最新作劇場版&TVアニメシリーズ
『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』公開記念!
『キンプリSSS』『スッスッス』の感想記事。
最速上映参加の勢いで1話ずつガッツリと。
5話は「高田馬場で俺と情事しない?」 高田馬場ジョージ!
前作『PRIDE the HERO』から謎の新規キャラクターとして登場した彼ですが、アプリの『プリズムラッシュライブ』では見事プレイアブルキャラに昇格、今回の『スッスッス』では晴れて個別シナリオを獲得!
ずる賢いピエロとしての活躍で目立った彼ですが、文句を垂れながらも法月総帥に媚を売りまくって出世するなど、"社会"を理解した立ち回りを徹底しているのは印象的でした。今作ではその辺りがどう掘り下げられるかが1つのキーになるキャラクターだったと思います。
そんな5話はジョージというキャラクターだけでなく、シュワルツローズの裏事情もフィーチャーした重要な設定が多く見られた内容になっておりました。今回もしたためさせて頂きます。頑張るジョイ☆
これまでの高田馬場ジョージ
『キンプラ』の癒し。
シリアスになりすぎないように用意されたコミカル担当。
ストーリー上の役割のために用意されたキャラクターという感じだったかと思いますが、恵まれたルックスに(CV:杉田智和)という(露骨な)特異性を付与されたことにより「ただ者では終わらない」というスタァ性を持って我々の前に現れたのでした。
キャラクターとしては、自身がスタァとして人前に立つものの、歌はゴーストシンガーの池袋エィス君が担当している(非公表)というのが最大の特徴。池袋エィス君も、アニメ本編では今作が初登場ですね。THE シャッフルのセンターをエィスから奪い取ってのデビューという設定も明かされています。
スタァ性の高い人間を輝かせるためなら本人達の尊厳を平気で傷付け、嘘をついて大衆を騙すという法月 仁のやり方。hiro×kojiを彷彿とさせる立場を担わせられた2人のキャラ。奇しくも担当カラーはヒロと同じく黄色です。
個人的には、ジョージについては例えで見た「ドラゴンボールのミスターサタン」という表現があまりにもしっくり来てしまって、もうそういう奴にしか見えなくなってしまって早1年と9ヶ月と言ったところ。サタンもコミカル担当として用意され、結果的に「超人の中の一般人代表」としてその人間味溢れるキャラ性から作品の中核を担うキャラの1人にまで成長した人物。
ジョージに関しても似たような流れで、後から人間らしいところがどんどん見えてくるんだろうなぁと思っていたので、『キンプリSSS』においてなかなか注目度の高いキャラの1人だったと言えますね。
キラキラする要素をたくさん持ったキャラが登場する中で、何かと泥臭い彼だからこそ描ける物語。人間がスタァへ成長して行く過程を、最も現実味を持って届けてくれるに違いありません。
妬み嫉みやコンプレックス、マウントの取り合い。誰もが持つ根源的な卑しさと戦う凡俗な人間達の姿を、そこから抜け出そうと誰よりも強くあがくジョージを中心に描いた第5話。味わい深い本編を語って行きましょう。
明かされるシュワルツローズの現実
この話で特徴的なのはやはりシュワルツローズ所属のスタァ達の振る舞いが色濃く描かれたことでしょう。それぞれがそれぞれの立場から互いを見下し、蔑み合う姿は、正にエーデルローズとは完全に対極に位置するもの。エーデルローズが良いところを探し合っているとしたら、シュワルツローズは悪いところを探し合っているという状態です。
前作ではシュワルツの中ではルヰとアレクサンダーに次ぎ、3番手に位置するジョージ。今作ではPRISM.1出場者発表の際に仁から2番目に呼ばれたことから、(アレクより使いやすく)実力もついてきた?というところでしょうか。
しかしそれもエィスというゴーストシンガーを利用して偽装された仮初めの人気であると仲間たちにも認識されているばかりか、周りを見下し自分を持ち上げるその横柄な態度から嫌われ放題。
