最終話。
見えざる存在をギリギリまで追い詰めながらも、最後は掌で踊らされた警察組織。
1つの事件が社会に大きなうねりを生み出し、国家権力の威信を揺るがす事態へと発展しました。
果たして諸悪の根源である久住を打倒することはできるのか。全ては彼を追いかけ続けてきた4機捜の活躍に委ねられています。
満身創痍ながらも決して諦めず、未来へと歩みを進めていく物語。「ゼロ」に辿り着く道筋を、冒頭からラストまでしっかりと紐解いて行こうと思います。よろしければ最後までお付き合い下さいませ。
目次
翻弄される4機捜
久住に謀られ、完全敗北を喫したあの日から10日。4機捜は今なお最悪の渦中を彷徨っていました。
ドーナツEP製造工場のトラックを止めるため身体を張った陣馬は、そのまま轢かれて昏睡状態に。一連の騒ぎの影響で救急搬送が遅れたことで症状が悪化、意識が戻るかも分からないままベッドの上で時間を過ごしています。
経験豊富な陣馬は、きっと過去にもあのような方法で車を止めたことがあるのでしょう。誰だって過失で人殺しにはなりたくないもの。人が飛び出してくれば、咄嗟の判断で車を停車させるしかありません。相応の理由さえなければ、車を突っ切らせようとすることはないはずです。
人の感情に寄り添って考えれば、さほど速度の出ていない車の前に立つのは確実かつローリスクな戦術。場慣れしているからこそ、陣馬はそうすることに迷いはありませんでした。まして今回はただの荷物確認であり、運転手は無実である可能性も決して低くはありません。
しかし此度の彼の思惑は大きく予想から外れることに。トラックの運転手は止まれば捕まることが分かっていて、検問が解散しているうちに荷を運び切らなければならない"相応の理由"がありました。
そのせいで止まる選択をしなかったのか、はたまた周りが見えていなかったのか。結果として陣馬は取り返しのつかないダメージを負ってしまうことになりました。
既に機捜を離れている九重は、自分が相棒として現場にいられたら結果は変わっていたかもと悔やみます。緊急異動措置を受けた九重は「4機捜ではなくなった」だけで、まだどこかに配属されたわけではありませんでした。規則に従った結果、起きてはならないことが起きてしまったのです。
実際、九重の考え方なら車に飛び出す陣馬を制止したか引き戻すかしたのは間違いなく、そうなれば陣馬がこのような悲劇に見舞われることはなかったのかもしれません。彼がいても避けようのない未来だったとは言い切れないのが、余計に悲痛さを増長させています。
しかしその場合は、工場がドーナツEPを製造していた真実を突き止めることは恐らくできなかったはず。そしてその情報は、久住へと辿り着くために確実に必要となる武器でした。
陣馬耕平とその周りを取り巻く人々にとって、「良かった」と言うことは決してできない。けれど彼が"刑事"として全うした責務は、きっと事件の解決を導く。この時点では、そう信じるありません。
桔梗ゆづるの進退
久住の引き起こした騒ぎは、桔梗の進退にも影響を及ぼします。
「機捜初の美人女隊長」という不要なレッテルで矢面に立たされバッシングを受けた彼女は、騒ぎを収束させるために隊長の座を退くことを決意しました。
決して彼女に悪い点はないにも関わらず、その責任を取らなければならない理不尽。それでも彼女は大局を見て、自分に関わってくれる者全員と事件の状況を好転させるための決断を優先します。
そしてそれは4機捜の存在その物を揺るがしかねない選択でもありました。4機捜は彼女が捜査を円滑にするために生み出した臨時部隊。遊撃隊のようなものです。
桔梗は革新的な方法で独自路線の体制を築いてきた機捜の「新しい風」でした。次期隊長がそれを良しとしない人間であれば、彼女の作った功績は解体されて旧態依然とした組織に逆戻りする。その可能性は低いとは言えない現実がありました。
特に今回の件では、警察組織全体が久住の謀略にハマったことで、「警察が何者かの掌の上で踊らされた」という汚名が強く世間に印象付けられてしまいました。
