなり複雑でした。

特にこのタイガ回については「カヅキ先輩絡みの話であんわかな出ないとかある?」というくらい女の子が重要な存在なので、果たしてどんな形に落ち着くのか、その懸念はより大きいものでした。

しかし蓋を開けてみれば、本当に完璧。
過去のストーリーを引用することで「『RL』を見ている人には確実にあんわかなの存在が見える」という状況を作り出し、ほぼモブとして幼少期の2人を登場させることで初見の人にも印象付けを行った上で、最後のオチとして成長した2人を活用する。

こういった手法を用いることで、ストーリーは完全に『キンプリ』でありタイガの話でありながら『RL』の色調を強く出しつつ、女の子達も(履修済みの人達の頭の中には)しっかり登場させるという絶妙なバランスを体現してくれたと思います。

あわ良くば、初めて見る何も知らない人達に「この作品、過去に何か原作があるの?」と思わせ、『RL』に興味を向けてもらうところまで考えられていると思います。曲流すのはズルいでしょ。ズルいですよ。

3話は最も塩梅が難しいポイントの1つを抱えた話だったはずですが、たった20数分でここまで納得できる形にまとめ上げてきたのは脱帽という他ありません。結果的に仁科カヅキを取り巻く全員にとって素晴らしい話に仕上がっていたと感じました。

僕が『キンプリ』にドハマりした理由の1つが「本当に話の構成が抜群に優れている」ところにあります。この1章の時点でその信頼はより強固なものになりました。監督、一生ついて行きます。

おわりに

1話が理想的な『KING OF PRISM』だとしたら
2話は理想的な『プリティーリズムシリーズ』
3話は完璧な『プリティーリズムシリーズ』

第1章3話は非の打ち所がない完璧さでした。
(これ以上言い換えれないのでこの言い回しを2章以降の感想に使うのはやめます…)

僕は映画館で1章を見る前は、タイガに関しては「カヅキからの独立」をテーマにした話になるのではないかと思っていました。

『プリティーリズムシリーズ』は「誰でもない自分自身になること」を最大の目標に据えている節があり、それは2話のユキノジョウや『キンプラ』における速水ヒロについても同等のことが言えると思います。

故に、タイガはどこかでカヅキから独立しなければなりません。そのタイミングが新作で訪れるかと思いきや、今回の彼はカヅキの後ろをついて行くことを選びました。

だからユキノジョウが4連続ジャンプを跳んだのに対し、タイガは3連続ジャンプだったのだと思っています。

彼にはまだ伸びしろが存在するということ。そして、それを作品化する場をまだこれからやって行きたい製作サイドの意思も感じさせてくれる3話になりました。

…まぁしかし、この辺りは作品的にストリート系プリズムスタァはカヅキを含めまだ誰も4連続ジャンプを跳んでいないという現実があり、カヅキが4連続を跳んでいないのにタイガが4連続跳ぶわけないという単純な話である可能性も否めません。しかしそこまで含めて、まだ黒川冷の後追いから誰も脱却できていないという意味なのかもしれません(キャラ考察の沼に沈んでいく音)

その辺りのヒントや回答を大和アレクサンダー君が見せてくれる可能性もあります。PKCで競い合った男がチャラチャラしたプリズムジャンプを跳ぶところを見て、何も思わない彼ではあるまい。僕は期待しています。しかもそれが見える時は意外とすぐにやってくる……。

TV放送版限定TRFカバーソングEDでは「masquerade」のお祭り風アレンジを披露。この曲はアプリにてアレクとヒロが既に歌唱している曲ですが、新アレンジを引っ提げて彼の独自性を高めた曲に仕上げてきました。

しかし歌唱キーは過去の2人と同じに合わせられており、こういうところからもストリート系のニュースタァであるアレクとの対比関係を匂わせてくれているのはグッドです。アレクの担当回は9話となっており、劇場版3章は公開済み、記事も執筆済みです。

『キンプリSSS』9話感想 アレクサンダーが創造する新たな煌めきの形

タイガのストリート系とアレクのストリート系がどのように交錯するのか…TVで視聴中の方は、是非6月をお待ち下さい…。

こんな作品がまだあと9話も残っているなんて、プリズムショーはなんて素晴らしいんだ。また4話以降の感想記事でお会いできればと思います。それでは。

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。二次元イケメンを好み、男性が活躍する作品を楽しむことが多い。言語化・解説の分かりやすさが評価を受け、現在はYouTubeをメインに様々な活動を行っている。

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