女性を口説きまくってはスキャンダル寸前まで行き、仁にもみ消してもらっているという専らの噂まで。ですが、それはもみ消してまで守りたい存在、ということでもあります。こういう細かい部分から、仁はジョージに意外と本当に期待しているということが分かりますね。
『キンプラ』でユウに「そんなに凄いショーだったか!?」と言われていたように、ジョージ個人のプリズムスタァとしての実力は恐らく言うほど大したものではなかったのでしょう。それも歌を自分で歌っていないわけだから、周りからしたら「媚を売って気に入られていたから贔屓されているだけ」と思われても仕方がありません。
でも逆に言えば「歌を他人に歌わせてでも人前に出す価値のある存在」と仁が認めたと取ることもできる。そうであれば、彼らの嫉妬は見当はずれのものであるという見方も可能です。
人前に立つエンターテイナーというのは、必ずしも実力がある者が選ばれるわけではありません。「可能性の高さ」というものは、時としてどんな能力よりも優先して尊重されるものだったりします。才能や光る物を持つ者とて、最初から優れているわけではありませんからね。
その「選定される価値基準」が真に理解できるのは、得てして選ぶ側に立つ者だけというのが現実。選ばれる現役の人間からすれば「なんであんな奴が……」という妬みに繋がってしまいやすいのがこの状況です。
ジョージは実力ではなく、そういった未来への才能「スタァ性」を理由に選ばれた存在なのかもしれません。そもそも仁は大嫌いなストリートの権化 大和アレクサンダーをしっかり重用している辺り、好き嫌いでスタァの価値を決めるような人間でないのは明らかです。そういうところには極めてドライな人間だとも思います。
ジョージ個人の人間性は恐らく本当に問題なんだと思いますが、シュワルツローズはそういった人間的な基準を度外視した上で格と実力を追求しトップを目指す集団なので、それらが全体で見て些末事だと判断されているのにも納得できます。
しかしそういった強引に効率だけを求め続けた結果が、あの凄まじくギスついた関係性の構築に繋がってしまっているのは否めません。シュワルツローズという集団の持つ根源的な闇を、想像ではなく体感で知れたのは、作品として非常に大きいことだったと思います。
仁への強い憧れが過去を乗り越える原動力に
そのシュワルツローズで泥臭く這い上がる努力を重ねていくのが高田馬場ジョージ。本音を隠し総帥に付き従い、どれだけ酷い目に遭わされても上を目指し続けるそのメンタルには、彼の過去の経験が大きく影響していました。
いじめられっ子で小太りのオタク少年だった岡山の少年「ノリくんこと本川則之」は、男勝りな根性を持つ幼馴染ミヨちゃんに助けられていました。そしてその傍らにあったのはプリズムスタァ法月 仁。彼にとって、仁は誰よりも自分を支えてくれたスタァそのもののようでした。
仁が卑怯なことをしていると分かっていながらなお彼に憧れたのは、「弱い自分でも手段を選ばなければ強くなれる」という気持ちを正当化してくれる存在だったからでしょうか。
ダイエットに成功し謎ツッパリ時代を経た彼は、自身の憧れだった法月仁率いるシュワルツローズを目指します。そこで「高田馬場ジョージ」としての新しい人生をスタートさせたのです(余談ですが、ジョージは本作初となる、家族以外の大切な人との過去が描かれたキャラクターです)
だから彼がシュワルツローズに固執し続けるのは、きっと在りし日の法月仁への憧れをまだ残しているから。もっと言えば、このシュワルツローズの環境すら「彼が思い描いていた理想の法月仁」から外れていないのかもしれません。
憧れだった人にしごかれながら、弱い日の自分と決別しスタァを目指す。姿勢は歪んでいても、その環境が彼を強く奮い立たせていたのだろうし「どんなことをしてでも上に登り詰めよう」という強い意志を持つ原動力だった。
それこそが他のメンバーには持てなかった「シュワルツローズとしてのスタァ性」へと繋がって行ったのでしょう。それを単なる総帥の好き嫌いで終わらせるべきではない、とこの場においては言っておくべきだろうと。