アニメ 単話感想

『キンプリSSS』2話感想 「私は生きる!」ユキノジョウの決意と覚悟の到達点

2019年3月4日

 

引用元:https://kinpri.com/story/tv/detail.php?id=1000555

最新作劇場版&TVアニメシリーズ
『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』公開記念!

『キンプリSSS』『スッスッス』の感想記事。
最速上映参加の勢いで1話ずつガッツリと。

第1話プロローグは正に『キンプリ』を体現したビックリ映像アニメでした。第2話からはいよいよキャラクターに焦点を当てた本編が始まります。

2話は国立屋七代目 ユキ様こと太刀花ユキノジョウ!

歌舞伎界のプリンスでありながらエーデルローズのプリズムスタァという二足の草鞋を履く彼。前作『キンプラ』でも厳格な父親(CV:山寺宏一)との間の確執を覗かせるシーンがあり、その関係性が伏線となっていたキャラでした。

そのため新作で最もどんな話が展開されるか分かりやすく、「見たい」と思っていた方が多かったキャラでもあると思います。

作品としてもキャラクターとしても『キンプリSSS』で初めてのプリズムショーを見せてくれたユキ様。蓋を開けてみればそこにはあまりにも素晴らしいプリズムの煌めきがありました。

ネタバレ有でしたためさせて頂きます。いざ...参る!

OPと1話構成について

2話なのでOPと序盤の構成について軽く触れさせて頂きます。

まずOP。曲もシリーズ的に最高の布陣であることはもちろん、映像演出についても原初のオリジナル作である『プリティーリズム レインボーライブ』のOPをオマージュしている部分が随所に見受けられました。1話の演出なども含め、この作品の正統なプリティーリズムシリーズの系譜を踏む作品であるという意思を感じられます。

アニメの内容としては、いきなり「PRISM.1」のステージに立つところからアニメはスタート。まず大会に立っていることを前提に、そこに至るまでのストーリーを描くというスタイル。

プリズムショーはあくまで大会で行われたものを流すという時系列のクロスオーバーを行うことで、1クールという時間でしっかりキャラと大会を描き切る手法。この辺りの上手さは流石『KING OF PRISM』を1時間でまとめ上げた監督であると思いました。

初見さん達からすれば1話のようなビックリ映像を大会の間にひたすら流し続けるアニメと思ったかもしれませんね。でも実際に展開されるアニメはそんな勢いだけのものではなく、緻密かつ精巧なものであるのでした。是非この2話から、濃密なキャラ解釈の沼を楽しんでほしい。

これまでの太刀花ユキノジョウ

今までの太刀花ユキノジョウというキャラクターは設定こそ分かりやすいものでしたが、それ故に実際の彼の人間性には謎が多いところがありました。

そもそもプリズムショーを始めた本当の理由は何なのか、本当はプリズムショーと歌舞伎どちらが好きなのか、歌舞伎の道へ進まなければならない血の宿命を本心ではどう思っているのか、親とはどのような関係なのか、PKCに本当は出場したかったのか、などなど…。

建前や表面的な設定では図り切れない「本当の気持ち」が見え隠れするところが非常に多く、彼がどのようなキャラとして着地するのかは『キンプリSSS』の大きな醍醐味になるであろうことは容易に想像できるものでした。

そして信頼の坪田文脚本で描かれたユキノジョウの人生は、我々の想像通り期待を超えてくれたかと思います。過去作の伏線を余すくことなく使って描き切った葛藤とそれを克服する彼の真なる強さ、最後に展開される覚悟のプリズムショーの美しさに心を打たれすぎてしまった方は多いことでしょう。

彼の見せてくれた新作最初の3Dによるプリズムジャンプは、あらゆる意味で我々の度肝を抜いて行きました。本当に素晴らしかった。劇場で嗚咽が出そうになるくらい号泣してしまった。

 知られざるユキノジョウの本心

「魂ここに在らず!」

名立たる歌舞伎の名門 国立屋の跡取りとして、稽古に励むユキノジョウ。前作『キンプラ』でも少しだけ語られましたが、その芸の完成度はまだまだ。師匠である父親から叱咤されてしまいます。