ネットの自浄作用によって正しい真実が共有されるようになったものの、その汚名だけは変わることなく残り続けています。警察にとってはネットの中の話より、そこから飛び散ってしまった残滓が世間に与えた影響の方が遥かに問題だと言えました。
今の彼らにとってはこの窮地を乗り切り、体制を元の状態に立て直すことこそが最優先。バッシングの原因の1つとなった4機捜への風当たりは否応なく強いものになるだろうことは、想像に難くないでしょう。
自由を手にした羽野麦と息子のゆたかを前に、穏やかな日常を過ごす桔梗ゆづる。彼女が直面した大きな問題は、無数にある中の1事件に過ぎません。刑事としての席を離れれば、今ある幸福を存分に謳歌する権利も資格もあるのです。
そうであっても彼女は戦いから逃げることはありません。
全ての仲間たちのために、たくさんの連鎖する不幸を引き起こした元凶をだとするために、今できることを彼女は探し続けています。
ひび割れるMIU404の絆
他の4機捜メンバーと異なり、比較的自由に行動ができる志摩と伊吹。彼らも決して無変化というわけではありません。
特に「判断ミス」によって久住を取り逃したと思っている志摩は、4機捜での自分の行いを振り返り反省しています。良くも悪くも「自分は変わった」ということを、嫌でも意識させられてしまったからです。
冷静に考えればあの日「多くの人を救うため」に取るべき行動は、久住の逮捕に全力を挙げて向かうことでした。
『MIU404』のエピソードだけでも、「ドーナツEPでバシリカ高校陸上部を廃部にし、成川たちを非行に走らせる」「エトリを使って青池透子を風俗に落とし、一連の悲劇を起こさせる」「羽野麦を命に危険に晒す」「警察車両を爆破、エトリを殺害する」など、久住は4機捜が解決してきた事件の半分以上の大元に位置する存在でした。
そして先日起こしたパニックは多くの人を巻き込み、結果として古い寺の全焼や生まれてくるはずだった胎児の死を連鎖させます。彼が動けば動くほど多くの人の元に悲劇が訪れ、結果として多くの人が犠牲になり、時として命を落としてしまう現状がありました。
久住自身が直接手を下した人間はエトリだけなものの、彼は間違いなく不特定多数の殺しに携わった極悪人。たとえ今目の前で死にゆく人がいるからとしても、彼を逮捕することは結果として多くの人を救うことに繋がる。それこそが刑事が刑事として下すべき判断であったと志摩は思っているようでした。
志摩は久住の術中にハマり彼を取り逃したことではなく、数の大原則を守らずに目の前の命を感情的な理由で優先した自分を恥じていました。それは決して伊吹の選択ミスなどではなく、確固たる"論理"を片時でも忘れた志摩の責任。少なくとも彼の中ではそうでした。
だからこそ彼は今一度、昔の自分を取り戻そうとしています。野生の馬鹿に引きずられて「心」を優先して動こうとした自分を捨てて、極めてドライかつ冷淡に事件の解決を遂行する。そんな在りし日の醜い自分自身を。
伊吹藍にとっての"相棒"
一方の伊吹は普段と変わらない態度を示しながらも、腹の内には久住に対する堪えようのない怒りを燃やし続けていました。
その上で志摩は自分とのミスのせいで雰囲気がおかしくなり、ガマさんには精一杯の気持ちを全拒絶される。陣馬は倒れ九重は離れ、隊長は隊長で無くなる。
生き地獄。そう呼ぶにふさわしい環境が彼の周りには体現されていました。
――刑事を捨てても、俺は許さない。
彼とて先の選択ミスに責任を感じていないわけはなく、心は乱れまくっていたはずです。それにどこまで自覚的でいられていたかは定かではありません。
しかしその中でも彼の行動理念はあくまで志摩ありきのものになっていました。志摩を気遣い志摩と共にあろうとし、志摩の異変にも気が付いていた。なのに当の志摩は自分に何かを隠していて、決して本音を話そうとしない。
ここまで彼はどこまでも機捜404であろうとし、志摩にとっての最高の相棒であろうと努力し続けてきました。以前は捜査1課にいた志摩と違い、彼は4機捜に来る前は奥多摩の交番でくすぶっていた身。その立場と経歴の違いも気にしていなかったわけではありません。
伊吹にとって機捜404はきっと今までの警察官経験で最高の経験で、そこで培ったのは最良の仲間であったのだと思います。
だから相棒の志摩にとってもきっとそう。そうであってほしい。そう思いたかったから、彼は常に志摩一未の相棒として全力で添い遂げました。
その関係性に亀裂が入り始めている。それを感じ取ってしまったことが、彼をさらなるドン底へと突き落とします。
志摩一未から見る"相棒"
「伊吹の判断に乗っかって久住を取り逃がした時、咄嗟に思った」
久住を何が何でも追い詰めるため、ナイトクローラーRECを懐柔。九重のコネを使い、警察官として許されないギリギリのラインを攻め続けた捜査を断行します。相棒の伊吹には決して伝えず、独断で粛々と手掛かりに向かって歩みを進めました。
「――信じなきゃ良かった」
伊吹はそれにもしっかり気付いていたことでしょう。勘の鋭い彼のことだから、志摩が勝手なことをやっていることくらいすぐに分かったはず。
けれどそこまでは良かった。久住を何が何でも逮捕したいという気持ちは自分も同じだから。問題は「何故自分に声をかけてくれないのか」だけ。
それを伊吹はどうしても知りたくて、糸巻を頼って盗聴という慣れない手段を取ることに決めました。
「俺としたことがどうして信じてしまったのか。いつの間に俺は、相棒なんていうもんに頼るようになってしまったのか」
初めて聞く、志摩が自分以外に話す自分の話。それは耳を疑いたくなるくらい痛烈な内容で、本音だと思いたくないくらいに凄惨な真実でした。
「あいつを信じるべきじゃなかった」
伊吹は話を最後まで聞くことはなく、志摩の言葉を一笑してその場を後にしました。
この状況下で唯一頼れるはずの相棒は、自分を信じていてはくれなかった。その事実が分かっただけで、今の彼が次へ向かうには十分でした。
ですが志摩が言ったそれは本音とは程遠いもので。彼は理知的に物事が解釈できる九重に対し、「そう思ってしまった自分がいた」と話しているに過ぎなかったのです。本当はその感情を自罰的に対処し、そう思わせてくれる伊吹だからこそ、自分の行いから遠ざけようとしていたことを続けます。
感覚的に物事を捉える伊吹は、その理性的な判断に理解を及ばせることができないのかもしれません。「そう思ったのだとしたらそうである」と解釈し受け入れてしまう。だからあの時も続きを聞く必要はないと判断したと思います。
それはきっと彼のすごく悪いところで、同時にとても良いところでもある。志摩も伊吹が相手なら、同じ言い回しを選ぶことはなかったでしょう。
「伊吹は危なっかしいけど、正しい奴で…俺はあいつに正しいままでいてほしい」
その後に続く優しい言葉こそ、志摩がずっと胸に秘めていた伊吹への評価でした。
彼は自分と全く異なった良さを持つ警察官を、心で人を動かせる才能を持った伊吹の唯一性を認めていました。
「ああいう刑事が1人くらいいたって良い。それに助けられる人が…きっと、たっくさんいる」
少なくとも伊吹藍は他人も自分も信じなかったはずの志摩一未の心を動かし、信じさせるに足る存在となっていました。そして志摩自身もまた、そんな伊吹に「助けられた人」に違いありません。
そんな彼の言葉は直に伊吹に届くことはなく、想いは正しく伝わらず。せめてイヤホンを外した直後の笑いの中に、「志摩は自分を信じてくれていた」ことへの一抹の喜びが入り混じっていたことを願って止みません。
盗聴によって久住の情報を得た伊吹は、無謀なる独断専行へ。
大した準備をすることもなく、他の者が望まぬ形で「Not Found」との直接対決が実現します。
神を語るNot Found
ついに対面を果たした伊吹と久住。
似顔絵の精度から久住本人を特定するに至った伊吹でしたが、当の久住は伊吹を見てもピンと来ていない様子。
先日久住は(画面越しとは言え)志摩と伊吹を見ています。彼らは久住にとってギリギリまで迫ってきた追跡者であり、自分の身を脅かしかねない存在でした。その顔と人となりくらい覚えているのが普通でしょう。