親子で行う、300年受け継がれてきた国立屋の伝統演目「連獅子」のお披露目を間近に控えていながら、同じく伝統演目である「藤娘」すらも碌に舞うことができない。個人だけならまだしも、現在の家元である父の顔に泥を塗りかねない自らの不出来さには、心詰まる思いだったことでしょう。

僕は役者として舞台に立っていた時期もあり、周りが自分より実力がある状況で主演を任されたことがあります。そのため演者として他人に迷惑をかけまいと自分の無能さを呪っている間は、大抵良い結果を生まないという実感があります。自分には「できることしかできない」と気付いてからが本当の勝負。ユキノジョウの苦悩の一端程度しか分かっていないとは思いますが、参考になればと思い明記しておきます。

「プリズムショーから足を洗え」
「今のままでは何の光にもならぬ」

きっと本来であれば許されぬであろう、プリズムショーと歌舞伎の両立。父からほぼ強制とも取れるプリズムショーからの退陣勧告はユキノジョウの心をより深く締め付けます。

その多忙さからエーデルローズの寮を空けることも多くなり、シンはPKC前でのある出来事を思い出します。

「ユキノジョウさん、どうして僕にキングカップの出場権を譲ってくれたんでしょう…?」

前作『キンプラ』ではユキノジョウの大会出場が決まっていたにも関わらず、ユキノジョウが発信者となり「全員の総意として」一条シンの出場が希望され、受理されるというシーンがありました。その前には、今回と同じく父親からプリズムショーを辞めるよう勧告されるシーンも流れています。

今作ではその裏で行われていたシンを除くエデロ生の会話についても描写されましたが、ポイントとなるのはユキノジョウが自分から言い出したこと、そしてエデロ生がそれを「ユキノジョウがそう言うなら」といった態度で受け入れたことでしょうか。

それは本人含め全員が「間違いなくユキノジョウが選ばれる」と認識していたということであり、それだけ彼はメンバーの中で確固たる実力者であったということだと思います。だからこの時点でも彼は決して半端なプリズムショーをしていたわけではなかったはずです。

なのに彼は「シンがプリズムの煌めきを思い出させてくれたから」という理由で皆を説得します。これは自分が出場を辞退する口実にはしてしまったものの、嘘偽りない彼の本心だった。だから皆が受け入れたというのも真実だと思います。

「本当のところ、太刀花はどう思ってたんだろう?」
「やっぱりこういうのはシンちゃん本人が聞くのが一番じゃない?」

しかし皆が皆、それを彼の本心だと思っていたわけではありません。特に同い年であるミナトとカケルは、彼は何か理由があって出場を辞退する口実を用意したのではないかという疑問をずっと持っていたわけです。

ここのカケルですが「自分に責任が及ばないように事を動かせて且つ筋が通っておりベスト」な提案をナチュラルに行っており、ビジネスマンとしての思考が染み付いているのだなということが見えてきます。しかし、直前に発言を言いよどんだことから「ベストな選択を取ると(一連の件について)また後輩に責任を負わせることになる」ことへの引け目があったようにも感じられます。

「どうして出場権を……
……皆で話し合った結果だ」

シンに直接問われたユキノジョウは、この時も狼狽えることなく毅然とそうシンに伝えます。直前に自身の殻を破れないことに辟易していながらも、人前では決してその泰然自若とした態度を崩すことはありません。

「そして…シンのショーが好きだからだ!」

最後に出たこの一言は嘘などではなく、本当にそうだったのでしょう。「シンになら自分の代わりを任せられる」そう思ったから、彼を推薦したのは事実だったのですから。

シリーズ伝統の洗礼 挫折と克服の物語

ユキノジョウが風呂で心を落ち着かせていると、そこに闖入してきたのは同い年のカケルとミナト。シンとの会話を立ち聞きしていても、それがユキノジョウの本心だとは思えなかった。自分達以外では本心を引き出せないと分かったから、自分達で動くことを決めたのです。

キャラとして心情の慮り方には差を持ちながらも、2人はユキノジョウの本音をどうしても聞きたいという立場の一致がありました。違った言葉によるアプローチやアクシデントも利用しながら、ユキノジョウに迫ります。