しかし久住は全く2人のことを覚えていなかったようでした。このことからMIU404の2人でさえ、久住にとっては気に留める必要がないほど些末な存在と認識されていたことが分かります。
そして自分を目の敵にしている警察官が目と鼻の先という窮地にも関わらず、酒を飲みながらダラダラと。一切取り乱すことなく対応する余裕まで見せました。
その人を小馬鹿にした態度、周りの人を信頼させてしまう自信や達観は一体どこから来るのか。その素性を知らせるようなヒントは、彼の口から一切語られることはありません。
「言うとくけどな。俺は大したこと何にもしとらん」
ただ神を語り、自分を騙り、真実を口にする。
実際に彼が何か大罪を犯したという証拠はなく、逮捕したところで大した罪には問えません。
「作りたい奴が薬作って使いたい奴が使うて、人形になりたい奴がなった」
彼の周りの人間がそれぞれ欲望のままに身を滅ぼしたに過ぎず、彼は安全圏からその手引きをしただけ。それが最も下劣で最悪な行為であるとしても、そこに繋がる証拠がなければ彼の介在は認められないのです。
社会のルールはあくまでも物理的に決められたもので、精神は考慮すべき事由でしかありません。そうしなければ、公正な裁きを下すことができないからです。人の心で人を処断してしまえば、必ずそれは私怨にまみれた恣意性に支配されることになります。
「ま、皆頭悪いんやな。頭悪い奴は皆死んでもろたらええねん」
結果として人の心を徹底的に支配するだけの人間は、大罪人として扱えない。仮に99%の人が黒だと思っていても、ルールに従っている限りは白である。久住はそんな社会の抜け穴をつくことで、常に自分に有利な状況を生み出し続けています。
「汚いもん視んようにして、自分だけは"綺麗"やと思てる正しい人ら」
人は行動するたびに誰かに影響を及ぼして、その1つ1つが積み重なることで物語が生まれる。誰かの幸福の裏で、他の誰かが不幸になっているかもしれない。その1つ1つにいちいち気を遣っていたら、生きて行くことなどできなくなる。
久住にとって自分は自分。自分の欲望の中に「他人を巻き込んで行く」という側面があるだけで、あくまで人の行動は各々の欲望に依存しているだけであると考えているのでしょう。だからその果てで何か不幸が起きたとしたら、それは個人の責任でしかないと切り捨てます。
「みーんな泥水に流されて、全部亡くしてしまえばええねん」
人生に絶対はなく、良い行いが良い結果を生むとは限らない。善良な行いをしているつもりが、誰かを攻撃し追い詰め続けていることも少なくない。それを無かったことにして振る舞う者が、自分とどう違っていると言うのだろうか。
詭弁なようで正論のよう。そんな論理を振りかざし、久住は自分の欲望に殉じて行動します。若くして彼をそこまで貶めた理由や過去は、一切明かさないままに。
ドラッグは最悪の悪夢を見せる
久住の思惑通りに誘導されて、意識を失った伊吹。その後を追いかけて合流した志摩は「G11」の情報から状況を想像して行動。しかし彼もまた目の前の仇敵に気を取られ、隠れた2人目の存在に意識が向きませんでした。
意識を失った2人は揃って最悪の可能性を彷徨います。
このシーンは彼らが見た夢とも解釈できるし、あるかもしれなかったパラレルワールドと解釈することも可能です。
その中からこの記事では
・時間が「2019/10/16/0:00:00」から動いていない。
・前半と後半で展開の内容に若干の食い違いがある。
・久住のキャラクターや台詞が一貫していない。
→志摩パートの久住は気狂いしたようなキャラ。
→→志摩は久住を気絶する前の一瞬しか認識していない。
→伊吹パートの久住は論理的に追い詰めるキャラ。
→→伊吹は直前に屁理屈をこねる久住と会話をしている。
・久住が志摩と伊吹の名前を把握できるシーンがなかった。
→現実で久住が2人の名前を呼ぶシーンは一切ない。
と言った理由から、物語上では「彼らが見た夢」と判断する方が妥当であると判断して話を進めます。
"相棒"への信頼と憧れ
彼らが見た最悪は、各々の相棒が意識を失ったまま久住と相対するというものでした。