ここで書いておきたいのは、洗面器が顔にぶつかっても全く怒りを見せなかったミナトですね。テンプレ通りなら3人で喧嘩になるシーンですが、ミナトの器の大きさが改めて見られて感嘆しました。

「なにカッコつけてんだよ!」
「黄様に何が分かる!?」

初めて人前で感情を露わにしたユキノジョウを見て、カケルとミナトもここで初めて本心をぶつけます。

「俺達だって、悔しかったんだよ」
「同期代表として、太刀花のショーが見たかったんだ」

エーデルローズの未来を年下の後輩に託さなければならなくなってしまったことを、2人はとても気にしていました。2人ともきっとその選択が正しかったのか悩んでいたのです。

でもどうすることもできなかった。カケルはこういう時に感情優先でリスクを負うタイプではないし、ミナトはスタァとしての自分の実力不足に悩んでいました。冷静に力量を考えればそうせざるを得ないということを2人とも分かっていたのでしょう。

だからその決定権は、実質的にユキノジョウ1人に委ねられていた。ユキノジョウがそうしたいと言えば、2人はそれに沿うことしかできなかった。自分の選択が2人に与えてしまった大きな自責の念の存在を、ユキノジョウはここで初めて知ることになります。それは自身が持っていたものと混ざり合い何倍も大きな感情の動きになったはずです。

「そうだ…俺は逃げたんだ…!」
「歌舞伎からも…プリズムショーからも…」

鏡を殴りつけ、遂に本心を露わにしたユキノジョウをこの時包んでいた負の感情の多さは計り知れません。

「今の俺はどの舞台にも上がれない…」
「俺は一体…どうすればいいんだ…!」

後輩に自分の身勝手を押し付けてしまった責任、同輩達に無念を背負わせてしまった責任、歌舞伎だけでなくプリズムショーの方でもベストを尽くせなかったことへの後悔など、様々な感情が堰を切ったように流れ出し、彼を襲ったはずです。

『キンプラ』までの情報だけで見れば、彼は親の指示を尊重して大会出場を断念し、シンに譲ったという見方をしていた方も多かったと思います。しかし実際はそれを建前にし「中途半端な気持ちでステージに立つことから逃げた」というのが彼の本心でした。

自分自身や周りの人間と向き合い切れない弱さから来る迷いが払拭できず、彼を何からも脱却できない袋小路に押し込んでしまったのでしょう。実力は当時新入生組の中ではNo.1だったとしても、心はきっと誰よりも弱っていたのだと思います。

プリズムショーは心の煌めきを形にするもの。運動能力は関係なく弱った心では良いショーをすることはできません。そしてプリズムジャンプは心の飛躍、良いジャンプを飛ぶには挫折と克服が必要です。シリーズで脈々と受け継がれてきたこのシリーズ伝統の洗礼を彼は今作で正に受けるのでした。

今作は入浴シーンが多く登場するのですが、ちゃんと風呂である必要性を突き詰めてくれているのが素晴らしいです。男性視点で言うと「風呂に入りながら真面目な話をする」という経験は割と本当にあるものなんです。裸の付き合いと言う言葉があるくらいですからね。

風呂場で感情を露わにするシーンのユキ様は「やっと本当の姿を見られた」という感じがして心に響くものがありました。美しいシーンだったと思います。心の話です。尻の話ではないです。尻の主張が激しい。

「ここにいる時くらい、普通の高校2年生の太刀花ユキノジョウでいればいいじゃん」

年長組であるユキノジョウとカケルとミナトの3人は「継ぐべきものがある」という点で一致していたところもあり、ユキノジョウの気持ちをより深く理解できる立場にありました。その2人から向けられた「自然でいればいい」という言葉に、きっとユキノジョウの心は救われたはず。

最も自分の醜いところをさらけ出したことで、恥ずかしさはあれどより深い仲間として意識することができたに違いありません。ここでようやく、彼は自身の過去や背負っているものの存在を皆に打ち明ける覚悟を持つことができました。

「俺はもう、宿命から逃げない!」

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はつ

『超感想エンタミア』運営者。男性。二次元イケメンを好み、男性が活躍する作品を楽しむことが多い。言語化・解説の分かりやすさが評価を受け、現在はYouTubeをメインに様々な活動を行っている。

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