そしてそのどちらの久住も「俺と組まへん?」と彼らを悪の道へと誘おうとします。これは2人ともが、自分は「刑事であるべきではないのかもしれない」と思っているということでしょう。
志摩も伊吹も心のどこかで自分は欠落した存在だと思っていて、死の淵に立たされれば"正義"でい続けることはできないかもしれないと感じているのです。そしてその明暗を分ける相手として、今の状況と久住という存在はあまりにも"出来すぎて"います。
夢の中の久住は的確に2人の突かれたくないところを刺激し、着実に彼らの心を最悪へと向かわせていきます。
しかしその中身は全くと言って良いほどの真逆。
何故なら、志摩側の久住は志摩に「刑事で在り続けること」を強要し、伊吹側の久住は伊吹に「刑事の職務から離れること」を進言しているからです。
志摩と伊吹は決して同じ方向を向いた刑事ではなく、その考え方や行動理念は完全に逆方向を向いています。志摩は根っからの正義漢であるが故に手段を選ばず、伊吹は荒くれ者であるが故に行動で正義を体現します。
その自分自身が窮地に立たされた時、どのような行動を取ってしまうのか。自分の大嫌いな自分を捨ててまで、"勝利"を掴み取ることができるのか。
「目が覚めて俺が死んでたら、俺の相棒は…」
実際にそうなってみないと分からない中で、あってしまうかもしれない最悪の結末。それが悪夢となって彼らの心の闇を覆います。
「伊吹はお前を"絶対に許さない"」
自分が死んでいて久住は生きている。その前提で語る志摩は、あのような状況でも自分が引き金を引き切れないと思っているのだと感じます。自分が引き金に力を込めるのを躊躇するその間に、敵の銃口が先に火を噴く。彼の夢は結末を描かぬままそこで終わっています。
自分にできなくとも伊吹はそうする。伊吹は必ず久住を追い詰めて仕留める。最後は理性ではなく感情で動ける伊吹なら、自分にできないことをやってくれる。夢の中の志摩は相棒にそんな期待を込めました。
そんな志摩の想いとは裏腹に、伊吹の夢の中の志摩は、伊吹の感情を律します。死にかけの身体で「殺すな」と、刑事として彼を裁けと多くを語らず必死に伝えるのです。
伊吹にとって志摩は自分とは異なった"正義"の体現者で、どんな状況下でも刑事を捨てない憧れの存在でした。
「志摩…おい、相棒…」
その説得虚しく、志摩は久住を手にかけることを選びます。結局は志摩のようには自分は在れない。きっと最後はそうやって道を誤ってしまう。あのガマさんだってそうだったのだから。
「…返事しろよぉ」
2人の描いた"最悪"は、裏を返せば2人にとっての"理想"でした。
自分はきっと最期まで刑事で在ることしかできない。でも相棒はきっと、そうではない選択をしてくれる。
自分はきっと最後は刑事で在ることができない。でも相棒はきっと、そうではない選択ができてしまう。
"俺の相棒"は自分にできないことができる奴だ。
その願いの先にあるのは、それぞれが絶対になりたくないと思う弱い自分の末路でした。
真逆な2人であるからこそ互いに望むものも真逆なのは必定で。それが正しく結びついた先は、絶望と絶望が合わさった最悪の悲劇にだってなり得るものだ。
2人の夢をどちらも回覧した視聴者である我々は、その悲劇的な可能性を強く意識させられました。
「何かのスイッチで進む道を間違える。その時が来るまで、誰にも分からない」
一見辻褄が合うようで、筋が通っているようで、内情は矛盾だらけのその結末。絶対にあってはならないバッドエンディング。
「だけどさ、どうにかして止められるなら――」
けれど現実はそうではない。
彼らは2人だけで戦っているわけではなく、周りには常に助けてくれる仲間たちがいます。
「――止めたいよな。"最悪"の事態になる前に」
スイッチを切り替えられるのは、決してMIU404の2人だけではありません。
彼らの善意と善行は巡り巡って彼らの糧となり、真に進むべき未来を指し示す。戦う意志を失わない者には、必ず逆転のチャンスがある。それを逃さない限りは、きっと戦えます。